月刊バスケットボール11月号

3x3女子

2025.09.23

2つの顔を持つ3x3ボーラー丸山陽絵——ベストオブミス東京2024グランプリ受賞者がバスケットボール界にもたらすインスピレーション

丸山陽絵(まるやま あきえ)というバスケットボール・プレーヤーをご存じだろうか。


東海大三高(東海大付諏訪)時代には、月刊バスケットボールのインターハイ特集号で注目選手の一人として紹介された。その後は日女体大に進み、卒業後は紀陽銀行ハートビーツへ。2021年には、「高松宮記念杯 第3回全日本社会人バスケットボール地域リーグチャンピオンシップ」の優勝メンバーに名を連ねた。

現在は、埼玉県川越市を拠点に活動している3x3チーム「ST-KASUMI.EXE」に所属。今年は3x3.EXE PREMIER 2025に初めて参戦した。

830日に群馬県高崎市の「ビエント高崎」で開催された今季のレギュラーラウンド最終戦(第8ラウンド)、丸山はゴール下からも距離のある位置からも多彩なオフェンスを見せ、ディフェンス面でも足をよく動かしてチームの決勝トーナメントに貢献した。年間チャンピオンを決めるプレーオフには届かなかったので、今季の日程はこの日で全て終了。しかし通算109敗の5位は、初参戦のチームとしてまずまずではなかっただろうか。

ディフェンスに力を入れ、大きくても小柄でも足を止めずに奮闘するのがチームカラー。その中で、174cmの長身と機動力を生かしてインサイドでもアウトサイドでも得点できる丸山の“ツーウェイ・プレーヤー”ぶりは、見る者の目を引き付ける魅力があった。

しかし、丸山の最も魅力的な側面は、異なるアングルからそのライフスタイルを照らさなければ見えてこない。それは、ボーラーとしてのオンコートでの活躍と、「美の世界」での飛躍を目指す女性としてのオフコートの活動という両道をこなす「ツーウェイ・ライフ」をまい進していることなのだ。



「美の世界でも日本一」を目指す

紀陽銀行を辞めて長野に帰郷していた昨年、丸山は食事会の席で思わぬ機会に恵まれた。その場に偶然「ベストオブミス東京2024」というミスコンの関係者が来店しており、帰り際に「出てみませんか?」と声をかけられたのだ。聞けば「ベストオブミス東京」というタイトルのそのイベントは、世界最高峰のミス・コンテストとして知られる「ミス・ユニバース」の日本大会と「ミス・プラネット・ジャパン」「ミス・ユニバーシティ・ジャパン」という3つのメジャーなコンテストの東京予選だという。


それまでバスケットボール一筋の人生を送っていた丸山には、縁のない世界と思われた。長野に戻ったのも、現役キャリアの最後を故郷で全うしたかったから。「最初にお話を聞いた時点では、『華やかな世界のことはわかりませんし、遠慮しておきます』とお伝えしていたんです」と丸山は言う。

しかし、詳しい説明を聞いてそれまでの自分のキャリアを振り返り、また自分だけでなく女性プレーヤーの一般的なキャリア像を思い浮かべたときに、少し異なる考え方を持つようになった。「私ももう少し違う生き方をできるのではないか…」

丸山は挑戦することにした。

「それまでバスケしかやってこなかった私は、ミスコンは華やかで表舞台に立ちたい人たちが出場する世界だと思っていたし、多くの人がそう思われているかもしれないですね。でも、実はミスコンの狙いが世の中で活躍できるオピニオンリーダーを育成することだと知って、興味を惹かれました。私自身を見直すことも大事だなと感じて、出場を決心したんです」

「ベストオブミス東京」にエントリーした丸山はグランプリを受賞し、美しさと地球環境保護を結びつけた国際的な美容コンテストである「ミス・プラネット・ジャパン2024」への切符を手に入れた。

「出てみたら、すごく自分自身が成長できたと感じました。今ではモデルのようなお仕事ももらえるようになりましたが、そうした機会と現役プレーヤーの両立ができたら、日本にこれまでいなかった選手像を見せられるとも思っています。この立場なら、いろんな活動に挑戦できそうです!」



モデル業などの仕事を気負って受けているわけではなく、「いいなと思った仕事を個別にお受けするようにしています」という丸山だが、中には華々しい舞台もある。今春には、中森明菜の着物デザイナーを務める紫藤尚世が手掛ける、丸帯(江戸時代から広まった、格式高い第一礼装で女性が着用する帯)を広めるイベント(44日に東京都港区のRED° TOKYO TOWERで開催された「匠の技と日本現代美の融合 〜丸帯〜 紫藤尚世アートの世界」)に出演した。また、「モデルに限らずいろんな顔を持てたらいいなと思っています」という丸山には、テレビ出演の機会も舞い込んでいる。思い切って挑戦したツーウェイ・ライフは順調に広がりを見せているようだ。

ただ、ミスコンに出ることを決め、挑戦した当初は、いわゆる“アンチ”からの強烈な批判に悩まされたこともあったという。「例えば、『バスケの選手だというのに、あなたはいったい何を目指しているの? 目立ちたいだけなんじゃないの?』みたいな。でも私は決めた以上絶対にやってやろうと思いました。今に見ていろという気持ちでしたね」。そんな丸山がコンテストに臨んだ際のメッセージには、こんな言葉がつづられていた。

20年間バスケットボールに励んできました。
美の大会でも同様、常に日本一目指して精進して参ります。
応援宜しくお願いします。

強い決心を胸に美の世界に飛び込んだ丸山だからこそ、今でもバスケットボールを大切にし、バスケットボールの世界における女子選手のキャリア構築にエールを送りながら、充実したツーウェイ・ライフを実現させられているのだろう。

「現役選手たちの中で、プレーを続けながら別の世界での活躍を目指して道を切り開く人が増えたら素晴らしいなと思います。いろんなことに挑戦するのは勇気がいりますけど、私を見た人たちが何かに挑戦する勇気を見つけてもらえたらうれしいですね。様々な選択肢の中からバスケを選べるような生き方がベスト。様々な形で活躍できる人が、たくさんいるんじゃないかと思うんですよ」

3x3のコートに立つ丸山とミスコンの世界にいる丸山は、異なるタイプの魅力を眩しく発散している。その輝きはどちらも、間違いなく後続の選手たちの進むべき道を示す光となるだろう。



文/柴田健

タグ: 3x3.EXE PREMIER

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