月刊バスケットボール2月号

大逆転での出場権奪取! FIBA女子W杯出場権獲得会見「涙のミーティングと世界で勝つための課題」

3連敗後の「涙のミーティング」から生まれた結束力


世界4都市で同時開催された「FIBA 女子バスケットボールワールドカップ2026 予選トーナメント」。強豪ぞろいの「死の組」グループA(トルコ・イスタンブール開催)に組み込まれた女子日本代表(FIBAランキング11位)は、開幕3連敗となったが、見事なカムバックを見せてカナダ(同7位)とアルゼンチン(同27位)を撃破。カナダが最終戦でオーストラリアに敗れたことにより、大逆転で9月にドイツ・ベルリンで開催される本大会への出場権を手にした。

帰国したチームは本日3月19日に出場決定記者会見に出席。コーリー・ゲインズHCと、大会を戦い抜いた9名の選手が登壇した(町田瑠唯/富士通、渡嘉敷来夢/アイシン、馬瓜ステファニー/CASADEMONT ZARAGOZAは欠席)。激闘を制した自信と次なる目標へ向けた決意が語られた。

大会序盤の日本は、ハンガリー、オーストラリア、トルコを相手に、試合の主導権を握る時間帯がありながらも、終盤に逆転を許して星を落とす展開が続いた。あとがない状況に追い込まれた中で、チームを救ったのは選手間での率直な対話だった。キャプテンとしてチームを牽引した宮澤夕貴(富士通)は、「3連敗後のミーティングは、いわば『涙のミーティング』でした。やるべきことを再確認し、チームが一つになりました。どんな状況でもコミュニケーションを取り、前を向くことが日本の強みです」とターニングポイントについて語っている。
この言葉通り、第4戦のカナダ戦以降は4Qでも高い集中力を見せた。この変化についてトルコ会場での大会ベスト5に選ばれた山本麻衣(トヨタ自動車)は、「序盤は勝ちたい気持ちが強すぎて表情が硬く、4Qのターンオーバーなど課題が出ました。カナダ戦からはワクワクした気持ちで臨めました」とメンタルの変化を正直に明かしている。

カナダ敗戦によって出場権が決まった瞬間の心境を問われた宮澤は、「1プレーごとに一喜一憂しました。決まった瞬間はうれしさと安堵が混ざり、オーストラリアの勝利に感謝する気持ちでした。チームメイトと抱き合って喜びました」と、張り詰めた緊張の糸が解けた瞬間の様子を笑顔で回顧した。



世界で痛感した高さの壁と「ギャングリバウンド」


歓喜の出場権獲得だったが、同時に課題が残ったことも選手たちは深く理解している。東京五輪で銀メダルを獲得して以降、日本は狙われる立場となり、武器である速い展開や3Pシュートを徹底的に研究され、対応されてきている。改めて現状を味わった髙田真希(デンソー)は、「東京五輪以降、どの国も本当に強くなっています。必死に出場権を勝ち取りに行く姿を見て、(ファンの方にも)厳しい現状を感じてほしかったです。今後は『リード&リアクト(状況判断)』の質を上げ、選手がより良い判断をできるようにしたいです」とコメント。宮澤は「日本が強みとしてきた『速いバスケ』をどのチームも取り入れています。ボックスアウトなどの細かい課題を一つずつ修正しなければ、世界では戦えません」と同調した。

具体的な課題として浮き彫りになったのは、圧倒的な高さに対するリバウンドだ。ゲインズHCは、戦術のアップデートをこう説明している。
「終盤の遂行力を改善し、最後の2試合でそれを示せました。課題はリバウンドです。サイズ不足を補うため、5人全員で取りに行く『ギャングリバウンド』を徹底します。そこから得意のトランジション(速攻)に繋げます」
指揮官はまた、激しい運動量を要求するシステムにおいて、「選手交代を頻繁に行うことで、5試合目のアルゼンチン戦でもフレッシュな状態で戦えました。疲弊した相手に対し、走るバスケを展開するためには12人全員の力が必要です」と主張。髙田も、「40分間動き続け、全員が役割を全うするバスケは相手にとって脅威です。交代して入る選手が常にフレッシュな状態で足を動かし続ける。この継続性が日本の強みです」と説明している。



個人の現在地とWリーグへの切り替え


今大会は、若手や中堅選手にとっても己の現在地を知る貴重な経験の場となった。カナダ戦でアグレッシブなプレーを見せた今野紀花(デンソー)は、「最初の3試合は苦しかったですが、最後まで諦めずに出場権を掴めて良かったです。個人的には課題や向上させたい点が多く見つかりました。本大会までの半年間、ハングリーに練習に励みます」と決意を新たにした。また、ケガからの復帰明けで大会の大一番に臨んだ平下愛佳(トヨタ自動車)は、「ケガの期間は精神的にきつかったですが、フィジカル面などを強化する必要な時期だったと捉えています。チーム全員の助けがあったからこその結果です」とチームメイトへの感謝を述べた。

