【インタビュー】新人インカレMVP、日本経済大の児玉ジュニアとは?

今年で3回目の開催となった新人インカレでMVPを獲得した日本経済大の児玉ジュニア(2年)。180㎝と決してサイズがあるわけではないが、持ち前の身体能力の高さでコートを疾走し、時にはファストブレイクからダンクシュートをリングに叩き込むなど、味方だけでなく会場中を沸かせるプレーは豪快だった。ポジションはシューティングガードだが、素早いトランジションからアシストパスで味方を生かすなど、速攻の起点としてもポテンシャルを見せ、さらなる成長が期待される選手だ。
九州のバスケを全国区にしたい!
日本経済大は、新人インカレで8組(全24チーム)に分かれて行われたグループステージを勝ち上がり、8チームによる順位決定トーナメントに進出。準々決勝では関東新人戦優勝の東海大、準決勝は関西新人戦2位の京都産大、そして、決勝は関東新人戦2位の白鷗大と対戦した。いずれも強豪ばかりだったが、日本経済大は立ちふさがる関東、関西の雄をことごとく打ち破りチャンピオンの座へとたどりついた。児玉はグループステージ2試合の合計51点、トーナメントの1回戦(東海大戦)25点、準決勝(京産大戦)17点、決勝の白鷗大戦では22点とオフェンスの軸となり、ディフェンスでもルーズボールを奪うなどファイトを見せて優勝に貢献した。そんな児玉に、喜びの声を聞いてみた。
――おめでとうございます。優勝とMVP獲得の感想をお願いします。
「うれしいのはうれしいです。MVPは僕か(大庭)涼太郎のどっちが取ってもおかしくなかったし、僕だけじゃなくてスタートで出た5人全員がMVPだと思っています」
――決勝の白鷗大戦については?
「リードしている展開だったのですが、途中で詰められる場面があって。(これまで)僕たちは油断してやられることが結構多くて、アキさん(片桐章光監督)からもそこだけだと言われていたんです。だから、そこで踏ん張ろう、我慢しようというのをベンチからも声を出してくれたし、出ている選手もみんなで声をかけ合って、原点に戻ってディフェンスやリバウンド、ルーズボールを取り続けた結果が勝利につながったと思います。西日本選手権で負けた時(準決勝で東海大九州に60-65)も、何度も試合をしていた相手で油断してしまい、集中力が切れて追いつけなかったりしていたので、まずは自分たちでしっかり集中力を保ってやろうというのを意識していました」
――ご自身のパフォーマンスはいかがでしたか?
「そこそこだったと思います。白鷗大のディフェンスに苦しめられた部分もありましたが、新人インカレに合わせて何百本もシューティングしてきたから、自分を信じて、仲間を信じてシュートを打てたのでそれが入ったのかなと思います」
――ディフェンスも良かったです。
「アキさんにいつも、『お前はオフェンスじゃなくてディフェンスから頑張って、先に流れを持ってこい』と言われているので、どちらかというと試合前に考えるのはオフェンスのことよりもディフェンスから入ろうと意識して、足を動かして相手のエースを0点で押さえるぐらいの気持ちでやっています」
――新人インカレで優勝しました。では、今後の目標は?
「ゴールはインカレ優勝! 僕が日経に入学する前に井手口先生(孝/福岡第一高コーチ)に言われていたことは『バスケっていえば関東やし、関東は才能ある選手がいっぱいいるけれど、九州もそこに負けるな。お前は高校日本一を経験しているので、お前が日本一の意識を日経に持っていって、九州もバスケが強い、バスケも頑張っているのを知れ渡らせろ』というのを言われていたので、そこが目標です」
高校は福岡第一。高3の冬にやっとAチーム入りした隠れた逸材
ここ数年、高校バスケは福岡第一や福岡大附大濠など福岡県勢が全国大会の上位進出常連校になっている。しかし、高校を卒業すると有望株の多くは関東の大学に進学。大学バスケというと、過去のインカレ上位校をひもといてもほぼ関東勢が占めているのが現状だ。そこで、児玉に九州地区の日本経済大に進学した経緯を聞いてみた。
「高校時代はずーっとBチームで3年の冬にAチームに入ったんですけど、アキさんはBチームの練習から僕を見てくれていて『(日本経済大に)来ないか』とアプローチしてくれました。ほかの大学に行きたい気持ちもありましたけど、日経なら優勝も狙えるし、経験も積めるから決めたんです。監督のアキさんはとても面倒見がよくて、バスケはもちろんのこと、(授業の)出席率には厳しく、お金の面、家庭のこと、寮でのことまで一人ひとりのことを最後まで気を遣ってくれます。だから、バスケ3割くらいでいろいろ面倒を見てもらっています」
そして、高校の恩師・井手口コーチが日本経済大進学に背中を押してくれたことも決め手の一つになったと言う。大学入学後は即座にメンバー入りし、1年生の頃から主力の一人として西日本、インカレ等でチームに貢献する活躍を見せている。
目標の選手は、日本代表にも名を連ねているジャン・ローレンス・ハーパージュニア(サンロッカーズ渋谷)。中3の時から目標にしており、福岡第一高に進学したのも理由の一つで、ハーパージュニアがディフェンスから速攻でレイアップやダンクシュートを決めるプレーに憧れていたと言う。
大学日本一を目標に掲げ、ルーズボールを拾い、みんなでリバウンドに飛びつく泥臭いプレーを徹底して戦う日本経済大。九州の代表としてこれからも全国の舞台に挑んでいく。では自身の課題についてはどう考えているのだろうか。
「ディフェンスの面でいうと、スティールを狙いにいったり、結構気持ちが出過ぎてファウルがかさんでしまうところがあるので、ディフェンスではもうちょっと落ち着いて、コースを止めたり、狙えるところで狙うとか、冷静なディフェンスをしないといけないなと思います。オフェンスでも前のめりになってしまいがちなので、周りにパスを散らしたり、味方のためにスクリーンをかけにいったりするなど、そういうプレーがあまりできていないのが課題だと思います」
また、同級生については「僕は場の雰囲気や空気を読めないので、『お前は何も考えずにシュートに行けるとこは行け!』って言ってくれる」とコメント。児玉の周りにはコントロールするガードの大庭涼太郎や淺田竜輝、そして、リバウンドで頑張る是久春道といった仲間がいるからこそ、児玉は伸び伸びとリングにアタックできる。それを身にしみて感じているようだった。
決勝は福岡第一高の後輩、八田滉仁ともマッチアップ。3Pシュートを決め合うなどお互い楽しそうに火花を散らせた
文/飯塚友子