月刊バスケットボール11月号

NBA

2025.10.24

NBAに衝撃、ビラップスHCらが不正ポーカー賭博で起訴とFBIが発表

逮捕が報じられたチャウンシー・ビラップスHC

全米11州で一斉逮捕、3つのマフィア組織が関与

米連邦捜査局(FBI)は現地10月23日(日本時間24日)、全米各地で違法ポーカーゲームの不正操作に関与したとして、計31人を訴追・逮捕したと発表した。起訴された中には、殿堂入りし、現在ポートランド・トレイルブレイザーズのヘッドコーチを務めるチャウンシー・ビラップス、デイモン・ジョーンズ(元キャバリアーズほか)の名も含まれているほか、NBAの発表によるとテリー・ロジアー(ヒート)もチームから即時に活動停止処分となったとしている。

米ニューヨーク東地区連邦地検の発表によると、今回の事件では、ニューヨーク市やイーストハンプトンなどを中心に、ボナンノ、ガンビーノ、ジェノベーゼの3つのイタリア系犯罪組織のメンバーや関係者が、高額な違法ポーカーゲームを運営し、不正な手段で金銭を得ていた疑いがあるとしている。

主犯格らは特殊な無線技術を使用し、カードの順番を事前に把握。共犯者にその情報を伝えて賭けを操作し、被害者から少なくとも700万ドル(約10.7億円)以上を不正に得ていたとされる。手口としては、改造されたシャッフルマシンや特殊なコンタクトレンズ、サングラスなどを使ってカードの情報を読み取る仕組みが含まれていたと紹介。さらに、詐取金は複数のシェル企業を経由して洗浄され、マフィアの資金源として流れていたとされる。


FBIはまた、これらの不正ポーカーゲームは2019年頃から全米に拡大。ニューヨーク市内のレキシントン・アベニューやワシントン・プレイスに設けられた非合法賭博場では、暴力的な取り立ても行われていたと発表。司法当局は「著名な元NBA選手が“フェイスカード(客寄せ役)”として利用され、一般の参加者を引き寄せた」と声明を出しており、ビラップス氏やジョーンズ氏はこの役割を担っていたとみられる。
被告人は、詐欺、恐喝、強盗、マネーロンダリングなど7件の罪状で起訴されたており、有罪と認定されれば、長期の実刑が科される可能性もある。



リーグ側も声明「真摯に受け止めている」


NBAは「これらの容疑を極めて重く受け止めている。リーグの誠実性は最も重要な優先事項である」との声明を発表。現時点でビラップス氏の所属クラブであるトレイルブレイザーズからの詳細なコメントは出ていない。



また米「USAトゥデイ」紙のナンシー・アーマー記者は「NBA自身がギャンブル産業との関係を積極的に進めた結果の一端」とし、2014年にアダム・シルバー・コミッショナーがスポーツ賭博合法化を支持する論考を寄稿していた経緯を挙げて、「リーグは金銭的利益を優先し、リスクを過小評価した」と指摘。各チームがアリーナ内にブックメーカーを設け、公式サイト上でも“公認ベッティングパートナー”を掲載している現状を指摘。「リーグが賭博との線引きを曖昧にしたことが、倫理的な境界を失わせた」との見方を示している。

現時点で被告らは無罪を主張しており、すべての容疑は法廷で審理される予定。連邦地検は、「被害者はギャンブル参加者に限らない可能性がある」として、関係情報の提供を呼びかけている。事件の詳細や裁判日程は、今後の司法手続きの進展に伴い明らかになる見通しである。






文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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