月刊バスケットボール12月号

大学

2025.10.26

日体大エース・宮城楽子、アキレス腱断裂を乗り越え“進化”して復活

頼れるエース宮城が帰ってきた


第75回関東大学女子リーグの最終週となった10月25日、日本体育大のキャプテン#8宮城楽子(4年/168cm・F)はさすがの存在感を見せつけた。試合開始15秒、#2永田姫舞(4年/156cm・G)のパスを左ウイングで受けるとクロスオーバーで3Pラインの内側に入ってプルアップジャンパー。これでチーム初得点を奪うと、その後もコンスタントに決め、3Pシュート5本成功で21得点。専修大を78-66で退けて、チームを今リーグ5勝目へと導いた。

実は宮城は3月、新シーズンに向けた練習中に左アキレス腱を断裂。スプリングトーナメントは全休となり、リーグ戦6試合目となる9月23日の専修大戦で復帰を果たした。「多少無理をして、急いで復帰した感じです。筋力がまだ足りてないといった面もあったのですが、やっぱり自分が参加したいっていうのもあったんで」と当時の思いを語る。エースとして、4年生として、キャプテンとしてベンチから声援を送る時間は責任を感じる時間でもあったはずだ。

その宮城は復帰直後こそ“ゲーム感覚”を取り戻すことに手間取ったというが、終盤へ向けて一戦ごとに加速。勝ち切る展開を経験しながら、後半戦は安定して自分のリズムを取り戻している。「ケガ前と比べてできないこともある」と認めるものの、すでに恐怖心は払拭。「万全かと言われたら、もっとできる余地はあるかもしれないですが、自分としてはいい状態にはあると感じています」と語る。

ケガ前に戻れているとは言えない中で、故障を機に得られたものもある。
「スキルを使って、シュートまで行くことを自分の中で心がけています。以前はボールもらった時に、パーンと一気のスピードで1対1をやっていました。それをレッグスルー入れてからだったり、ビハインドを入れてちょっと止まってみたりとかをやっています。工夫してはちょっとできるようにはなってきたかなと感じています」と宮城。スピードに依存しないスタイルも手に入れたことはケガの功名と言える。





不在期間に成長した仲間と残る課題


日体大は今リーグを通じて、ディフェンスの原理・原則を再確認してきた。ボックスアウトの徹底、オンボールでのファイトオーバー、スクリーンに対するスイッチの共有。そこからディフェンスからオフェンスへ移行する時間を短縮。アーリーオフェンスを合言葉に、動きの中でチャンスを作り切る意識を強めている。
チームとしては、宮城という得点源が不在だった中でステップアップした選手もいる。「留学生のマカヌアンバ・ロリアン(3年/190cm・C)のリング下での得点は一つです。1年生から試合に出ているということもあって経験値も高いです。あと奥原(心希/3年/169cm・F)がシューターの役割を発揮できるようになってきています。その2人は日体の強みになると思います」と宮城は頼もしげに語る。


宮城が成長したと語るロリアンと奥原

頼れるメンバーが増えた一方で、オフェンスでは足が止まり、宮城や永田が個人技で打開するというオフェンスも多々見られる。宮城が見据えるのは、ドリブルハンドオフやピックからのダイブなど“動的な攻め”の標準化だ。動きを止めずに人数とタイミングで優位を作ることで、自身の3Pシュートやスキルも生かされることになる。約1ヵ月後に迫るインカレ(第77回全日本大学バスケットボール選手権大会)には、それらの課題に取り組んで臨むことになる。








文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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