月刊バスケットボール2月号

冬に懸ける仙台大明成(2)新井慶太×三浦悠太郎対談「泥臭い部分ではほかのチームに負けない」

インターハイで3位に入り、来るウインターカップではさらなる高み、日本一を目指している仙台大明成。3年生がチームの軸で、1年時から経験を積んできたスピード抜群のエースガード・小田嶌秋斗を起点に、スラッシャーの三浦悠太郎やシューターの荻田航羽らが得点を量産。また、インサイドでは檜森琉壱らが泥臭くリバウンドやディフェンスに体を張る。また、控えから出場するキャプテンの新井慶太も、ゲームの流れを変える重要な存在だ。

ここでは、地元・宮城県出身で、中学時代から仙台大明成の練習によく参加していたという新井慶太と三浦悠太郎の2人に、対談形式で冬への意気込みを語ってもらった。

亡き恩師への思いと冬への意気込み

ーーインターハイ後、さらなる進化を目指してさまざまな取り組みを行ってきました。チームとして、どのような点が夏から成長できていると思いますか?

三浦:一番はディフェンスかなと思います。マンツーマンディフェンスをやることで、1対1の守る強度や、「自分が止めるんだ」という一人一人の強さみたいなものが、チームとしても身に付いてきました。あとは、選手同士のコミュニケーションもすごく増えたかなと。ただ、疲れてきたときや流れが悪くなったときに声かけが減ってしまうことがあったので、もっとやり続ける力が大事になると思います。



新井:コミュニケーションという点では、インターハイまでは(畠山)俊樹さんの指示を求めてしまうことが多かったのですが、俊樹さんが自分たち3年生を信頼してくれて、タイムアウトをほぼ取らずに自分たちで考えて戦う形になりました。まだまだできてはいないのですが、雰囲気が悪いときなどに、コート内でいかに自分たちで流れを持ってくるかを考えることがすごく増えたと思います。苦しい時間帯というのは、やはり自分たちのやるべきことができていない時間帯です。そういうときこそ、ディフェンスで我慢することだったり、リバウンドやルーズボールを取り切ることが大事になるのかなと。そういう意識を確認するためにも、コート内外で声をかけ合うことは夏よりも増えました。



ーー自分個人では夏のインターハイからどんな課題に取り組んできましたか?

三浦:自分は、いつもファウルトラブルが多くて…。仕方ないファウルもあるかもしれないですけど、1対1のディフェンスが遅れてのファウルや、いらないファウルがインターハイまでは多かったと思います。(U18日清食品)トップリーグではそこを意識して、熱くなっても頭は冷静に、味方が抜かれる前にポジションを取るとか、1対1でしっかり守り切るとか、そこは少し成長できたのではないかなと思います。トップリーグの中でも(福岡大附)大濠戦は少しファウルが込んでしまったのですが、あのとき感じたのは、弱気になって悪循環になっているということ。シュートが入らずオフェンスが弱気になってパスミスをしたり、ディフェンスでも後手に回ってファウルになったりしていたので、強気な姿勢が大事だなと思いました。

新井:自分はガードとして、チームの流れを崩してしまうミスとか、雑なプレーが多いというのは今年ずっと指摘されてきたことでした。まだまだそこは修正中で、トップリーグの福岡第一戦でも、せっかく逆転して良い流れになったときに、自分のミスから相手に流れを持っていかれて負けてしまって。まだまだそこは甘いと思うので、ウインターカップまでにはしっかり直していきたいです。ただ、ミスを減らしながらも弱気になったらダメだとも思っているので、インターハイでの経験を自信にして、積極的にプレーしたいです。

