月刊バスケットボール12月号

Bリーグ

2025.12.17

横浜エクセレンスvs神戸ストークス——激熱「GREEN DERBY」レポート

ラウル・アルキンズ(左)と上良潤起(右)の勝負(©B.LEAGUE)

B3から昇格したばかりの横浜エクセレンスと、来季のBプレミア参戦を前にB2制覇を目指す神戸ストークス。112829日に横浜武道館で「GREEN DERBY2連戦を戦った両チームには、チームカラー以外にも共通点がある。それは、昨季に“ミラクル”と言える経験を得た点だ。


横浜EXがB2昇格を決めた511日、B3プレーオフ第3戦の劇的な結末は記憶に新しい。2点を追う残り0.1秒でトレイ・ボイドが逆転3Pを決め、本拠地に歓喜と興奮を呼び込んだ。一方の神戸も45日、ジーライオンアリーナ神戸のこけら落としゲームで残り0.7秒にトリックプレーからの同点3Pを成功させ、オーバータイムの末にリーグ史に残る勝利をもぎ取っている。

そうして迎えた今季、横浜EXは開幕から10月いっぱいの戦いこそ黒星が先行したが、堅調に巻き返し勝率も神戸戦前時点で5割超え(98敗、勝率.529)。大型補強に成功した神戸は同時点で161敗(勝率.941)と圧倒的な強さを示していた。上昇気流に乗りたいチームと、乗っているチーム。緑色に染まった会場で、両軍が激突した。

ゲーム1——神戸が貫録の勝利

11月28日のゲーム1は、まず神戸が99-80で制した。1Q7点リードを奪うと、一度も逆転を許さないまま4Qだけでも10点リードを広げて白星を掴んだ。結果的に今季最多得点を挙げた試合でも、見逃せないのがスコアの分散だ。個人では最多のラウル・アルキンズでも20得点で、2桁を記録した選手が4人とほとんど偏りがなかった。

一新されたロスターの指揮を執る川辺泰三HCは、12月までを「チームビルト」と捉えている。「まずディフェンスからトランジションを出し、ハーフコートではボールを動かしながらシェアして、ボールマンが誰であれ何をしていくか決められるような戦い方」がベースにあり、この日のオフェンスは「理想的」と表現できた。試合をこなす過程でチームには徐々に熟成感が漂い、今後は「パーソナルな部分をどう追求していけるかがポイントになる」


今季から神戸を率いる川辺HCはみごとな手腕を発揮している(©B.LEAGUE)

今季最多の3Pショット6本を沈めた木村圭吾は、同じB2福井からの新加入で適応の真っ只中にいる。「今年は誰が出ても強度が落ちないチームメイトが揃っていて、そこで自分は得点をとる。(ボール運びからシュートまでこなしていた昨季と比べて)役割の少なさに戸惑うことがありましたが、今はだいぶやることが明確になりました」と語るように、好調なチームでうまく溶け込めているようだ。試合後、「シーズンが終わるまでに信頼を得られるようにしたい」と力を込めた木村は、1210日時点の3Pシュート成功率がキャリアベストの34.4%となっている。


新戦力の木村の得点力は神戸にとって大きな力だ(©B.LEAGUE)

ゲーム2——ホームの横浜EXが1ポゼッション差で金星

ゲーム2は横浜EXが意地を見せた。故障者が増えている状況で、立ち上がりの1Q11点の大差をつけられ「疲労困憊」(河合竜児HC)も感じさせながら、徐々に差を詰めて3Qに逆転すると、最後は96-94で振り切って勝利。今季は両軍とも平均80得点以上だが、この日はそろってリーグトップクラスの実力を示すような展開で、チケット完売の会場は盛り上がった。

4Q残り7秒に決勝のフリースロー2本を成功させるなど38得点でチームをけん引したトレイ・ボイドの活躍は言うまでもなく光ったが、逆転劇を演出したのはPGの大橋大空だ。前日は試合に敗れ「コミュニケーションミスもあって自分たちの首を締めてしまった」と反省を交えつつ、B1経験者が多い神戸にも「自分たちのやることをやっていれば戦える」と手応えを口にしていた。迎えた2戦目は、重たい空気も漂った試合開始直後から序盤の戦いでも味方を鼓舞し続け、終わってみれば今季最多タイの8アシスト。4Q残り16秒には、リードを2ポゼッション差に広げるフリースロー1本を沈めるなどチームをけん引した。


若手PGの大橋だが、有能なベテランがそろう横浜EXを力強いプレーでまとめている(©B.LEAGUE)

ック・モーアも「僕たちが(やるべきことを)遂行できれば結果になると思う」というコメントを体現するように、今季の自己最多に並ぶ22得点。最近はプレータイム増加とともに得点を伸ばしており、今後のキーマンになりそうだ。一昨季まで神戸に在籍した杉山裕介は、2試合で計5本のフィールドゴール・アテンプトを全て決めた。元チームメイトたちとの対戦を懐かしみながらも「B1(経験者)、B2は関係なく」と話し「自分たちは若いので、どの相手に対しても走る強度の高いバスケットを心掛けています」と自軍のプレーにフォーカスしている。


ゲーム2では3Pショット5本中4本を決めたモーアの決定力も横浜EXの大きな勝因だった(©B.LEAGUE)

注目! 2026年春の「神戸決戦」

チーム構築を着々進めて深度を高める神戸と、一進一退が続く横浜EXのチーム状況は異なる。しかし、「現在進行形」が濃く感じられる点も共通項かもしれない。前半戦の「GREEN DERBY」はスプリットで終わったが、両チームは年が明けて2月28日(土)、3月1日(日)に、今度は神戸の本拠地ジーライオンアリーナで再び相まみえる。次回はどのような勝負が繰り広げられるだろうか。

12月7日に終わった今季第11節まで横浜EXは連勝を4に伸ばし加速中。神戸も3連勝としっかり立て直している。進化を止めない両チームの進撃に注目したい。

文/藤原彬

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