月刊バスケットボール12月号

大学

2025.12.04

【インカレ2025】関西無敗の天理大が初戦突破!プロにも劣らぬディフェンス強度で示すアンダードッグメンタリティ

関西を席巻した鉄壁DFで
勢いに乗る国士舘大を撃破!


「第77回全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)」は、グループステージを終え、昨日の12月3日からいよいよシード校が登場。

関西1部リーグを14戦無敗で制した天理大は、初戦で国士舘大と対戦した。国士舘大は関東1部リーグ入れ替え戦で筑波大に勝利し、勢いそのままにグループステージでも八戸学院大(102-65)と愛媛大(135-31)に快勝してきた波に乗っているチームだった。

それだけに注目のマッチアップだったが、蓋を開けると天理大の快勝といえる試合展開となる。試合開始と同時にフルコートでプレッシャーをかける代名詞のディフェンスで、国士舘大のミスを誘発すると、攻めては#20 駒田彬人や#77 オルワペルミ・ジェラマイアらの得点で快調なスタートダッシュを切る。







試合が進んでもディフェンスの強度が落ちぬよう、常にメンバーを入れ替えながら戦った結果、9人が10分以上のプレータイムを獲得。特に1〜3Qにかけては相手を僅か31得点に封じ、自分たちはジェラマイアの19得点と駒田の10得点を筆頭に計11人が得点を記録。スティールはチーム全体で5本と少なかったが、ディフレクションやルーズボールダイブなどのスタッツに残らないディフェンスの強度は圧巻だった。

4Q終盤に国士舘大に連続して3Pシュートを決められ、一時1桁差に詰め寄られる場面も見られたが、一貫して天理大のやりたい試合運びであったことは明白。70-58というスコア以上の実力を示す勝利となった。

天理を率いる岡田修監督は「国士舘はすでに2ゲームを戦っていて、うちは初戦。硬くならずにディフェンスからリズムをつかもうと話して試合に入りました。それを特に1、2Qは体現してくれて、自分たちのペースで試合を進められたので良かったです。終わりがちょっと…という感じでしたが、国士舘の4年生たちも意地を見せてきたので、逆にこれは明日につながる経験で、そういう課題も見られて良かったです」と振り返った。

天理といえば、前任の故・二杉茂監督時代より続くディフェンスが伝統。その意志を引き継いだ岡田監督は、コーチとしてチームに加わった4年前からフルコートでプレッシャーをかけるスタイルを浸透させてきた。今年の4年生は、岡田HCと4年間歩んだ初めての代でもあり、そのスタイルを最も熟知するメンバー。

関西1部リーグで最優秀選手賞に輝いた#0 中村洸輝はチームのディフェンスについてこう話す。「岡田監督がBリーグのチームのディフェンスやアメリカのチームのディフェンスなどの動画をよく見せてくれて、特定のこのチームというのはないですが、いろんなチームのディフェンスを参考にして仕上げてきました。前からプレスで当たることやボールマンにプレッシャーをかけて時間使わせることはみんなが意識しています」



また、驚異的な身体能力を持つジェラマイアがリムプロテクターとして加わったことで、外回りの選手たちがより強くプレッシャーをかけられるようになったとも話した。そのジェラマイアについては、オフェンスに目が行きがちな選手だが、この試合でも強烈なブロックショットを2本見舞い、その跳躍力を生かしたシュートコンテストで何度も相手のタッチを狂わせた。

日本人選手にしても、この試合でディフェンスのトーンセットに一役買った2年生の#71 森本虎志、3年生の#16 嶋本昇太、4年生の#35 宮下昂士ら各学年に強力な対人ディフェンダーを擁し、鉄壁でありながらも“攻めのディフェンス”であるかのような強度の高さ。そのディフェンスをBリーグのクラブに例えるなら、三遠ネオフェニックスや秋田ノーザンハピネッツに近いスタイルだろうか。

「ディフェンスのシステム的なところは細かくやっていて、日本を見ても世界を見ても、やはりディフェンスの強度が上がっていますよね。言ってしまえばフィジカルゲームのような感じになってきているので、そういう強度は意識しています。例えばBリーグファイナルやNBAファイナルに進出するチームで、ディフェンスの強度が低いチームを見たことがありません。僕らにはインカレで優勝するという目標があるので、だったらまずはディフェンス。とはいえ、あの強度を40分間は無理なので、選手たちにはエンプティになってもいい、へばったら次の選手に交代しようと話しています」

岡田監督が自信を見せるとおり、関西リーグ戦では14試合中13試合で失点を60点台以下に抑え、特に近畿大(83-44)と同志社大(61-42)との試合は40失点台というまさしく鉄壁。唯一70点以上を許した最終戦の京都産大戦でも、71失点だ。

関西で猛威を振るったディフェンスを存分に発揮したインカレの入りだった。





内に秘めたハングリー精神と
“打倒・関東”への思い


前述したとおり、天理大には各学年に優れたディフェンダーがそろい、10人近くをローテーションさせる選手層の厚さを誇っている。しかし、その多くが高校までは全国的な知名度が高くない選手たちだった。

リーグ戦MVPの中村(阪南大高)にしても、高校時代はインターハイにもウインターカップにも出場できていない。だからこそともいうべきか、彼らのハングリーさはチームとして大切にしている部分だと岡田監督は言う。

「高校時代に全国を経験している選手たちももちろん、そうじゃない選手の存在も大きいです。今、日本代表で活躍している佐々木隆成や川真田紘也にしても、高校時代は無名に近い選手でした。そういう選手の方がハングリー精神があったり、大学で伸びたりすることが多いですし、二杉監督もそういったフィロソフィーをお持ちの方でした。そこは僕も大切にしている部分です」

仮に高校で日の目を浴びなくても、熱量を内に秘めて大学に進み、花開く。そうしてプロの世界で活躍している選手は何人もいる。天理大の選手たちの強さの源にも、そうした精神が宿っているのだろう。

もう一つ内に秘めた思いが、“打倒・関東”だ。大学バスケは常々、関東が最もレベルが高いとされ、実際にインカレにおいては昨年までの76大会の全てで関東の大学が優勝。関東以外のチームが決勝に進んだのも、1997年の京都産大が最後である。

中村は「去年、僕らはインカレで中央大に負けて終わっていますし、世間的にも関東の方が強いという見られ方があると思います。この大会の最初の目標はベスト4、その先に日本一がありますけど、それとは別に打倒・関東の気持ちはみんなも結構強く持っていると思います。僕らだけでなく、関西の選手たちはみんながその気持ちがあるんじゃないかと思います」と話す。その口調は決して熱量が表に出るものではなく、まさしく内なる闘志という表現が正しいように感じられた。



岡田監督も国士舘大戦に挑むにあたって、「そもそものマインドセットの部分で、やっぱり『関東は強い』というイメージがあると思うんです。でも同じ大学生。やってきていることは関東1部にも通用するレベルだとリーグ戦が終わってからの1か月で言い続けてきました。まずはそこの意識が大事かなと思います」と、関東が格上というイメージの払拭から手を付けたことを明かした。

「僕らはある意味で“アンダードッグ”というか、関西から関東のチームを倒そうとチャレンジする姿を見て感動してくれたり、見てくれた人に良い影響を与えれたらいいなと思います」(岡田監督)

天理大のインカレ最高位は2011年の3位だ。打倒・関東は掲げつつ、あくまでも目指すのはインカレの頂点。まず本日13時30分からの東海1位・名古屋学院大戦に注目だ。









写真・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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