ーー現3年生たちは、佐藤久夫コーチがリクルートした最後の代ですね。お二人は地元の宮城県出身で、中学生の頃から練習に参加していたそうですが。

三浦:そうです。僕は中1のとき、地元の先輩に誘われて初めて練習体験に行かせてもらいました。それで中2のときに、先生から「誰かいないか」と聞かれて、同じ地区でミニバスの頃からよく対戦していた(新井)慶太を誘って。そこから自分と慶太で、夏休みの間、1か月くらいガッツリ練習に参加させてもらったんです。その後、中3のときには、放課後に親に送迎してもらい、毎日のように練習に参加させてもらっていました。



新井:自分はその夏以降、しばらく行っていなかったんですが、三浦が中3になってまた練習に行き始めたときに、久夫先生が「慶太は来ないのか」と言ってくれて。それからたまに練習に行くようになり、明成に進むことを決めました。受験が終わってからも、本当は東北新人などで大変な時期ではあったのに、久夫先生が「いつでも来い」と言ってくださって、合格が決まってからは毎日のように練習に行っていました。厳しい環境というのは分かっていたんですが、実際に練習に参加しなければ分からなかった部分もたくさんあって、そこは財産になっています。入学して先生は亡くなってしまいましたが、高校3年間、こういう厳しい環境で自分を高めながらバスケができたのは、久夫先生が自分たちに声をかけてくれたからだと思うので、日本一という結果で恩返しできたらなと思います。

三浦:僕も、中学生のうちから緊張感のすごくある空気を経験できたというのは、今にも絶対に生きていると思います。それに久夫先生から自分は「お前はガードとしてやれ」「行けるシュートはどんどん行け」ということを言われました。その後すぐに先生は亡くなってしまったのですが、それが先生に認めてもらった自分のプレーなんだと思って、ウインターカップで体現できるようにしたいです。やっぱり亡くなっても自分たちには久夫先生が付いているから、絶対優勝するんだ、という気持ちです。



ーーウインターカップではどんな試合を見せたいですか。

三浦:やっぱり自分たちの良さは、高校生らしいバスケットだと思います。地面を這いつくばってルーズボールを奪ったり、身長は小さくても当たり負けせずリバウンドをもぎ取ったり、ディフェンスを最後までやり切る姿を見せたいです。自分たちはサイズもないし、能力もないので、全員で団結しなければ勝てない。ルーズボール、ディフェンス、リバウンドだけは誰にも負けたくないし、そこから良いプレーにつなげていきたいです。

新井:僕も一緒です。自分たちは例年に比べても特に身長の低いチームで、周りのチームには留学生がいたり、能力の高い選手たちが多かったりするので、そういう部分では劣ると思います。でも、ディフェンスやルーズボールといった泥臭い部分は、ほかのチームには絶対に負けられない。毎日の練習で徹底して、磨いて、ウインターカップまでにもっと自信つけて挑みたいです。

ーー個人としても高校最後の大会になります。どんな冬にしたいですか。

三浦:個人の活躍はあまり気にしていなくて、たとえ自分が活躍できなくても、チームで優勝できればいいと思っています。そのために、どんなに自分の調子が悪くても、やれることはあると思っていて。毎試合、自分のすべきことをやり続けて、逆にいつもやっていないプレーを絶対にしないようにして、チームに貢献できればな、と。トップリーグを通じて、ドライブから周りを生かすことは通用することが分かったので、自分を起点として周りの雰囲気を良くすることを意識して、優勝につなげたいと思います。



新井:自分はキャプテンとして、チームをまとめることも大事だと思うし、プレーの部分では本当に泥臭く、いけるところは思い切っていくとか、そういう部分でチームに勢いを与えられればと思います。本当にここまで3年生中心となってやってきましたが、3年生はみんな仲がいいし、信頼できるそれぞれの持ち味を一人一人が分かっています。全員で信頼し合って、雰囲気良く、雰囲気が悪くなってもコミュニケーションを取って立て直しながら、日本一を目指してやっていきたいです。

ーーお二人とも、ありがとうございました。

文/中村麻衣子(月刊バスケットボール) 写真/山岡邦彦

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