飛躍に向かう渡邊伶音――「アルティーリ千葉に新しい風を吹かせたい」

10月15日の三遠戦でヌワバとマッチアップする渡邉(写真/©B.LEAGUE)
今季からプロとしてアルティーリ千葉のロスターに名を連ねている渡邉伶音。身長206cmの高さがあり、フルコートのトランジションにも積極的に参加できる機動力を備えた万能タイプのフォワードとして、19歳の若さにもかかわらずB1レベルでも早々に活躍が期待されている。
開幕から7試合を終えて4勝3敗のアルティーリ千葉で、渡邉は5試合に出場。平均6分32秒のプレータイムを獲得している。まだまだ「伸びしろばかり」「伸び盛り」の渡邉は、体力や経験で勝るB1のウイングやビッグマンに十分に対抗し切れていないところはもちろん多いだろう。しかし、オフェンスではロングレンジゲームもペイントでの力強いフィニッシュもあり、ディフェンスでは相手の3Pショットをちゅうちょさせるダイナミックなクローズアウトやリム付近で突進してくる相手に立ちはだかるフィジカルなプレーが、チームの助けとなっている。
ここでは、オフ期間に実施したインタビューと今季の序盤戦でのプレーぶりを振り返る。プロ転向と初のB1体験を経た渡邉の成長意欲が伝わる内容だ。
「献身的なプレーも派手なプレーも期待してほしい」
——チームで一番若い渡邉選手にとって、これまでのクラブの歴史とそれに付随する先輩たちの思いを共有してチームで一体となることも大事だと思います。そこについて特に意識していることはありますか?
自分は昨季ちょっとだけ入れてもらったような立場で、クラブの一つの節目となる昨季の最終局面にチームから離れていました。だからこれまでの歴史は知っているものの、年月をかけて自分のチームとして取り組んでこられたほかの皆さんとは、気持ち的なところでちょっと違うところもあるかなということは理解しています。でも、自分としてはそれを理解した上で、2年目というよりも今年が本当の1年目という気持ちで、初めてのチャレンジャーとして頑張ってみたいと思っています。
——昨季の活躍に対するA-xx(アルティーリ千葉ファンの愛称)の反応を見ると、皆さん大歓迎の様子です。A-xxにはどんな選手として認められたいですか?
今季はB1というすごいレベルで、何が起こるか分からない状況です。この時期に、この年齢から入らせてもらって、自分でもきっと壁にどんどんぶつかっていくんだろうなと思っていますけど、そういうときでも戦い続けるつもりです。日に日に自分を成長させて、選手としても人としてもどんどんレベルアップしていきたいので、それを見てほしいなと思います。
——アンドレ・レマニスHCは今季の渡邉選手について、「プロとしてオフコートの姿勢も身に付けていってほしい」というようなことを言っていました。ご自分ではプロとしてこれまでとの違いを改めて感じているところはありますか?
特別指定でやらせてもらっていた昨季と今では状況が変わっています。昨季までは自分以外がみんなプロ選手の方々でしたが、見ていて自分に照らし合わせてみたときに、今までやってきた学生スポーツは、自分がどうであるかにかかわらず明日は来るし、バスケットボールができる環境が当たり前でした。学校に通うこともバスケも当たり前だったんです。でも、これからはプロとしてバスケットボール中心の生活を送るのですから、お金をもらっている責任感を絶対に忘れてはいけません。自分はいい意味で、大学で頑張っている大勢の同級生選手たちと違うんだという気持ちを持って臨まないといけないですね。
——昨季中にお話を聞かせてもらったときに、アジリティー(俊敏性)とか、ラテラルムーブ(横方向の動きの素早さ)を課題に挙げていましたが、その後の強化の手応えはどうですか?
ほんのちょっとかもしれないですけど、今は特別指定の頃よりも手応えを感じる瞬間が増えてきています。でも、うまくいかないことも多いです。コーチには「姿勢が高い」とよく言われます。それは3番ポジションをやる上で絶対に必要ですよね。それだけでなく、もしも4番を守らなきゃいけないときには絶対に低い姿勢で守らなければならないし、5番を相手にしてドライブで抜いてやろうというときも、低い姿勢が基本になると思うので、自分でもそこを強く意識しています。
オフェンス、ディフェンスで課題を考えてみて、自分はこれまでそういうことをあまり意識せずにバスケットボールをプレーしてきていたなと気付かされました。確かに手先でプレーしていたところがあったな、昔から意識していたら苦労しなかったなと思っています。
——夏場の日本代表活動に参加して、どんな手応えを持ち帰りましたか?
A代表でプレーさせてもらうときは、いつもならジョシュ・ホーキンソン選手をはじめインサイドのプレーヤーがいるんですけど、若い選手だけで戦ったカナダ遠征では事情が違っていて、自分は5番ポジションをやりました。その頃は、長い期間A代表に帯同している中で試合に絡む機会がほとんどなかったこともあってか、心拍数とか体力的な部分もちょっと落ちた瞬間があり、自分的にはちょっと悔しい結果で終わったというのが実感です。何かができたというよりは、本当にいつもどおりの最低限のことを、毎試合できたかできなかったか…というぐらいだったんですよね。
——プロになった渡邉選手に、ウイングでピックアンドロールのハンドラーになって、2メンプレーの様子を見ながらリムアタックしてガツンとポスターダンク! みたいなプレーも見たいと思うファンもたくさんいるのではないかと思います。いわゆる「ステートメントゲーム」というようなパフォーマンスをできたらすごいと思いますが、ご自分ではどうですか?
自分は3Pショットもまだまだですけど、狙ってくるというのは周りも分かっていると思います。でも、(リムアタックからダンクのような)相手を倒しにいくプレーも、絶対これから必要になってくると思います。オフェンスでもディフェンスでもどんどん幅広いプレーを目指していきたいですね。いつ自分がそういう完成形になるかは自分しだい。どんどん成長していきたいですし、献身的なプレーも派手なプレーも、期待してほしいなと思います。
文/柴田健
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