月刊バスケットボール11月号

Bリーグ

2025.10.14

神戸ストークス開幕4連勝!――成長痛を伴うプレミア序章の戦いで好スタート

10月4日の開幕初戦で勝利の喜びをブースターと分け合う川辺泰三HC(写真/©神戸ストークス)

神戸ストークスの本拠地であるジーライオンアリーナでは、4月の開業からオフシーズン期間も様々なイベントが催され、B2の新シーズン開幕を迎えた104日、翌5日の福井ブローウィンズ戦も周辺からにぎわいを見せていた。試合開始1時間前にはコンコースが人であふれ、グルメやグッズを求める列が伸びた。春先よりチームカラーの緑のグッズを身につけたブースターが目立ち、初めて見るスタッフも増えたように思え、アリーナを取り巻くプロジェクトが現在進行形であると改めて感じさせた。


新築のアリーナがウォーターフロントエリアに根ざそうとしている状況で、チームは開幕までに大胆な改革を施した。4月のアリーナ開業シリーズを戦ったロスターから5人を残し、9人が退団するドラスティックな改革で周囲を仰天させたのだ。前シーズンは後半戦の追い上げも及ばずプレーオフ進出を逃したが、来季の参入が決まっているBプレミアへの手土産に「B2優勝」は至上命題。まずは目標達成へ向けてフロントが意気込みを示し、神戸はニューカマーたちが早速持ち味を発揮して開幕2連勝で走り出した。その戦いでは、まだ滑り出しではあるが、新生チームの骨格も浮き彫りになっている。

新旧の戦力が早くも融合の手応え

生まれ変わったチームで、攻守に火付け役を担うのが寺園脩斗(PG)だ。新司令塔はB1レバンガ北海道から加入したばかりにもかかわらずキャプテンを任され、守備では前線から精力的に走り回っている。ボールを持てば11の仕掛けで膠着状態を打開し、「コミュニケーションをとりながら、皆が同じ方向を向けるように意識している」と話すように、アリウープパスも供給しながら2試合連続で6アシスト。初のB2には手探りや戸惑いも感じている段階だが、キャリア8年目の勝負慣れも感じさせた。新任の川辺泰三HCが選手に求める「インテンシティ(プレーの強度)」を高め、チーム構築のキーマンになる存在だ。


寺園は神戸躍進のカギを握るプレーメイカーだ(写真/©神戸ストークス)

シューティングガードの木村圭吾は開幕2連戦で対戦した福井からの移籍で、古巣相手に2試合で3P13試投中6本成功と確率良く沈めた。特に第4Qの「チームとしての勢いが足りていない」と感じた場面で「流れを作りたい」と長距離砲を炸裂。今季は寺園とともに、チームの課題だったガードの得点力を上積みしそうだ。スモールフォワードのポジションで同じく新加入の八村阿蓮も、2試合続けて11得点とアピールした。開幕戦では、第4Qには同点に追いつくシュートや逆転のフリースローに成功。結成からわずか数ヵ月のチームは、昨季にプレーオフまで進出した福井相手に連係不足も露呈して「途中で向こうに流れをやってしまったが、自分たちで取り戻せた」点を誇った。


開幕早々の古巣との2試合で連続2桁得点を記録して勝利に貢献した木村(写真/©神戸ストークス)






キャリア7年目で初めてB2でプレーしている八村は、開幕からの4試合で出場時間、得点、リバウンド、アシストがいずれも自己最高の数字となっている(写真/©神戸ストークス)

新加入選手の活躍は味方の刺激にもなっている。生え抜きのスモールフォワード、金田龍弥は「B1で厳しい経験をしてきた選手が多いので、より厳しいところを要求されることが多いですけど、一緒に練習できるのも自分のレベルアップにつながる」と語った。


身長195cmで代表クラスのポテンシャルを感じさせるシューター金田が、木村とどのような切磋琢磨をみせていくかは今季の神戸の見どころの一つだ(写真/©神戸ストークス)

プレミアへの手土産にB2制覇を

今季からチームを率いる川辺HCは、開幕戦を終えた時点での達成度を「4050点」とした。「ディフェンスは結構コンセプトが伝わってきてはいるが、できている時間帯とできていない時間帯が明確にあった」と言う。ただし、「(序盤は)笛が多くてファウルトラブルになったけど、自分たちが目指すところでもある」とも振り返っている。就任直後から、「ストークスプライド」を表現するために「ボールマンプレッシャー、リバウンド、ルーズボールへのダイブ、ポジションファイト」を重視しており、アグレッシブな姿勢の浸透には手応えを得られたようだ。


ジーライオンアリーナ神戸での開幕初戦勝利直後の様子。開幕節はこの日が8759人、翌5日のゲーム2にも8370人と連日大観衆が来場した(写真/©神戸ストークス)

昨季までB1(ファイティングイーグルス名古屋)で3シーズンを戦った指揮官は、プレーの強度こそがB2との大きな違いとも口にしている。その点は、今シーズンだけでなく、中長期的な視点でもチームの成長を測る物差しになりそうだ。また、オフェンスについても「誰がボールを持ったらどのセットと、指示を出すことで遂行力が上がった」と語るように、試合中の適応力も見られた。今後は「3Pショットが入ってないので、確率をどうやって上げていくのか、打つ選手を決めていくのか考えていくべきと思っている」と徐々に戦術も固まりそうだ。

戦力の層が厚くなった一方で、成長痛も抱えながらの戦いが続くことは織り込み済み。川辺HCは「12月まではチームビルトと考えているので、ある程度選手に選択肢を与えたい。こういうことができるというのは(選手にも)見せてほしい」と行く先を展望した。チームは続く第2節も2連勝。シーズン折り返しを迎える年末に、指揮官はチームに何点をつけているだろうか。





文/藤原彬

タグ: B2リーグ

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