大会唯一の女性HC・篠原瑞季が導いた奈良 U18の初白星

初白星の背景にあった、選手主体のアプローチ
栃木県・日環アリーナ栃木で開催中の「インフロニア B.LEAGUE U18 CHAMPIONSHIP 2025」。バンビシャス奈良U18は、大会初戦で福島ファイヤーボンズU18を79-39で破りクラブ史上初のチャンピオンシップ勝利を挙げると、勢いそのままに2回戦でも横浜エクセレンスU18を70-65で撃破。惜しくも3回戦でU18 川崎ブレイブサンダースに敗れたものの、堂々のベスト16進出を決めた。指揮を執ったのは、今大会唯一の女性指揮官である篠原瑞季HC。就任からわずか半年あまりで、チームに記念すべき初白星をもたらした。勢いのままに2回戦で横浜エクセレンスU18を70-65で撃破し、ベスト16進出を決めた(3回戦でU18 川崎ブレイブサンダースに惜敗)。指揮をとった篠原瑞季HCは今大会で唯一の女性HCであり、就任から半年あまりという中で、チームに初白星をもたらすことになった。

大会初勝利という歴史を作った選手たち
「私は6月から(ヘッドコーチに)なったばかり。それまでのコーチによる基盤があったからです。選手たちのバスケIQを高めるということも含めて指導なさっていたので、例えばディフェンスを見て『こうしよう』といった判断を選手たちでできるんです。私は基本的に『自分たちで考えてやろう』と伝えています。困っているような状態のときは、『今こうなっているよ』と促したりはしますが、その場で言ってできることは少ないので、いろんな想定で練習っていうのはやるようにしています」と篠原HC。あくまで選手たちの頑張りを称えるものの、「インフロニア B.LEAGUE U18 REGIONAL LEAGUE 2025」(地域ごとに行うリーグ戦で6〜8月にかけて実施)では、わずか1勝6敗(西地区7位)と苦しんだチームを、大会初白星に導き、さらにベスト16まで押し上げたのだから見事な手腕と言えよう。
福岡県大牟田市出身の篠原HCは、両親が体育教師であり、バスケ部顧問だったという環境から「2歳ぐらいの時から体育館に連れて行かれて、訳も分からないままバスケに触れていました」と笑う。福岡・ありあけ新世高を卒業後、「教員を目指して」鹿屋体大に進学。恩師である木葉一総氏(現上武大監督)の元でバスケ部に所属し、インカレ出場も果たした。その過程で、「教育だけでなく、バスケをもっと専門的に教えたいという思いが強くなってコーチの道を目指しました」と説明する。
2019-20シーズンに三遠ネオフェニックスのスクールコーチになると、翌年から2年間はユースコーチに。さらに星城高の女子部アシスタントコーチとして2年間指導にあたり、昨シーズンは地元クラブであるライジングゼファーフクオカU15へ。比江島慎(宇都宮)や金丸晃輔(佐賀)らを育て、全中、都道府県対抗Jr.オールスターなど10度もの全国大会優勝という実績を持つ鶴我隆博HCの下でアシスタントコーチを務めるなど多様なカテゴリーで経験を重ね、今年6月に奈良U18の指揮を執ることになった。その経歴について篠原HCは「ここで学びたいなと思ったチームでやらせてもらっている感じです」と表現している。

恩師のコーチングがベースにあると語る篠原HC
コーチングにあたって最も大切にしているのは、戦術した“子供たちが自分で答えを導き出すこと”。
「ずっと前から考えていることで、コーチはどうしても“こうしてほしい”“そうじゃない”とエゴが出やすいんです。そうではなく『その考え方、そのプレーもいいね』という感じで子供たちの個性を大事にし、より良い方向に導けるようにしたいと考えています。ユースは、将来大学などにもつながる場所。だからこそ、センターが3Pシュートを打つ、ガードの子がポストアップする練習など幅を広げる取り組みも続けています。そういった基盤には、大学の恩師である木葉先生のコーチングがあります」。
教員を目指す中で、バスケコーチに興味を持った篠原HCに、指導者としての夢を聞くと「将来的には日本代表に関わるようなコーチになりたいと思っています。加えて、教え子たちがトップチームにいるような姿を見られたらうれしいですね。それだけでなく、いつか鈴木良和(女子U16代表アソシエイトHC、元女子日本代表AC)さんがやられているERUTLUC社のように指導者育成、コーチング事業にも関わってみたいという考えがあります。鈴木さんや恩塚亨さん(東京医療保健大監督、前女子日本代表HC)は圧倒的な勉強量と経験値を生かした緻密なバスケをされる。雲の上の存在ですが、いつかそこに達したいという思いがあります」と自身のビジョンをまっすぐに言葉にしてくれた。
BリーグU18唯一の女性HCとして臨んだ大会で、奈良U18に初勝利をもたらした篠原HC。その挑戦は、クラブの歴史だけでなく、ユース世代の指導の在り方にも新しい風を吹き込んでいる。

選手たちに寄り添うようなコーチングを見せる篠原HC

写真/伊藤大允、石塚康隆、文/広瀬俊夫(月刊バスケットボール)






