「派手なプレーはできずとも、絞りにくい選手に」 福岡大学附属大濠 #6 吉岡陽

控えのディフェンダーからスタメンスコアラーへ
「U18日清食品トップリーグ2025」第5週、9月27日(土)の第3試合では、仙台大学附属明成(宮城県)と福岡大学附属大濠(福岡県)が激突しました。過去の全国大会でも幾度となく名勝負を繰り広げてきた両校の対戦とあって、会場のシティホールプラザ アオーレ長岡(新潟県長岡市)には多くのファンが詰めかけ、試合は最後まで手に汗握る接戦となりました。
試合の幕開けは、福岡大学附属大濠の2年生エース#14本田蕗以選手(2年/190cm)の得点からスタート。直後、仙台大学附属明成の三浦悠太郎選手(3年/188cm)や小田嶌秋斗選手(3年/165cm)にフリースローを許す場面もありましたが、#13榎木璃旺選手(3年/169cm)を起点とした速攻で流れを引き寄せ、本田選手がランニングプレーから次々とフリースローを獲得します。
本田選手は第1クォーターだけで3ポイントシュート1本を含む12得点。さらに#5栗原咲太郎選手(3年/183cm)と#9吉岡陽選手(3年/184cm)がそれぞれ2本ずつ決め、福岡大学附属大濠はこのクォーターの3ポイントシュートを5本すべて成功させて28-13と大幅リードに成功しました。第2クォーターは一進一退の攻防が続き、48-34と福岡大学附属大濠の14点リードで前半を折り返します。
第3クォーター序盤、福岡大学附属大濠は3分以上無得点の時間が続き、その間に小田嶌選手の連続得点などで明成に追い上げられました。それでも、要所で本田選手や榎木選手が得点を重ね、9点差を保ったまま最終クォーターへ。
第4クォーター、仙台大学附属明成の#10荻田航羽選手(3年/190cm)に2本の3ポイントシュートを決められ追い上げられますが、福岡大学附属大濠は吉岡選手がタフショットを沈め、僅差で逆転を許しません。プレッシャーのかかる場面でも吉岡選手はフリースローを確実に決め、ディフェンスでも存在感を発揮。その後、本田選手が勝負を決定付けるドライブをねじ込み、福岡大学附属大濠が76-69で勝利を収めました。

この試合、28得点の本田選手に次ぐ18得点を挙げ、相手の追い上げムードを断ち切って勝利に大きく貢献したのが吉岡選手。彼はこれまで2年間、主にベンチから出場し、ディフェンスで相手にプレッシャーをかける役割を担ってきました。しかし、6月の九州大会で中村文哉選手(2年/190cm)が負傷離脱したことをきっかけにスタメンに抜擢。「中村選手ほどシュートは入らないですし、本田選手のような身体能力もありません。でも、トランジションで走り切ることや、状況に応じてプレーすることが自分の強みかなと思います」と語るように、常に頭を使いながら自らの役割を模索してきたそうです。
スタメンに定着してからは、これまでのディフェンダーの役割に加え、時にはコンボガードとして榎木選手をサポートし、得点が止まればスコアラーとして活躍。吉岡選手は「ずっと一貫して同じことをやるのではなくて、シューターがいればペイントアタックをしたり、中に切り込める選手がいるなら3ポイントシュートを打ったり。一緒に出るメンバーに応じて自分の役割は変わります」と語ります。なぜこれほど多彩なプレーが可能なのかと問うと、クラブチームWATCH&C ACADEMYに所属していた中学時代と、高校での過去2年間の経験が土台になっているそう。「中学1、2年生のときにアウトサイドのプレーを磨き、中学3年生ではガードを経験させてもらってプレーの幅を広げられました。加えて、高校に入ってからは周りに点取り屋がたくさんいるので、2年間ディフェンスに力を入れてきました」と語ります。
また、今年スタメンになってからはハンドラーとしても急成長。それは「1つ上の湧川裕斗さん(明治大)が、ピックの使い方がすごくうまかったので、それをイメージしています」と、先輩のプレーを意識しながらスキルを磨いてきた成果の表れのようです。
3年目で大きく飛躍した吉岡選手は、「派手なプレーはできなくても、止めづらい、相手にとって絞りにくい選手になりたいです」とさらなる成長を誓います。身体能力やセンスに頼らず、頭脳を駆使してチームに貢献するそのプレースタイルは、多くのバスケットボールプレーヤーにとっても参考になるはず。今後の試合でも、ぜひ注目してほしい選手の一人です。

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写真/石塚康隆 文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)