月刊バスケットボール11月号

Bリーグ

2025.10.24

仙台89ERS躍進のキーマン、岡島和真にインタビュー

©B.LEAGUE

10月19日までのB1第4節を終えて5勝2敗の東地区3位と好スタートを切った仙台89ERSで、新任のダン・タシュニーHCとともに今季からチームに加わった控えガードの岡島和真に話を聞いた。


静岡県出身の岡島は、2021-22シーズンに当時B2だったアースフレンズ東京ZでBリーグデビューを果たし、今季5年目というキャリアを持っている。しかし、取材時点でまだ21歳の若きプレーメイカーだ。

岡島の経歴は日本における一般的なプレーヤーとはやや異なっていると言えるだろう。篠原ウィンズミニバスケットボール少年団で全国の舞台を踏み、浜松学院中に進んで全中ベスト8入り。ここまでは有望なプレーヤーが期待に応え結果を出してきた流れと捉えられるかもしれない。

しかし、岡島は三遠ネオフェニックス U15の1期生としても活躍し、オーストラリアの高校に留学している。帰国後は三遠U18に所属してトップチームの練習に参加。そして18歳だった2022年2月に東京Zに加わった。2023-24シーズンには山形ワイヴァンズに移籍してローテーションに定着。持ち前のスピードとクイックネスに加え、ロングレンジからのシュート力にも磨きがかかり、チームがB2の3位に躍進する過程で大きな力となった。

山形でもう1シーズン経験を積んで迎えた今季は自身初のB1挑戦だが、スターティングガードの渡辺翔太のバックアップとして、最初の7試合で平均15.0分の出場時間を得ている。言うまでもなく、コーチ陣とチームメイトの信頼をしっかり得られている証しだろう。

取材したのは、川崎ブレイブサンダースとのアウェイゲームを69-68で制した15日の夜。前節で千葉ジェッツに連敗を喫した後、チームとして是が非でもつかみたかった勝利をつかんだ夜だったが、それはまた岡島にとっては、幼馴染で川崎の一員としてホームデビューを果たした岡田大河とマッチアップする機会でもあった。無得点で1アシストと、数字的にはおとなしかった岡島だが、プレーメイカーらしい振り返りや岡田との再会について、歯切れよく答えてくれた。

目下の課題はショットメイク

——まずは、今日のご自分のパフォーマンスについてどんな感触だったか教えてください。

自分が出ている時間帯にいい感じにディフェンスから走れている部分があったにも関わらず、チームが作ってくれたオープンショットを決め切ることができなかったです。この先もコートに立っていくには、しっかり決めていかなきゃいけないと思います。チームが信頼して自分にボールを回してくれている中で、7本のアテンプトで成功が 0。本当になんて言えばいいやら…。開幕から成功率が悪い中でも信頼してチームがパスを出してくれているので、そうしてくれているうちに決めきらないといけません。

——初めてのB1で、相手のプレッシャーが強いことがフィニッシュに影響しているところもありますか?

レイアップではそれをちょっと感じていますけど、オープンルックの3Pショットを決め切れていないのはシュート力の問題です。味方がオープンを作ってくれているので、自分としてはペイントタッチとオープンショットを決め切ることをしっかりやらなければいけません。本当に決め切らないといけないと思っています。


3Pショットに関してはまだ本調子ではない岡島だが、タシュニーHCは積極的に狙うよう声掛けをしている(©B.LEAGUE)

——岡島選手は3P成功率を上げてきたことで出場時間を獲得してきていましたものね。

そうですね、ずっと35%ぐらい入っていたので。元々シュート力を付けたかったところで、山形に移籍してから入るようになって、使ってもらえるようになりました。今季まだあと55試合残っていますけど、ここをどうやってアジャストしていくかを考えなきゃいけないなと思っています。

——タシュニーHCは「カズマのパフォーマンスをすごく頼りにしている、コンディションがベストではなくても弱気なことを言わずにプレーし続けてくれてとてもありがたい」と言っていましたよ。

普通に動ける状態ではあるので頑張りたいところです。それに、オープンショットを決められないことに今のコンディションは関係ないと思っています。

ダンもチームメイトも自分のことを信頼して「どんどん打ち続けろ」と言ってオープンになったら迷わずパスを出してくれているので、本当に感謝しています。

刺激を受けた岡田大河とのマッチアップ

——今日は岡田大河選手とマッチアップしていました。二人とも海外で学んだりキャリア積んできたりというところが共通で、同世代の選手ですよね。非常に将来が楽しみになるマッチアップでしたが、岡田選手からはどんな刺激を受けましたか?

大河は1歳下で、小学2~3年生の頃からの知り合いなんです。同じチームでプレーしていた時期もありますし、逆に対戦相手として大河と試合をしたのは今日が初めてでした。

大河はフロアバランスの見方とかパスの供給の仕方とかに、世界レベルでやってきたものがあるなと感じます。自分は小柄なガードとしてスピードを武器にしていますけど、大河はそれを使わずともゲームをコントロールできる力があります。それは本当にすごい! 学ぶものがあるなと思います。

自分にとって大河は、いつまでたっても、いつ会っても学ぶものがあります。一緒に練習しても、こうして対戦しても、常にうまくなっているしバスケットに対してひたむきです。自分はなかなかフィールドゴールを決め切れない状況ですが、大河に負けないためにもこの状況をいつまでも続けるわけにはいきません。そう思わせてくれるような試合だったと思います。


岡田とマッチアップしてオフェンスの機会をうかがう岡田(©B.LEAGUE)






こちらは岡島に対してアタックを仕掛ける岡田。両者のマッチアップは日本のバスケットボールの未来そのものだ(©B.LEAGUE)

——「久しぶりだね!」みたいなやりとりなどもできましたか?

