岩屋頼と堀田尚秀──秋田ノーザンハピネッツで同期になる早稲田大コンビ「本当に奇跡やな」

大学のチームメイトと歩み出すプロキャリア
「本当に奇跡やなと感じています」
2月17日、早稲田大にて「B.LEAGUE DRAFT 2026」で秋田ノーザンハピネッツから指名された岩屋頼と堀田尚秀の指名挨拶会見が実施された。
岩屋は、大学のチームメイトである堀田と共にプロキャリアを始められることについて、冒頭の言葉を述べている。
彼らは、今年度の関東大学1部リーグ戦で早稲田大を57年ぶりの優勝に、そして続くインカレで準優勝に導いた立て役者。堀田は先発SGとして、今年度の早稲田大のアイデンティティーとなったハイペース&3Pシュート多投のスタイルにピタリとハマり、象徴的な選手の一人となった。代名詞の3Pはリーグ戦の22試合で全体3位の56本成功、確率39.4%と量も質も高水準。4年時の夏以降、大きく台頭した選手だ。
一方の岩屋は快進撃を見せたチームのスーパーサブ。倉石平監督は、いつ出しても計算できる岩屋をあえて控えに回し、ゲームクロージングなどの重要な局面でコートに送り出した。リーグ戦のスタッツは総得点3位(370得点/平均16.8得点)、アシスト7位(59本/平均2.7本)、リバウンド11位(131本/平均6.0本)、3P成功数5位(45本/39.5%)と軒並み上位。「B.LEAGUE DRAFT 2026」においても高い評価を得ていた。
2選手と共に会見に登壇した倉石監督は、彼らを紹介する締めの言葉として、「秋田のフランチャイズビルダー」になってほしいと語り、穏やかな笑顔を見せた。

左から順に岩屋、堀田、倉石監督
11人が指名された今ドラフトにおいて、同じ大学からの複数人が指名を受けたのは早稲田大と日本大のみ。しかも、その2人が同じチームとプロ契約したとなると、これまでの自由交渉制度を含めても極めて珍しい。会見に登壇した秋田の水野勇気代表取締役社長も「今までのうちのルーキーでも、同い年はいたかどうか、しかも同じ大学では…」とその希少性を認め、2人の関係性が互いの成長にプラスに働くと捉えている。
「最初はプロと学生との違いに苦労すると思いますし、過去にもそういう選手を見てきました。そういうときにお互いを励ませるのはすごく良いんじゃないかなと思いますし、大学時代も4年間やっている部分は非常に大きいこと。今回、新しい制度としてドラフトが始まって、既存選手を含めていろいろな面で新しく見られる(再評価される)部分があると思いますが、そういう環境下でチームにしっかりと溶け込んでいく上でも、ここまで同じ環境でやってきた2人が一緒に入るのは大きなことだと思います」
当の本人たちも最初は驚きを隠せなかった。ドラフト会場で指名された岩屋は、バックヤードで記者から「堀田も秋田から指名された」と伝えられると、普段のポーカーフェイスからは考えられないような驚きの表情を浮かべていた。「プロという(少人数しか立てない)狭い世界でも同じチームでやれるのは、本当に奇跡やなと感じています」
一方の堀田は「会場に呼ばれていない時点で、自分が指名されるとは思っていなかった」と東京の自宅で「一人の観客」として中継でドラフトを見ていた。「チームメイトや知り合いの選手がどうなるのか、『どのチームにどういう選手が行くんやろう?』と思って見ていたら、自分の名前が呼ばれて『おっ⁉︎』ってなりました」
指名されるとすぐに岩屋から電話がかかってきて「一緒やな」「びっくりしたな」「とにかく頑張ろう」と簡単な会話を交わした。
かくして再びチームメイトになることが決まった2人だが、実は共に大阪府出身で、付き合いはミニバス時代から。特にミニバスと高校(岩屋が洛南高、堀田が東山高)時代はしのぎを削るライバルだった。幼い頃からの戦友とトップ・オブ・トップの選手しか立てないプロの舞台で、しかも同じ場所でそのキャリアをスタートさせることは、まさに岩屋の言葉どおり、「奇跡」である。
「ずっと一緒にやってきた仲間ですし、(岩屋とは)分かり合えていると思います。僕らが一緒に試合に出たときには、チームのために勝ちにつながるようなプレーを2人でしていきたいと思います」
堀田はこう意気込んだ。
水野社長も2人にエールを送る。「個人的に、Bリーグで成長できる選手は『正しい努力ができる選手』だと思っています。2人にもぜひそういう選手になってほしい。Bリーグは本当にフィジカルなリーグです。例えばディフェンスが課題であれば、フィジカルを上げていくことはもちろん、それと並行して頭を使って守ることもものすごく大事になる。それができる選手といえのは、実はそんなに多くないと僕は思っています。そこをしっかりとお互い切磋琢磨して身に付けてほしいですね」

