岡田大河(川崎ブレイブサンダース)――B1で頭角を示す「ゲームチェンジャー」

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10月15日に東急ドレッセとどろきアリーナで行われた川崎ブレイブサンダースvs,仙台89ERS戦後、そのわずか5日前に加入が発表されたばかりだったポイントガードの岡田大河にインタビューさせてもらう機会を得た。Bリーグデビューは11日の富山グラウジーズとのアウェイゲームで済ませていた岡田だが、この日はホームデビュー。激闘の末に残念ながら68-69で敗れたが、直後のインタビューにも岡田はすでに気持ちを切り替えた様子で、落ち着いて対応してくれた。
まずは、「今シーズン初の水曜ゲームということもあると思うんですが、両チームが重く入ってしまった中で自分たちのミスで流れに乗り切れないところがあって、後半にも流れに乗り切れなかったかなと思います」と仙台戦を総括した岡田。3日後の18日からの名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦に向け、「ディフェンス、オフェンスとも強度が上がると思うので、自分が試合に出たときには自分たちに流れを持ってこられるように、流れが悪ければその流れを切れるように、勝負どころで役目を果たせるよう準備したいと思います」と前を向くコメントを残していた。

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「毎試合結果を残してプレータイムを勝ち取りたい」
——今日は初ホームゲームですね。ここまでBリーグのバスケでやってみて特別な感想を持っていますか?
そうですね。チームに流れを持ってきたり、チームにいいリズムを作ったりするのが自分の仕事で、その面ではこれまでと大きくは変わらないです。スピード感や、日本人とプレーする感覚のズレはまだ少しありますね。チームに合流するのが遅かったので、まだ合わることができていません。でも、そこはもう本当に修正していくしかないんじゃないかなと思っています。
——日本人選手と合わせるのに少し違いがあるとのことですが、それ以外のバスケットボールの質も違っていると感じていますか?
1対1の個々のポテンシャルに関して、外国籍の選手は当たり前に結果を出してきた選手が日本に来ていると思いますが、やっぱり個々の能力でまた海外とは違ったやりにくさがあります。スピードにも少し違いがあります。
でも、今の自分はまずチームに合わせることが重要で、チームの中で自分の役割をはっきりさせるというのが一番だと思っています。そこを明確にしないといけないので、相手というよりは、まず自分にフォーカスすることでチームに貢献できるように、チームの良さを生かせるようにと考えています。
——ネノ・ギンズブルグHCからは、「この辺を伸ばしていきなよ」とか、「ここが伸びてくればプレータイムも伸びてくるよ」みたいな助言や課題の提示はありますか?
プレータイムの話はあまりされていないのですが、もっと積極的に得点にからんでいっていいぞと言われています。もっと周りをうまく使ったりだとか、得点につながるようなプレーを増やしていくことを期待されていると思います。
自分が出ている時間帯では常にチームが波に乗っているようなことを期待されていると思うので、そういう面で今日は、前半の終わりを含めて自分が出ている時間で点差を詰められてしまったのは反省点です。プレータイムを安定させるためには、やっぱり自分がそういう面で常にチームにいい印象を与えられるようなプレーヤーにならないといけないと思っています。
——ご自分ではプレーメイク中心のピュアポイントガード的な存在なのか、スコアリングガードのような考え方なのか、どんな感覚ですか?
今は、周りを生かして大事なときに点差を詰めるような選手になることにフォーカスしています。チームの得点につながるなら自分でもやらないといけないですし、周りにうまく合わせるところもありますね。プロの世界は周りに良い選手がそろっていますから、自分でも得点を狙えるし周りを生かすこともできる選手というところにこだわっています。

