高橋芙由子(FLOWLISH GUNMA.EXE)——さらなるアップデートを期する激闘のシーズンエンド

FLOWLISH GUNMA.EXE の3x3.EXE PREMIER 2025 WOMENのレギュラーラウンドが終わり、プレーオフ進出チームが確定した。残ったのはUENOHARA SUNRISE.EXEとSANJO BEATERS.EXEの2チーム。過去2年間のレギュラーラウンドを首位で終え、いずれもプレーオフファイナリストとなっていたFLOWLISH GUNMA.EXEは3位となり、チームの誕生以後初めてプレーオフ進出を逃す悔しい結果となった。
8月30日に群馬県高崎市のビエント高崎で開催されたれたレギュラーラウンド最終日(第8ラウンド)では、ホームタウンの熱烈な声援を受けファイナルに進出。勝てばプレーオフに手が届くところまできていた。しかし、UENOHARA SUNRISE.EXEと戦った最後の一戦は相手に先行を許す苦しい展開に。終盤19-20と1点差まで迫ったが、わずかに届かずシーズンエンドとなった。
圧倒的な得点力でチームをけん引してきた高橋芙由子(高は「はしごだか」)は、相手のKO弾がネットを揺らした後、しばらくコート上にうずくまり動くことができなかった。FLOWLISH GUNMA.EXEのチームカラーであるオレンジのシャツを着た地元ファンもその場を動かず、顔を上げられずにいる高橋の姿を見守っていた。

悔しさを乗り越えて頑張る理由がある
試合終了から1時間も過ぎただろうか。話を聞く機会をもらうことができた。まだ瞳を潤ませたままの高橋の表情には悔しさがにじむ。記者に囲まれると穏やかな笑顔を取り戻し、落ち着いて対応してくれたが、振り返るとやはり悔しさが言葉に乗って伝わってきた。
「チームとしても個人としても、もう1歩、2歩とレベルアップ、アップデートしていかないと勝てません。アップデートのスピードが(周囲の進化に)ついてきていないと感じています」
「今日はホームゲームで、いろんな人に背中を押してもらって苦しい試合も勝ち抜くことができたのはすごくよかったです。ただ、勝ち方や試合運びはチームとしてもっと成長しないといけないなとすごく感じました」
この日はファイナルだけではなく、プール戦から厳しい展開が多かった。ST-KASUMI.EXEとの初戦は、一つも負けられない戦況からの緊張があったのか一時10-18と大きなビハインドを背負った。レギュレーションの10分間を終える直前に高橋が沈めたフィールドゴールで19-19の同点に追いつき、オーバータイムでも高橋のKOフィールドゴールで21-20ときわどく勝利をつかんだが、続くSHINSHU SAKU REGION.EXEとの2試合目(18-15)、再びST-KASUMI.EXEと戦ったセミファイナル(21-19)も、ホッと一息できる瞬間が一度もない激戦だった。
過去2年間の実績も、今春のFIBA3x3アジアカップ2025での銀メダル獲得も過去のこと。リーグもライバルチームもアップデートされている。今季を締めくくるレギュラーラウンド最終戦で、高橋はそんな肌感覚を覚えたのかもしれない。
自らは何をアップデートするべきなのか。
勝ちきれなかった要因の一つは、「相手のディフェンスが変わったときへの対応」と髙橋は言う。「私が攻め気を持つ中で周囲を生かす方法もまだまだ。自分でアタックしているところに、チームメイトにはどんな形でついてきてもらうのがいいか。自分がオフェンスの軸になりながら、相手のディフェンスを見て最適な判断をできるような、次のレベルのバスケットボールを作れたらいいなと思います」
オフェンスの組み立てとして、高橋のフィールドゴール・アテンプトを増やしながら、それ自体での得点だけでなくチームとしてのアドバンテージである横井美沙らリバウンダーの能力を生かしたいというのが基本的な考え方。「そこは崩さないで、相手が私への対応をしてきたときのやりあい方を発展させたいですね。私がボールを持って単純に1対1や2対2をやるだけではなく、ボールを一度チームメイトに預けてから再度受けに来てそこから展開したり。日本代表活動でもいろんな経験をさせてもらったので、それをもっとこのチームに落とし込みたい思いもあります。個々の感覚やアイディアの幅を広げられるように、めげずにやっていきます」
話を聞き終わる頃には、悔しさよりも今後に向けた意欲の方が言葉の色として強くなっていた高橋。このままで終わってなるものか。
高橋には、そんな思いを後押ししてFLOWLISH GUNMA.EXEのホームゲームを盛り上げてくれる大勢のファンがいる。来年には「FIBAウィメンズシリーズ」の高崎開催という楽しみなニュースもある。下を向いている暇はない。
FLOWLISH GUNMA.EXEのホームゲームは昨年から始まったこと。今季の第8ラウンドではチームグッズショップやキッチンカーが来場者を迎え、メンバーの入場時にはオリジナルのテーマ曲もかかるなど、会場全体がFLOWLISH GUNMA.EXEをまさしく「我がチーム」としてバックアップしていた。ショップのスタッフもこの取り組みについて、「地元で誘致してホームゲームとしてやっているんですよ!」と誇らしげ。「リーグの協力下で、いろんな人がかかわって規模を大きくしてくれました。こうしたケースはなかなかないことですし、大勢のファンが集まってくれて、地元に愛されるチームになれているんだなと感じさせてくれます。すごくうれしいですね」と話す高橋も優しい表情になった。
FIBAウィメンズシリーズ2026の高崎ストップに関しては、現時点で詳細な情報はないが、来年8月下旬に高崎アリーナを舞台に開催されるとのこと。「日本で開催できるのは本当にすごいこと。来年また日本代表候補に入ることができるかというところも含めて頑張りたいと思います」と高橋は目を輝かせながら話した。
負けて終わった3x3.EXE PREMIER 2025 WOMEN。高橋とFLOWLISH GUNMA.EXEは、地元のファンとともにすでに前を向いている。「これも必要な経験だったんだ」。いつかそう言える日が来るに違いない。
文/柴田健