月刊バスケットボール2月号

Bリーグ

2025.12.23

名古屋D・齋藤拓実&今村佳太が語る環境への想いアンバサダーとして広げる「楽しみながらできること」の輪

名古屋Dの気候変動プロジェクトアンバサダーコンビ


名古屋ダイヤモンドドルフィンズの齋藤拓実選手と今村佳太選手は、「気候変動プロジェクトアンバサダー」としても活動の幅を広げています。最初は手探りだったという社会的責任活動ですが、ファンや子どもたちとの触れ合いを通じて新たな気づきやエネルギーになっていると語ります。“僕たちが発信するメッセージには価値がある”その言葉に込められた思いと、未来に向けたビジョンを聞きました。

——齋藤選手は気候変動プロジェクトアンバサダー3年目を迎えました。どんなところに興味や関心を抱いていますか?

齋藤)「気候変動が一番大変で重要」と言われ、最初は何もわからない状態からのスタートでした。活動する中で少しずつ知識をつけていますが、特に印象的なのはバガス容器の取り組みです。ホームゲーム会場や選手マルシェでも使用していた(※)さとうきびの搾りかすから作られた容器なのですが、イベントで子どもたちと使用済みのバガス容器をドルフィンズファームに埋めて、そこで育った玉ねぎを使用したお弁当をアリーナで販売しました。子どもたちとお弁当の容器をちぎって埋めて、楽しみながら参加したイベントが、気候変動問題解決につながっているという循環型のイベントを体感できたことが心に残っています。
※現在はホームゲームでの使用はありません



——今村選手はアンバサダー2年目ですね。

今村)僕も何も分からない状態からのスタートでした。特に、僕たちが使用していた使用済みのボールをキーホルダーにアップサイクルするイベントは印象的でした。廃棄してゴミとなってしまっていたボールに不可価値をつけて1点物のキーホルダーにするという、ゴミを出さない仕組みで、気候変動問題と聞くと、難しく聞こえますが、ファンの方と楽しみながら活動するだけで、未来の地球のためになる活動もあることを知りました。僕たちのような人前に立つ職業の人間が率先して活動することで、普段は関心のない方にも知ってもらうきっかけになり、活動の輪が広がると実感しました。積極的に関わることの重要性を感じ、うれしかったですね。






齋藤)僕らだけではなく、クラブとしての意識も高いと思います。例えば、うちの練習所は、ごみの分別はすごく厳しいんですよ(笑) みんな自然とより意識するようになっていると思いますね。



——今村選手は新潟・長岡出身で琉球を経て現在に至ります。夏の暑さの違いも環境に関わることですよね。

今村)沖縄はどちらかというと、年中暖かいというイメージですが、名古屋の夏の暑さはちょっと桁違いというか一番暑く感じますね(笑) 「暑い時期が長くなってきているのかな」とも感じます。一人一人ができることは小さいかもしれませんが、積み重ねが大きな変化につながると思ますし、そういう意味では気候変動はすごく身近なテーマだと思います。

——「名古屋市交通局×名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 市バス・地下鉄来場キャンペーン」のポスターもお2人が大きくデザインされ、“CO2削減に取り組もう”と呼びかけています。ドルファミに向けて、どんなことを発信したいですか?

齋藤)僕たちが無知な状態から始まったように、まだ取り組みを知らないファンの方もいると思います。だからこそ、僕たちが発信するメッセージには価値があります。このキャンペーンのように、公共交通機関の利用で特典があるなど、楽しみながらCO2削減に貢献できる仕組みは素晴らしいです。僕らがこうした活動をSNSなどで発信することで、多くの方に知ってもらうきっかけにしたいですね。今村選手が言う“僕たちがやることに意味がある”というところに繋がるかなと思います。

——これまでのキャリアの中で印象深い社会的責任活動はありますか?

齋藤)コロナ禍で学校行事が中止になった学生たちのため、クラウドファンディングでイベントを企画したことです。話し合いを重ね、「文化祭のような思い出がほしい」という彼らの声に応え、一緒にお店を出したりワークショップを開いたりしました。あの時期は、すでに卒業した人もいれば、これから大学生活を楽しもうという人もいて、それぞれの立場でいろんな思いを抱えていたと思います。だからこそ、少しでも前向きなきっかけをつくれたらという気持ちでした。終わってみて「思い出が作れてよかった」という言葉をもらえたときは、心からやってよかったと思いました。






——今村選手にとって印象深い活動は何ですか?

今村)僕も子どもたちとの活動が一番印象に残っています。以前所属していたクラブで子どもたちを指導するスクールを任せていただいたことは貴重な経験でした。その経験もあって、地元の長岡にゴールを寄贈するなど、バスケットボールができる環境を整えたいという思いも持っています。沖縄にいた頃、公園にゴールがあることが多いので、よくそこで練習をしていました。バスケットボールができる場所の大切さを感じていましたし、子どもたちにも、外に出てバスケットボールをするきっかけを作りたいという思いがあります。

——子どもたちと触れ合う際、伝えたいメッセージはありますか?

今村)僕は子どもたちに「何か一つでも夢中になれるものを見つけてほしい」と伝えています。バスケットボールに限らず、夢中になれるものは人生の支えになります。僕自身、バスケットボールに夢中になれたことが今の仕事につながっているので、その大切さを実感しています。



——齋藤選手は子どもたちに関わる活動を通して自分たちが受け取るもの、得られるものはありますか?

齋藤)プロとして子どもたちに夢や希望を与えたいという思いが活動の原動力です。与える立場ではありますが、イベントで子どもたちが笑顔で楽しんでいる姿を見ると、逆にこちらが元気をもらうことが多いですね。それが自分のエネルギーにもなります。





——最後に、気候変動プロジェクトも含め、今後、オフコートの活動でやってみたいことがあったら教えてください。

今村)今後やりたいことという意味では、最初にお話ししたファンの方と一緒に参加したアップサイクルイベントが自分の中で大きなきっかけになっています。バスケットボールを続けていく中で、どうしても消耗品は出てしまいます。そういったものを別の形で生かす取り組みに興味があります。バッシュ1つ、ボール1つにしても、使い終わったものが無駄にならず、資源の削減につながるというのは、僕たちにとってもうれしいことです。さらに、それがファンの皆さまの手に渡って、身近に感じてもらえるような形になるのもすごくうれしいですね。そうした活動は、選手にとってもファンにとっても、そして環境にとってもプラスになる取り組みだと思っています。だからこそ、今後もそうした活動には積極的に関わっていきたいと考えています。



齋藤)明確に「これをやりたい」というものがあるわけではないのですが、自分たちにできることはたくさんあると思っています。新しくIGアリーナが完成して、アリーナグルメなども変わっていく中で、たとえば先ほど話に出たバガス容器の活用なども、今後の課題の一つだと感じています。また、アルバルク東京さんが不要なバッシュを床材に使ったコートを作られていました。そうした取り組みも、消耗品を生かすという意味で非常に参考になります。今村選手が先ほど沖縄には街中にゴールがいっぱいあると話していましたが、名古屋には少ない印象です。資源循環の取り組みを通してコートを作るのもそうですし、ゴールもそうですし、少しでも名古屋のバスケットボールが盛り上がることにつながるのであれば、ウィンウィンの形ですから、色々なことにチャレンジしていけたらと思います。



取材協力:Bリーグ

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文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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