月刊バスケットボール12月号

「課題は伸び代」伊藤拓摩強化委員長が語る男子日本代表Window1総括と方針

日本代表としての“姿勢”を共有して臨んだ2連戦


FIBAバスケットボールワールドカップ2027 アジア地区予選、FIBAランキング22位の日本代表は、チャイニーズ・タイペイ(同67位)との2試合を90-64、80-73と連勝し好スタートを切った。これを受けて12月8日、日本バスケットボール協会は男子代表強化部会を開催。その後、伊藤拓摩強化委員長によるメディアブリーフィングが行われ、収穫と課題を語った。

伊藤委員長は、「JBAとして何を大切にしているか、日本代表とはどうあるべきか」を代表選手たちに最初に伝えたと紹介。それぞれミーティングの時間を作り、「なぜ日本代表で戦うのか」「なぜ勝ちたいのか」という根源的な“Why”を問いかけたという。沖縄でも開催された2023年のW杯での勝利が社会にもたらした影響や、Bリーグの盛り上がりにつながった事例を挙げ、代表活動が個々の価値向上にもつながることを共有。こうした背景を踏まえることで、チームの一体感が生まれていったと振り返った。結果として2連勝という結果に手応えを感じつつも、「課題イコール成長ができる伸び代と考えており、良い意味で山ほどあります」と語った。

特に2月末のWindowからは中国(2/26ホーム、7/3アウェイ)、韓国(3/1ホーム、7/6アウェイ)というアジアの強敵が待ち構えており、準備が一層重要になると強調。「情報共有の徹底」「スカウティングの早期化(1月から開始)」「データに基づく練習設計の強化」という3点を挙げると、両国について「サイズがあり、日本に負けられないという強い気持ちで来るはずです。韓国はヘッドコーチが代わるなど大胆な変更をしている。イ・ヒョンジュン(長崎)選手をはじめとしたスカウティングが重要になります」と語った。




「Bリーグでの活躍が素晴らしく、代表でも見たかった」と齋藤拓実の招集理由を説明

ブリーフィングでは特定の選手の名前が挙がる場面もあった。
まず代表復帰を果たし、2戦とも先発した齋藤拓実(名古屋D)については、「Bリーグでの活躍が素晴らしく、代表でも見たかった」と招集理由を説明。練習から好調ぶりを示していたからこそ、スタートの座を勝ち取ったと語ると、今後に向けて「所属チームと役割が変わることを理解し、ミスを恐れず役割を遂行すること」が欠かせないと代表定着の条件を挙げた。
また第2戦では渡邊雄太(千葉J)が37分、ジョシュ・ホーキンソン(SR渋谷)が40分と出場時間が偏った点については、「コーチからの信頼やラインナップの機能性が要因」と分析。一方で、データ活用によって最適なローテーションを事前に共有し、練習で検証することでタイムシェアの実現を目指す方針を明かしたほか、「最強のメンバーで最高の一体感を」というキーワードを紹介し、海外組を含めて単に能力の高い選手を集めるだけでなく、チームとしての一体感を最大化させることが不可欠だとの考えを語っている。
さらに、今回、サポートコーチとして急きょスタッフ入りしたコーリー・ゲインズ氏(現女子日本代表HC)については「緊急措置だった」と説明。代表コーチは普段試合経験を積みにくいという事情もあり、戦術調整や現場感覚の補完として経験豊富なコーチの存在は有効だと述べ、今後も男子代表において力を借りたい意向を示した。

日本代表は2月のWindow以降は、いよいよアジア屈指の強豪である韓国、中国と対峙する。Window1で得た収穫と課題をいかに次につなげられるか。その積み重ねこそが、2027年に向けた日本代表の歩みを大きく左右することになるだろう。


ゲーム2ではプレータイムが増えた渡邊雄太(写真左)とジョシュ・ホーキンソン(写真中央)





文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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