月刊バスケットボール12月号

Bリーグ

2025.11.21

島根スサノオマジック「SMILE HIGH FIVE」で高める地域の“希望と笑顔”

沓名克敏さん(左)・久城秀太さん(右)

子どもたちと地域に寄り添う、クラブの新たな挑戦

島根スサノオマジックは昨年8月にサステナブル活動「SMILE HIGH FIVE」を始動。営業部GMの沓名克敏さんとコーポレート部リーダーの久城秀太さんが中心に、子どもたちへの働きかけと地域の社会課題に向き合う取り組みを進めています。 “島根県、山陰地域を魅力的な都市にし、その中心にクラブがある”——その理想の実現に向けて歩むお二人に話を伺いました。

——昨年8月に「SMILE HIGH FIVE」という新たな活動名でスタートされました。

久城)クラブ創設以来、地域活動を継続的に行ってきましたが、「SMILE HIGH FIVE」と名付け、活動の方向性をより明確に打ち出すことにしました。クラブだけでなく地域の皆さんと一緒に取り組む機会も増え、地域をさらに盛り上げていきたいという思いを込めています。

——それ以前はどんな活動をしていたのでしょうか?

久城)「夢授業」は創立当初から続けている活動です。選手が学校を訪問し、自身の夢を語り、一緒にバスケットボールをしたりします。また、地域のイベントにも選手を中心に積極的に参加してきました。

沓名)かつては人手が足りず、依頼をいただいてもお断りすることもあったのですが、現在では社会的責任活動がクラブの価値を高めるという意識に変わってきています。その象徴が「SMILE HIGH FIVE」です。


夢授業で島根県内の学校を訪れたコティ・クラーク選手、北川弘選手(左)


白濱僚祐選手、横地聖真選手(右)



——地域とのつながりもより強くなっていると感じますか。

沓名)そうですね。例えば、ジェームズ・マイケル・マカドゥ選手の発案で古浦海水浴場の清掃を実施しました。地元企業と連携して取り組み、地域とクラブが一体となる手応えを得ました。今後、ファンの皆さんとも地域を盛り上げるような活動もやりたいと考えています。

久城)私は堀川遊覧船の取り組みが印象的です。地域の方々からの提案で実現した、選手をデザインした特別ラッピング船なのですが、お披露目イベントには多くの方にお越しいただきました。少しでも地元を盛り上げに貢献できたことがうれしかったですね。


堀川遊覧船の取り組み


顔出しパネルも用意された

——幼児期に運動の楽しさを伝え、運動不足や体力低下の改善を目指す「B.Hopeアクティブチャイルドプログラム」を松江市の保育園で実施されたそうですね。子どもたちや先生方の反応はいかがでしたか?

久城)子どもたちは目を輝かせながら取り組んでいましたし、先生にも大変喜んでいただきました。3園で実施して感じたのは、体の使い方が上手な子と、そうでない子の差が想像以上に大きいということです。「体験格差」を、今回の活動を通じてまさに実感しました。体を動かすことが苦手そうな子もいたのですが、スクールコーチが臨機応変に対応してくれたおかげでみんなが楽しめる機会になったと思います。




島根スサノオマジックでは今シーズンもアクティブチャイルドプログラムを実施中 詳しくはこちら



——活動レポートを拝見すると、子ども向けの取り組みがとても多いですね。

久城)「SMILE HIGH FIVE」を立ち上げた当時の中村律COOが「将来の担い手は子どもたちです」と話していましたが、今も強い思いを感じていて子どもたちに焦点を当てた取り組みを積極的に行っています。活動を通じて、子どもたちに島根スサノオマジックをより身近に感じてもらい、夢や希望を持ってもらいたいという考えです。

沓名)加えて、我々はエンターテイメント企業であるバンダイナムコグループの一員で、次世代の子どもたちに夢や希望を届けることは使命だと考えています。地方では格差や困窮家庭の増加といった課題がより際立ってきています。だからこそ、クラブとして子どもたちに夢を与える活動を続けることは大切で、それはいずれ地域の未来を支えることにつながると信じています。

——その一方、CO2削減につながる公共交通の利用促進、清掃活動、献血・臓器移植啓発など幅広い活動をされていますね。

沓名)はい。社会課題には幅広く取り組む必要があると感じています。そして社会的な緊急性、地域のニーズ、クラブとしての持続可能性や影響力といった点を軸に、久城と話し合いながら注力分野や優先順位を決めています。CO2削減の活動は地域の子どもたちにも良い影響を与えると考えていますし、医療分野では献血や臓器移植など命に関わる課題にも関心を持っています。そういった啓発は続けていきたいですね。

——まずは知らなければ何も始まらない。その意義は大きいですね。

沓名)そうですね。今年の3月に「ピンクリボン運動(乳がん検診の促進活動)」を実施したのですが、その際、安藤誓哉選手(現横浜BC)がピンクの直筆サイン入バスケットシューズを提供してくれ、チャリティーオークションを行いました。想像以上の高額で落札してくれた方からは「家族を乳がんで亡くしたので、少しでも社会貢献になるなら金額は惜しくない」という言葉をいただきました。これはアクションを起こす重要性を実感した出来事です。やってみて初めて気づくことも多く、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えています。


「ピンクリボンアクションは今シーズンも実施された

——選手やコーチングスタッフの協力体制はいかがですか?

沓名)選手やコーチはクラブが用意した社会的責任活動に対して真摯に取り組んでくれます。クラブとしては「地域と共に歩む」という理念があり、選手自身が活動の意義や目的を理解し、主体的に関われるようにしていきたいと考えています。そういった中で、外国籍選手は主体的な姿勢が強いです。マカドゥ選手の清掃活動もそうですし、小児病棟への訪問も外国籍選手から「ぜひ協力したい」と声をもらっています。こうした取り組みは、選手が自分の存在意義やクラブの使命を見つめ直す機会にもなりますし、仮に引退しても社会的責任活動を続けられるような形を作れるようサポートしていきたいと考えています。

——最後に「SMILE HIGH FIVE」を通じて実現したいこと、将来への思いをお聞かせください。

沓名)昨シーズン、車いすバスケの企画を実施したのですが、障がい者スポーツの推進は継続すべきだと考えています。また、先日はクラブグッズである「すさたまくん かたぬきバウム」の在庫分をフードバンクしまね様へ寄付しました。そういった一つ一つの活動が共生社会の実現につながるきっかけになってほしいなと思います。理想を挙げれば尽きないのですが、クラブは地域のあらゆる人々にとって「なくてはならない存在」であるべきと考えています。選手やフロントを含め、コートの外でもロールモデルとなり、地域社会に良い影響を与えられる存在として成長できるよう、これからもフロントとしてその仕組みを整えていきたいと考えています。


フードバンクしまね様への寄付の様子

久城)島根県、山陰地域が「ここに住みたい」と思える街になり、その中心に島根スサノオマジックがある。それが私たちの理想です。クラブがきっかけとなり、地域やステークホルダーの皆さんとともに、社会課題や地域課題の解決に近づく。そんな循環を生み出せる存在でありたいと考えています。また私自身、教育学部出身で子どもたちへの思いはひとしおです。未来の宝に夢や希望を示し、意欲を引き出せるよう、今後もさまざまな取り組みを続けていきたいと思います。



取材協力:Bリーグ

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文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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