月刊バスケットボール2月号

アカツキジャパン桶谷大HCショートインタビュー——世界との差を埋めるマインドセット

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Bリーグがバイウイークに入る直前の2月15日、琉球ゴールデンキングスがアルティーリ千葉との対戦で千葉ポートアリーナにやってきた際に、試合後の会見で桶谷大HCに聞いた。現在のBリーグをどう見ているか、ワールドクラスのタレントを生み出すために必要なこと…。FIBAワールドカップ2027 アジア地区予選進行中の日本代表指揮官という重要な立場を、近年大きな功績を残してきたトム・ホーバス前HCから引き継ぐという大きな決断をしたばかりの桶谷HCは、わずかな時間に情熱的な回答をしてくれた。その一言一言に、日本のバスケットボールに対する自信と希望が詰まっている。


以下、本誌とのやり取り部分をまとめる。







世界との差はシュート力

――Bリーグでは、ガードは小柄な日本人でビッグマンは本当に大きな外国籍が多いという具合に、海外に比べて役割分担がしっかり分かれていて、世界のバスケットボールと違うところがあると感じます。桶谷HCはどう見ていますか?

キングスでイタリアとオーストラリアに行ったじゃないですか。そのときに感じたのは、確かに日本のガードは小さいですが、相手はスピードをめちゃくちゃ嫌がるということです。日本のガードのスピードに混乱するんですね。

シュート力の話をすると、僕はもう「そこや」と思っているんです。うちは佐土原(遼=192cmのフォワード)とか松脇(圭志=185cmのシューティングガード)がいるから、フィジカルもサイズもあってペリメーターは全然負けてはいません。差は何かと言ったらやっぱりシュート力。相手はみんなシュートが入るんですよ。サイズがある選手も誰も、みんなシュートが入るというところが、僕は世界と日本の差が一番あるところやと思っています。大きな選手もちゃんとシュートが入る。


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今、日本も渡邊君(渡邊雄太=千葉ジェッツの206cmのフォワード)がいたり、馬場君(馬場雄大=長崎ヴェルカの196cmのガードフォワード)はもうちょっとペリメーターですけど、シュート率が上がってきていて、こういう選手がいるのは世界で戦うためにもめちゃくちゃ大切やと思います。伶音君(渡邉伶音=この日対戦したアルティーリ千葉の206cmのフォワード)なんかも、これから4番ポジションで、シュートでもフィジカルでも負けないように育っていくでしょう。


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うちはフィジカル負けをしていませんでしたけど、ガードのスピードを生かすバスケットをやっていけば世界と戦えるし、イタリアでもオーストラリアでも僕らは全然戦えていたなと思っています。

――かつては170cmぐらいの高さでは世界に圧倒されて戦えなかったように感じたものです。

サッカーも昔はそうやったんですよ。フィジカルで負けると言われていました。でもこれはルーモア(デマ)なんですよね。「日本人は小さいからフィジカルで負けるよね、スタミナで負けるよね」と言われていたけれど、実際に今では世界と全然戦える。なんなら世界一にだってなれそうじゃないですか。

バスケットボールも僕はそうやと思うんですよ。情報がおかしくされているだけで、全然戦えるんです。でもそういうマインドを持っている人が少なかったために、世界に出ていく人も少なかった。

実際に世界に出た河村君(河村勇輝=NBAシカゴ・ブルズとツーウェイ契約を結んだ170cmのガード)なんか、できているじゃないですか。渡邊君だってできているじゃないですか。そういうタレントがいながら、環境とか考え方が「日本はやっぱり負ける」と思っていたんです。

リバウンドでも負けると思っていたでしょう。でもドイツに勝ってるんですよ、リバウンドの数では(77-97で敗れたパリ2024オリンピックのドイツ戦で、日本はリバウンドを38-36と上回っていた)。そういうことを含めて、やれることをやったら勝てる可能性がある。だから、みんながマインドセットをちゃんとして勝ちましょうというところやと思うんです。

――黒人選手と体格を比べて、筋肉が違うからと言われて思考が止まるみたいな。

そういうことです。でも、それはもう今はないです。

僕も大学時代にキネシオロジーという運動学を勉強していましたから、筋肉一つでジャンプ力の差が出るというのは分かるんです。でも、それは(相手側の)一つの長所に過ぎません。もしかしたら僕らの短所になるかもしれないですけれど、アジリティやクイックネスは僕らの方があるし、文化的にも規律の正しさは自分たちの方があるし、やっぱり世界で戦えるところはいっぱいあると思うんです。Bリーグはそういったことをちゃんとやろうとしていて、かつ成長しているリーグ。Bリーグから世界に出ていける選手はこれから増えると僕は思います。

新たなマインドセットで迎える船出

桶谷HCは以上のやり取りに加え、「脳ができないと思っていることはできない」「東大出身者が近くにいると、自分も東大に行けるんじゃないかと思えるときがある」とも話し、気持ちの持ちようや環境を整えることの重要性を強調した。

「僕らのときは、自分らのサイズでは勝負できないやろうなと思っていたし、言われていた。でも今はそういう時代じゃないし、そのマインドセットはやっぱり変えていった方がいいなと思いますね」(桶谷HC

B1からB3までを見渡せば、過去にNCAANBAに挑戦したプレーヤーが渡邊や馬場以外にも存在している。そんな中で、桶谷HCのたとえ話のように、彼らを見て「自分にもできるのではないか」と意欲を燃やして行動に移せる若者が出てきていることを物語っているのが、渡邉伶音のような若手の登場だ。その意味では、過去に世界を目指したかつての若者たち全員の夢や情熱が、今の若者たちの夢に生きているとも言えるのではないだろうか。



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「何年かしたら、本当に日本は世界で戦える国になっていると思います。そういう世界を作りましょうよ」とも話した桶谷HCは、いよいよ226日に日本代表指揮官としての船出を迎える。今回ウインドウ2で戦う中国と韓国はいずれも強敵で、本選出場に向けた戦況の中でチームとして絶対に負けられない重大局面だ。しかし結果とは別に、これはまさしく日本の男子バスケットボールの新たな船出。次世代に夢をつなぐ桶谷ジャパンの熱闘を期待したい。





文/柴田健

タグ: Akatsuki Japan アカツキジャパン

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