新人2人を獲得した秋田の判断
多くのクラブが年俸の高さやサラリーキャップとの兼ね合いで指名を見送った中、秋田が2人も指名したという事実は、今ドラフトにおける大きなサプライズの一つだった。早稲田大での会見後に、水野社長にその経緯や意図について聞くことができた。
まず、秋田のサラリーキャップに余裕があった点は、2人のピックを可能にした最大の要因だ。
その上で、年俸の額については「そこはいろいろ考えました」と水野社長。その上で、それを支払う価値があると判断した。「Bプレミアの最低年俸は800万円です。今のB1のそれよりも上がって、結果として800万円は補償しなければならないと考えると、成長の可能性なども考えて、指名にメリットがあるという判断をしました」
また、「2人とも3年契約なので、3年間しっかりと育てられるのは大きいです。今のBリーグでは、選手は毎年フリーエージェントになるようなものなので、せっかく育てても1年後にもう一度交渉しなければなりません。移籍してしまうリスクを抱えながらやっていく形の中で、3年間じっくりと育成できるのはポジティブです」と、契約年数の長さもメリットと捉えた。
Bプレミアのチーム編成ではサラリーキャップの都合上、少なくないクラブがロスターの最後の数枠を最低年俸の若手、あるいはベテランで構成する可能性が高い。であれば、多少年俸が高くても、より成長の余地がある選手を移籍されるリスクがない状況で育成できるのは魅力的だ。ただ一方で、クラブによっては3年契約を「長く契約下に置かなければならないリスク」と判断することもあり、考え方はそれぞれ。秋田はメリットと捉えたわけだ。
特に3巡目で指名した堀田は「育成契約選手制度」を用いた契約を結んでいる。この制度は、出番が少ない25歳以下の若手選手を所属元の判断で下のカテゴリーのクラブに送り、実践経験を積ませながら成長を促すことを目的に作られた(Bプレミア→Bネクストは不可。下カテゴリーへの移籍以外にもBプレミア間、Bワン→Bプレミアの行き来などが可能)。従来の期限付移籍よりも短期間(最短2週間)のみのレンタルもでき、シーズン中は自由に同一クラブとの再登録が可能なため、よりチーム作りに柔軟性が生まれる。
若手にとっても試合に出ることが最も成長につながる。水野社長も「なかなかプレータイムが伸びない選手も、やはり過去にはいました。選手にとっては練習だけではなくて実戦経験を積むことはすごく大事。なかなか試合に出られないときに、(クラブ判断で)どこか別のクラブに期限付移籍することができる。これは大きいです」。そこで経験を積んで自クラブに戻ってきてくれれば、選手とクラブの双方にとってプラス。一方、移籍先のクラブも一時的な戦力増強やケガ人の補填といったメリットがある。総合的に判断して、「ここは新制度を活用しよう」(水野社長)と秋田は判断したのだ。
また、今回のドラフトに対して世間一般からの酷評意見が多かったが、水野社長は最初の2度のドラフトが、「まだ本来の制度設計のもとで実施されない」と指摘する。「本来はウェバー制(前季のレギュラーシーズンの成績が低い順に指名できる制度)ですが、まだプレミアのシーズンを過ごしていない最初の2回は完全抽選です。特に(初回の)今回はどのクラブもギリギリまで自分たちがどの指名順になるのか分からなかった。考えようもなかったわけです。今後、ドラフトに前シーズンの順位が反映される段階になっていけば、自分たちの順位がどれくらいになりそうかがある程度見えてきます。自分たちの順位を想定しながら、ルーキーを見ていくことなどができると思います」
今の時点でドラフトに対する評価を下すのは、さすがに時期尚早すぎるということだ。
リーグもクラブも選手も、まさしく手探り状態だった今ドラフトにおいて、秋田の2選手指名はサプライズだった。だが、その裏には、確かなビジョンがあった。

文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)







