月刊バスケットボール11月号

Bリーグ

2025.10.19

「求められているのは3ポイント」名古屋Dの課題を担うルーキー小澤飛悠の覚悟

デニスHCに「リーグ屈指のオフガードに成長していくと思う」と言わしめた小澤

開幕ダッシュに成功それでも拭えぬ課題


「ここ数年のうちに、リーグでも屈指のオフガードに成長していくはずだ」
名古屋ダイヤモンドドルフィンズのショーン・デニスHCが、ルーキーの小澤飛悠をそう評価した。

10月18日、敵地で行われた川崎ブレイブサンダース戦。試合開始からディフェンスが冴えた名古屋Dは、#11アラン・ウィリアムズ、#34カイル・リチャードソンがペイントエリアで得点し、24-7というスタートを切った。2Q、3Qではスイッチングディフェンスに切り替えた川崎にリードを縮められたものの、#3加藤嵩都がオンボールディフェンスで活躍し、#11アーロン・ヘンリーが4Q序盤に得点源となって突き放し、86-72で5勝目を挙げた。これで5勝1敗、得失点差により長崎ヴェルカに西地区1位を譲ってはいるが、上々の出だしと言っていい。

ここまでの6試合でのディフェンスレーティング*は91.1で暫定1位(2位長崎ヴェルカは100.0で唯一2桁である)。昨季は108.4でリーグ13位だったのだから、開幕直後とはいえ素晴らしい数字である。改善傾向にあるディフェンスについて、デニスHCは「1対1のディフェンスの重要性を強く意識させるために、かなり時間を割いている。また抜かれた後のローテーションにも変化を加えた。相手の特徴もしっかり把握しながら、得意な形を封じることができていると思う」と説明すると、「今後、さらに上位チームと対戦することになるから、(ディフェンスを)試されることになるだろう。それでも、個々の基準を高く保ってさらに成長できると確信している」と力強く語った。
*=100ポゼッションあたりの平均失点


ディフェンスの改善について1対1の重要性を強く意識させたと語ったデニスHC



ディフェンスが引き締まった一方、チームに小さな“引っかかり”がある。それが3Pシュートの精度だ。昨シーズン、名古屋Dはリーグ2位の試投数(31.2本)を放ちながら、成功率は31.9%(20位)だった。2Pシュート成功率はリーグ5位の54.0%だったが、FGに占める3Pシュートの割合が46.3%(リーグ2位の高さ)だっただけに、その成功率は課題だった。今季6試合での3Pシュート成功率は、リーグ24位で27.0%(7.8/29.0)。FE名古屋から移籍の#11ヘンリーなどの活躍もあって、FGに占める3Pシュートは39.1%に下がっているものの、勝ち星を重ねていくためには3Pシュートの精度向上が不可欠だ。

その点について、デニスHCは「他のチームと同じように練習するほかない。そして、なるべくオープンでシュートを放ち続けること。それが大切なんだ。そのためにも必要なのがオフェンスリバウンドだ。チーム全体でシューターを信じること。外れてもオフェンスリバウンドを奪ってもう1度攻める。今日については、少し物足りなかった(15本)」とシューターを支えるプレーの重要性を説いた。

昨季からのプラスアルファということで、チームに可能性をもたらしているのが小澤である。ベンチスタートではあるものの、ローテーションに入って全試合に出場。この日も18分49秒に出場し、3Pシュートを1本成功(試投数4)、8得点を記録した。現時点では3割を切る成功率とあって、「安定感に欠けるところは最大の課題」とデニスHCは苦言も呈したが、「確実に決めるシューター(knockdown shooter)になれる可能性を秘めていると思う。改善が必要なディフェンスも含めて全力で努力しているということは、本当に素晴らしい点だ。彼は若くして良いスコアラーだ。数年の内にリーグ屈指のオフガードに成長していくと思う」と期待を寄せた。


この日の3Pシュートは1本成功に留まった



「やっぱりドルフィンズに来てよかった」刺激的な環境でプロの自覚を育む


このチームで何を表現すべきかを、小澤も当然理解している。
「やはり3ポイントは、ヘッドコーチから求められていると思っています。それとディフェンスです。良ければもっとプレータイムも伸びますし、自分に矢印を向けて言い訳しないで頑張っていきたいです」と力を込めた。

コート上の小澤は、本当に楽しそうにプレーする。それは、名古屋Dだからこそでもあるようだ。
「名古屋Dを選んだ理由の一つが、リスペクトできる選手が多いからでした。毎日、その選手たちに会って練習して話をして、オフコートでも一緒に出かけたりもして。そういうのはすごい刺激になりますし、ベテランの方々が頑張っている姿を見ると、プロとしての意識を学べたりもします。そういうのを感じるたびに、『やっぱり来てよかったな』と思えます」と小澤は笑顔で話す。合流から数ヵ月とあって、練習の強度にも慣れてきた。「はじめは『やばいな』『やっぱレベルが高いな』と思っていました」と明かすと、「練習の強度が一番違います。正直なところ、大学だと全力でなくても通用する部分はあったんですけど、名古屋Dでは毎日の練習で常に100%の緊張感で練習しなければなりません。やはりそこが大学との一番の違いかなと感じています。自分がやるべきことをしっかり遂行すること。ヘッドコーチに求められることをやっていけば結果は自ずと出ると思うので、しっかりアジャストして頑張っていきたいなと思っています」と今後の成長を誓った。


楽しそうにプレーする小澤、刺激的な環境に身を置けていると明かした

プロの世界に飛び込み、日々の練習で成長を実感する小澤だが、その視線はすでに長いシーズン全体を見据えている。60試合という長いシーズンを戦っていくために、「マインドセットが一番大事だと考えています。60試合の中では、不調な日もあるはずです。そこでヘッドダウンしないこと。次の試合に向けてしっかり準備を続けることが大事だと思っています」とプロとして1年間戦い抜くための心構えを語った。



また厳しいシーズンを乗り越えるには、日々の積み重ねに加え、チーム内競争の中で自らを高めることが欠かせない。囲み取材の中では、現状ケガで戦列を離れている#12中東泰斗(下顎骨骨折)、#14佐藤卓磨(右膝前十字靭帯損傷)が復帰した時についても聞かれると「泰斗さんも、拓磨さんもそれぞれいいものを持っていますし、自分も2人にないものを持っていると思います。アピールして少しでも多くプレータイムをもらえるように頑張ろうと思います。やっぱりオフェンスの部分は負けられないと思いますし、やはり負けたくない部分ではあります。そこを自分の武器として、頑張っていきたいなと思います」とライバルとの競争に意欲を見せた小澤。

強固なディフェンスを武器に好スタートを切った名古屋D。チームが抱える課題、3Pシュートにおいて、ルーキーの小澤が新たな光となるのか。チームの進化と若きスコアラーの成長から目が離せない。


チームの進化と若きスコアラーの成長から目が離せない





文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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