髙田が「自分の役割をよく理解している。出場すれば得点だけでなく、カッティングやディフェンスで良い流れを作ってくれます」と称えた朝比奈あずさ(筑波大4年/トヨタ紡織)も、「多くの感情を抱いた貴重な経験でした。この経験を糧に成長し、またこの舞台に戻ってこられるよう頑張ります」と前を向いている。さらに東藤なな子(トヨタ紡織)、薮未奈海(デンソー)も、それぞれ世界との差や通用する部分を肌で感じ、更なるレベルアップを誓った。

激動の代表戦を終えたばかりの選手たちだが、渡嘉敷のアイシンは明日からWリーグ入替戦を控え、トヨタ自動車、デンソー、富士通、トヨタ紡織の選手たちには来週末からWリーグのプレーオフが待っている。
髙田は「代表活動は一旦終了し、ここからは所属チームで練習を再開。割り切ってリーグ戦に集中します」とすでに国内の戦いへと頭を切り替えており、宮澤も「正直休みは欲しいですが、プレーオフに向けて良い準備をしたいです」と意気込みを見せている。

ワールドカップ本大会まで、残された期間はわずか半年。そこまでどのような時間を過ごすかが大切だ。まずはWリーグでの活躍をしっかりと見届けたい。



■FIBA 女子ワールドカップ2026 予選トーナメント 日本の試合結果
【開催地】トルコ・イスタンブール
・3月11日(水) ●65-77 ハンガリー
・3月12日(木) ●71-81 オーストラリア
・3月14日(土) ●67-75 トルコ
・3月15日(日) ○66-62 カナダ
・3月17日(火) ○83-39 アルゼンチン
成績:4位(2勝3敗)
※日本、カナダ、トルコが並んだが、該当チーム間の対戦成績により日本が4位となり出場権を獲得

■FIBA 女子バスケットボールワールドカップ2026 大会概要
【日程】2026年9月4日(金)〜13日(日)
【開催地】ドイツ・ベルリン
【出場チーム】16チーム
▼日本の過去成績(2010年から4大会連続出場・通算14回出場)
・前回大会(2022年)9位
・過去最高位(1975年)準優勝


■2025年度女子日本代表チーム「FIBA 女子バスケットボールワールドカップ2026 予選トーナメント」メンバー

【スタッフ】
チームダイレクター 小栗 弘(公益財団法人日本バスケットボール協会)
ヘッドコーチ コーリー・ゲインズ(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アシスタントコーチ 宮田 知己(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アナライジングコーチ 伊藤 恭子(デンソー アイリス)
通訳 下條 海(公益財団法人日本バスケットボール協会)
スポーツパフォーマンスコーチ 臼井 智洋(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー 荻野 まゆみ(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー 宮口 佳子 (S-Life はりきゅう院)
チームマネージャー 古海 五月(公益財団法人日本バスケットボール協会)
チームマネージャー 小松 佳緒里(ENEOSサンフラワーズ)
テクニカルスタッフ 有賀 早希(富士通 レッドウェーブ)
ドクター 小松 孝行(順天堂大学医学部スポーツ医学研究室)
チーム広報 松本 麻里(公益財団法人日本バスケットボール協会)



【選手】12名
#2 今野 紀花(SG / 179cm / 25歳 / デンソー アイリス)
#3 馬瓜 ステファニー(SF / 182cm / 27歳 / CASADEMONT ZARAGOZA)
#8 髙田 真希(C / 185cm /36歳 / デンソー アイリス)
#10 渡嘉敷 来夢(C / 193cm / 34歳 / アイシン ウィングス)
#13 町田 瑠唯(PG / 162cm / 33歳 / 富士通 レッドウェーブ)
#14 朝比奈 あずさ(PF / 185cm / 22歳 / 筑波大学4年/トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
#23 山本 麻衣(PG / 163cm / 26歳 / トヨタ自動車 アンテロープス)
#26 田中 こころ(PG / 173cm / 20歳 / ENEOSサンフラワーズ)
#31 平下 愛佳(SF / 178cm / 24歳 / トヨタ自動車 アンテロープス)
#37 薮 未奈海(SG / 178cm / 21歳 /デンソー アイリス)
#52 宮澤 夕貴(PF / 183cm / 32歳 / 富士通 レッドウェーブ)
#75 東藤 なな子(SG / 175cm / 25歳 / トヨタ紡織サンシャインラビッツ)

※平均(Average):178.0cm、27.1歳
※2026年3月8日現在
※ポジション(P)=PG-ポイントガード、SG-シューティングガード、SF-スモールフォワード、PF-パワーフォワード、C-センター




文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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