ゲーム前には話せなかったので、この後少し話そうと思っていますよ。

——そうでしたか(汗) では早めに切り上げないと(笑)

いえ、全然大丈夫です。大河は僕とマッチアップした瞬間に思いっきりアタックしてきたんで(笑) やっぱりやる気だな! と思いながら対抗しました。

——これまでもずっと連絡を取り合ったりしていたんですか?

たまにですね。大河がBリーグ入りを決めた後も連絡をくれましたし。長いつきあいですしね(笑)

——チームについても聞かせてください。仙台は勝っても負けてもターンオーバーが少なく、岡島選手自身もほとんどしていないと思います。それはいいことだと思う反面、タシュニーHCは前節の会見で、「(チームの)ターンオーバーが少ないのはいいんだけども、もうちょっとアタックしてもいいかなあ」みたいなことを言っていました。その辺はどう思っていますか?

アグレッシブにパスを出したり、オープンを作ってパスを供給したりという中で、必ずしもターンオーバーがなければそれで良いとは言えないと思っています。ボールを持ってパスをさばいているだけだったらターンオーバーも起こりませんからね。もちろんターンオーバーがゼロであるに越したことはないですけど、それに対して自分のペイントタッチの回数が少なくならないようにしなければいけません。

自分は開幕からターンオーバーが少ない分、アタックする回数も減っているかなと思うところもあります。プレシーズンでは結構ターンオーバーがあったんですけど、その分得点とアシストを伸ばせた部分もあったんです。

例えば今日、ネイサン(ブース)に出したパスがターンオーバーになってしまいました(1Q残り30秒、岡田を抜くペイントアタックから、タイミングを合わせてカットしたブースにつなげようとしたプレー)けど、自分にとってはああいうプレーを増やしていかなきゃいけないと思います。あの場面では、自分のパスのスピードがちょっと有り余って強すぎたんですけど、あのようなプレーをバランスよくやらなきゃいけないと思います。


岡島はキャリアを通じて、果敢なリムアタックを土台として3P成功率を上げることでプレーの幅を広げ、飛躍のチャンスをつかんできた(©B.LEAGUE)

——岡島選手自身ももうちょっとアタックモードに入っていいという感覚ですか?

そうですね。自分はある程度3Pショットを決めてこられてはいましたけど、一番の武器であるペイントタッチを頑張らないと。今日は(ペイントアタックから自分でフィニッシュしたのが)最後の方で外した2本だけでした。オープンショットを決め切らなきゃいけないというのももちろんですけど、やっぱりあの2本のように自分の得意なプレーを決め切っていきたいですね。あのプレーを増やして得点を伸ばしていくことが大事かなと思います。

岡島の成長が仙台にもたらすポジティブ

タシュニーHCは「カズマはものすごく大きな将来性を秘めています(“Kazuma has a very, very big future here in Japan.”という言い回し)。この序盤戦ではうちにとってものすごくいい貢献をしてくれていますよ」と話し、岡島のポテンシャルを非常に高く買っている。


タシュニーHCも岡島に大きな期待を寄せている(©B.LEAGUE)

「彼はとてもタフ。このリーグで素晴らしいプレーヤーになれるポテンシャルを持っています。我々としても協力してしっかり伸ばしていきたいですね。(B2からB1に上がったことで)誰もがこれまでの相手より少し速かったり大きかったりしていると思いますので、彼がこのレベルで持ち味を発揮できるように成長を促すことを、我々としても目指しています。ショットメイクも時間の問題ですよ。今日は当たっていなかったですけど、練習ではいつも入っていますから。彼はいいプレーをしているし、向かっている方向性もばっちりです。ぜひ長く仙台で活躍してほしいですね!」

執筆時点で平均2.4得点、1.4アシストという数字は派手ではないかもしれないが、アシスト/ターンオーバー比率5.0は現時点でリーグ全体の14位タイ(チームではトップ)。岡島が堅実さをこのまま維持し、一方でフィニッシュの感覚も取り戻すことができるとすれば、それはバックコートのスターターを務めている渡辺翔太と船生誠也にとっても、よりアグレッシブにプレーする勇気をもたらす力になるだろう。3人が脅威を増せば、ビッグマンの脅威もその分いっそう強大になる。

元NBAのジャレット・カルバーのような目を見張るアスリートも加わった今季の仙台は、現時点でも見応え満点のバスケットボールを見せてくれている。しかし岡島が順調に成長を見せれば、終盤戦では、低迷に苦しんだ昨季が信じられないような目の離せない強豪になっている可能性もあるだろう。

留学経験がある岡島は、コーチ陣や外国籍選手たちとの英語によるコミュニケーションも苦にならないという部分も含めて、仙台にとってユニークな戦力に違いない。果たしてどのような形で存在感を強めていくか、引き続き注目したい。





PICK UP

RELATED