月刊バスケットボール10月号

3x3女子

2025.09.14

Wリーガーから転身! 遠藤桐(UENOHARA SUNRISE.EXE)の3x3ライフ

927(土)、28日(日)に大阪府大阪市の「グラングリーン大阪 ロートハートスクエアうめきた」で開催される、3x3.EXE PREMIER PLAYOFFS 2025 WOMENへの進出を決めた、UENOHARA SUNRISE.EXEの遠藤桐。ミニバス時代から全国大会を舞台に活躍し、桜花学園高時代には最終学年でキャプテンを務め、アンダーカテゴリーの日本代表としてもU16アジアカップ2013(準優勝)、U17ワールドカップ20147位)と大舞台で足跡を残したシューティングガードだ。高校卒業後にはWリーグのアイシン ウィングス(チーム入り当時の呼称はアイシン・エィ・ダブリュ ウィングス)で6シーズン活躍し、2021-22シーズンを最後に引退していた。


コートバランスを見ながらアグレッシブに攻め込むドライブには、スマートさと力強さが同居している。その切れ味も生かしたミドルレンジからのプルアップ・ジャンパーは、今季リーグ全体でもトップレベルの決定力を誇る。今季出場した24試合における総得点142は、高橋芙由子(FLOWLISH GUNMA.EXE)の199得点に次ぐリーグ全体2位だ。

素早いドリブルでマッチアップするディフェンダーとの間に一瞬のセパレーションを生み出し、スッと真上に飛び上がって独特のしなやかなリリースからプルアップ・ジャンパーを放つ遠藤は、その一瞬の舞を楽しむ妖精のようだ。遠目からも一目でわかる遠藤のショットは、今季、何度となくネットを揺らした。

3x3の世界を知るようになったのは、昨年まで生活していた鹿児島の地。「5人制を引退して、もうバスケはやり切ったかなと思っていました」という心境だったが、力を入れているチームから日本選手権に出ないかと誘われた。「実際にやってみると全然違う競技だなと思いました。そこに魅力を感じて、すごく楽しくて…!」

そんな出来事を経て関東に生活拠点を移した遠藤は、今季からUENOHARA SUNRISE.EXEに加わり、3x3.EXE PREMIER PLAYOFFS 2025に参戦している。そしてレギュラーラウンドの最後となる第8ラウンドで、年間チャンピオンへの挑戦権を手にしたところだ。

830日に群馬県高崎市の「ビエント高崎」で開催された今季第8ラウンド、UENOHARA SUNRISE.EXEは、予選プール首位で決勝トーナメントに駒を進めると、セミファイナルでTAITO OWLS.EXE18-16で下してレギュラーラウンドの年間上位2チームに与えられるプレーオフ出場権を獲得。さらにファイナルでもFLOWLISH GUNMA.EXE21-19とノックアウトで下し、今季の8ラウンド中3度目の王座に就いた。

セミファイナルまでは結果いかんでプレーオフ出場を逃す可能性もあったこの日は、接戦に次ぐ接戦。遠藤の体は悲鳴を上げ、ファイナルの最後の1分間は左足がけいれんを起こしてプレーできなかった。チームメイトの奮闘を見守り勝利を確認した後は、今度は喜びすぎて(?)けいれんが全身に広がり、横たわったまま身動きさえできなくなっていた。チームメイトに抱えてもらいながら喜びを分け合い、ほとばしる汗も気にせず笑顔を輝かせる遠藤の姿から、完全燃焼の清々しさが伝わる。


第8ラウンド優勝を決めた後、身動きできなくなった遠藤の周りにチームメイトたちが付き合って寝そべっていた(左から吉武忍、田中真琴、遠藤、右端は上が山桑惠望、下が八木希沙下)

3x3との出会ってあらためて気付いたバスケットボールの魅力

バスケットボールに関しては、もう“おなか一杯”——そんなふうに思っていた。5人制でやり切ったはずだった。しかし今、ボールを追いかけファイトする遠藤は、その頃とは異なる熱を帯びながら躍動している。

5人制をやっていた頃と同じ熱量でまた頑張れる3x3は、とてもありがたい存在。そう感じているのは私だけではないと思います。3x3.EXE PREMIERのように盛り上がっている大会があることで、私のような立場の人たちも楽しんで活躍できる新たなステージができているんですから。これはすごくいいことだと思います」

5人制でいくつかの高みに到達した遠藤の目には、3x3の魅力はどんなふうに映っているのだろうか。

「自分みたいに得点を取るのが好きな選手からすると、展開が速い分シュートの本数が多くなるところが楽しめます(3x3のショットクロックは5人制の半分の12秒)。5人制ではもっとプレーを作ってシュートすると思うんですけど、3x3は迷っている余裕はなくて、チャンスがあればどんどん打たなければいけません。でも一方で、その短い時間でも瞬時に組み立てられるシステムがあって、考えて、駆け引きがあって。シュートが1点と2点で、ロングレンジからだと倍になるというところも、5人制とは全く違う戦い方が必要になるし、そういうところも好きです。点数の“ゴール”も決まっている(先に21得点したチームがその時点で勝利となる)から、ディフェンスもしなければいけないですけど、きつくて足も止まってきてしまう中でファウルもうまく使わなければいけないし。試合時間が40分間の5人制と比べると、10分しかない3x3は本当にたくさん考えるんですけど、そこも好きです…」

ちらっと聞いてみただけで、遠藤はとめどなく3x3の魅力を語った。「5人制の選手たちにもためになるし、もっと広まればいいですよね!」と話す遠藤は、Wリーグを一度引退した完成されたアスリートというよりも、初めてバスケットボールに触れた頃の少女と話しているような初々しさに包まれているように感じる。試合開始前やタイムアウト時の、チーム一体となって声を発する円陣や、試合中にチームメイト同士で声を掛け合う様子からは、「勝たねばならない」「追い求めなければいけない」という気負いはまったく感じられない。「さあ、全力で楽しむよ!」「私たちの時間だよ!」——伝わってくるのはそんなメッセージなのだ。







UENOHARA SUNRISE.EXEで、私たちは自分を素直に表現できていると思います。それはたぶん、いろんなものを背負っていないからでしょう」。遠藤は今のバスケットボールとの向き合い方をそんなふうに言い表した。

素直に表現する「自分たち」とは、「バスケットボールが大好きな一人の若者」であり、それ以上でも以下でもないのだろう。ほかの誰かのためではなく、自分と自分たちのために全力を尽くそう——レギュラーラウンド全体の1位通過でプレーオフに進出することができたのは、そんな気持ちが体現されたからに違いない。

見ている側もそれを感じる。3x3で人生を謳歌する姿が胸を打つ。きっと遠藤の活躍を見て、「私もやってみたいな」と感じる子どもたちや若者たちが増えることだろう。それは、5人制に取り組んでいた頃に背負っていたものよりも大きな価値を持っているのではないだろうか。

☆3x3.EXE PREMIER PLAYOFFS 2025 WOMEN情報
開催日程: 公式サイト
ライブ配信: 3x3.EXE公式YouTubeチャンネル





文/柴田健

タグ: 3x3.EXE PREMIER

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