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——ファンの視点からすると、日本で岡田選手を見られてうれしいばかりです。でも、岡田選手自身はきっとここがゴールというわけではなく、いろいろやっていきたいのだろうと思います。今は目標をどんなふうに考えていますか?
今は目の前のことにしっかり集中して、まずは一試合一試合でしっかり結果を出してプレータイムを勝ち取ることです。限られた時間の中でも自分がもっとチームにいい影響をもたらして、勝利に貢献するのが一番です。そこにフォーカスしてやっていきたいなと思っています。
「コートに立ったら即貢献」の瞬発力
米須玲音を故障離脱で欠いた状態の川崎は、名古屋Dと対戦した第4節を終えて1勝6敗と苦しんでいる。その中で岡田の加入は明るい光。デビュー戦となった富山戦ゲーム1で6得点、3アシストを記録して100-65の今季初勝利に貢献した岡田について、ネノ・ギンズブルグHCも「岡田選手の活躍でPGのポジションに厚みが出る」と期待を込めて話していた。
日本人選手とプレーする中での感覚のズレは、まだ合流してからチームメイトたちとわずかな時間しか共有できていないことが影響しているに違いない。しかし、平均10分33秒の出場時間で2.8アシストを記録していることを思えば、解消されるのにそう時間はかからないのではないだろうか。
最初の5試合を見て感じられる岡田の特徴はどんなところだろうか。まず一つは、このインタビューでも感じられたまだ21歳の若者とは思えないような内面的な落ち着きだ。スペインとフランスのユースチームで腕を磨き、昨季はフランスの1部リーグでデビューして初得点も記録した岡田は、B1の大舞台でも場慣れしたベテランのような雰囲気でコートを見渡している。
その落ち着きは、コートに入ったとたんに何かを起こす瞬発力につながっている。富山でのデビュー戦での最初の出場機会は第2Q残り6分48秒だったが、初アシストはそのわずか7秒後、トランジションで津山尚大の3Pショットを生み出した。そこから30秒後には、ハーフコート・オフェンスで相手ディフェンスのバランスが崩れた瞬間を見逃さず、クロスコートパスで山内ジャヘル琉人の3Pショットにつながる2本目も記録している。

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取材当日の仙台戦でも同じようなことが見られた。最初の登場は第1Q残り3分19秒だったが、そこから40秒後にディフェンスリバウンドをつかむと、そのポゼッションでドゥシャン・リスティッチの3Pショットにつながるアシストを記録している。岡田自身はインタビューの中で、その点よりも流れを奪いきれなかったことへの反省を言葉にしているが、チームメイトとの呼吸が合ってくるにつれ、岡田の脅威は増していくに違いない。

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そんな「ゲームチェンジャー」ぶりに加え、岡田には174cmと小柄にもかかわらず粘り強く決め切る強さがある。富山戦では191cmの宇都直輝の執拗なディフェンスを振り切ってレイアップを沈めた場面があったが、自分よりも大きな相手にもコンタクトしていく勇気と、プレッシャーを受けながらバランスを保つテクニックは、やはり15歳から海外に飛び出して200cm級のビッグマンに囲まれながら腕を磨いた賜物だろう。
この日対戦した仙台には、岡田の幼馴染で同じポイントガードのポジションで活躍している岡島和真が在籍している。岡島自身は稲妻のようなスピードを武器に今季初めてB1の舞台を踏んでいる若手だが、岡田について、「大河はフロアバランスの見方とかパスの供給の仕方とかに、世界レベルでやってきたものがあるなと感じます。自分はスピードを武器にしていますけど、大河はそれを使わずともゲームをコントロールできる力があります」と評していた。
確かに岡田のプレーぶりにはそんな印象を受ける人も多いのではないだろうか。宇都を抜いて決めたレイアップは、スピードで圧倒するのではなく駆け引きの中で得点に至る道筋を見出すような流れだったし、山内へのクロスコートパスも、そのパス自体には電撃的なスピードがあったが、そこに至る過程はしっかりコートバランスを見てプレーしていた。
黒星を先行させた川崎がどのように成績を挽回していくか? その過程で岡田がどんな成長と貢献を見せるか? 今季のB1で大いに注目したい見どころの一つだ。
文/柴田健
タグ: 川崎ブレイブサンダース 岡田大河






