B.LEAGUE選手が見つめる社会の未来図「広島・寺嶋良選手と千葉・大塚裕土選手、それぞれの貢献の形」~Part1~

※Part1は寺嶋選手のインタビュー、Part2は大塚選手のインタビューを公開します
広島・寺嶋良選手が描く本と社会貢献の未来「“誰かのために”が原動力」
--2022年の取材の際は、絵本の寄贈について、認定NPO法人「あおぞら」とのさまざまな取り組みなどを伺いました。
寺嶋)そうですね。絵本の寄贈はこれまでも続けてきましたし、今年もやりたいと思っています。
--絵本の寄贈については、寺嶋選手自らセレクトなさっているんですよね。選ぶ基準はあるでしょうか?
寺嶋)そうですね。基準については、親子で楽しめるものがいいなというのはあります。その中でも、ヨシタケシンスケさんの絵本とかはよく選んでいる気がしますね。今後ということでは、本の魅力を伝えていけるような場所を作りたいという思いがあります。

自ら選んだ絵本を寄贈した保育園の園児たちと一緒に

寄贈先の保育園で園児とバスケットボールをする寺嶋選手
--B.LEAGUEへの注目度が上がってくる中で、活動の影響力というのも大きくなっていると感じますね。
寺嶋)確かにそうですね。選手それぞれの注目度も上がっているわけですから、それをいい方向に使っていきたいなというのは考えています。慈善活動もそうですし、本についての発信も自分にできることを見つけてやっていきたいです。
--寺嶋選手にとって、本はどんな存在ですか?
寺嶋)僕にとっては夢を叶えるために必要なものでした。どれだけ自分の手助けになるのか、いろいろな人に知ってほしいなという思いがあります。
--プロ1年目から様々な社会的責任活動を行なってきたと思います。思い返して、自分の中での考えの変化はありますか?
寺嶋)誰かのためにバスケットボールをするということは、それまでありませんでした。例えば、MVPの賞金を寄付する活動も、突き詰めれば自分のためだったかもしれません。しかし、活動を続ける中で、「人のために頑張る」ことが、自分のモチベーションや原動力になると強く感じるようになりました。 それに気づいてから、視野をより外側に向けるようになりました。理想像に近づくために活動している、というイメージです。

『広島ドラゴンフライズフェスタ2025』で子どもたちと触れ合う様子

『広島ドラゴンフライズフェスタ2025』で子どもたちと触れ合う様子
--理想や目標は、どんな状態だと考えますか?
寺嶋)いろいろな要素を持ち合わせたいという思いがあります。今バスケットボールで表現者としてプレーし、それが、たくさんの人に影響を与えたり、頑張る勇気になっていたりします。ただ、バスケットボールでは届かない場所もあります。だからこそ、例えば文章を書いて、誰かのためになればといったことですね。
--これまで多くの方に影響を与えてきています。それらの成果や反応として心に残っているものはありますか?
寺嶋)直近ですと、あるB.LEAGUEの選手が、僕が紹介した本を読んで人生や考え方が変わった、と話している記事を読みました。やってきたことが実ってよかったと感じられた一つです。もちろん、子どもたちからも、いろいろな反響をいただいています。そういったことは、次へのエネルギーになります。自分にやれることはいっぱいあるのだから、もっと挑戦したいなと思えますね。
--それが、頑張る糧になるわけですね。
寺嶋)命綱的な部分というか、気持ち的に切れそうになる瞬間も多々あるのですが、その時に安心材料になるというか、もっと頑張れるんじゃないかと思えます。誰かのために頑張れるからやるわけで、もし自分のためだったらもうバスケットボールをやっていないかもしれません。自分が与えてきた以上に受け取っているものがあるという感覚があります。

マツダスタジアムでの活動に参加する寺嶋選手
--そのお話は他の選手にとっても興味深いものだと思います。例えば、何か行動に移したいと考えている選手から相談されることもありませんか?
寺嶋)けっこうありますね。僕の場合は、本だったり、カンボジアに対する寄付だったりと特殊なので、アドバイスしにくいところはありますし 、他のクラブのことはわからない部分もありますが、自分のチームだったら、まずは社長に相談して、こういうルートでやれば実現できるんじゃないかなといか、次に繋げる方法みたいなことは話したりしますね。
--大森康瑛選手(SR渋谷) による学校訪問や、内尾聡理選手(佐賀)によるひとり親家庭の支援は寺嶋選手が新人選手研修で行った講話がきっかけとなったそうです。
寺嶋)本当ですか? 自分一人の力で社会を大きく変えるのは難しいという思いも常にあるので、僕の話がきっかけとなって行動してくれたことは、すごくうれしいです。10年後、20年後と、その人たちが繋げていって、たくさんの数の人たちが活動をしてくれる状況になったら本望です。
--プロ選手が社会的責任活動をやる意義や意味は、どんなところにあると考えますか?
寺嶋)“僕だからこそできることがある”バスケットボール選手という立場にいる今だからこそ、やるべきことがたくさんあると思っています。もし僕が何の肩書きもない一般人だったら、同じことを言っても伝わり方は全く違うでしょう。夢を実現した経験、様々な苦労、怪我との向き合い方—こうした体験を重ねた今の自分だからこそ、言葉に重みが生まれ、それが多くの人の心に響くのだと感じていますし、非常に強い使命感があります。今の立場だからこそ、もっともっと多くのことをやりたいし、やらなければならないという気持ちが最近は特に強くなっています。
--最後に今後に向けて考えていることを教えてください。
寺嶋)多くの支援活動というのは、実は一時的なものなんですよね。例えば、カンボジアに浄水フィルターを寄贈したとしても、結局数年で使えなくなってしまいます。そういう現実を見ていると、一生残るような取り組みを作りたいという想いが強くなります。僕がプロバスケットボール選手として活動できるのも、おそらくあと数年だと思っています。その後も何かしら活動は続けるでしょうが、例えば20年後に僕が本を出版したとしても、現在ほどの影響力はないでしょう。だからこそ、今のうちに何か永続的に残るものを作りたいです。何年経っても人々の役に立ち続ける、長期的に社会に貢献できる仕組みづくりに力を注ぎたいですね。まだまだ頑張ります。

次回はPart 2としてアルティーリ千葉の大塚裕土選手へのインタビューを公開いたします。
取材協力:Bリーグ
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文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)






