月刊バスケットボール10月号

青春の記憶を呼び覚ます戦い。高校OB同士の対抗戦「REPLAY」

かつて同じコートで汗を流し、喜びも悲しみも共有しながら勝利を目指して戦った仲間たち。時を経て再び集結し、もう一度“あの瞬間”をプレイするーー。

そんな高校OBチーム同士の対抗戦「REPLAY」が、7月12日、神奈川県川崎市で開催された。

バスケットボールウェアブランド「VAYoreLA」が主催する本イベントは、もともと「VS THE OB」の名で2016年から定期的に開催されてきた。コロナ禍による中断を経て、このたび「REPLAY」と名を改め、新たなスタートを切ったのだ。


参加者たちは貴重な時間を噛みしめるように笑顔でプレー
 
今年は、5つの高校OBチームが参戦。東海大付相模高OB、麻布大附渕野辺高(現麻布大附高)OB、湘南工科大附高OB、東海大付浦安高OB、市柏高OBという顔ぶれで、20代の若手から40代のベテラン(最年長は66歳)まで、世代を超えたOBたちが集結した。
 
かつてのチームメイトと再会したり、憧れの大先輩と初めて一緒にコートに立ったり。会場は終始、懐かしさと新たな出会いが交錯する独特の雰囲気に包まれていた。SOMECITYなどで活躍する人気MCの秋山卍丸氏がマイクを握り、時にユーモアを交えた熱い実況が場を盛り上げる。また、出場チームの中にはかつての恩師を招いてベンチに入ってもらったところもあり、タイムアウトなどで選手たちの心には青春時代の記憶が鮮やかに蘇った。


タイムアウトで指示を出す恩師の前ではかつての高校生の顔になる

VAYoreLAの沼田泰朋氏は、開催の原点をこう語る。

「バスケットボール界にはミニバスからシニアまでさまざまなカテゴリーの大会が存在しますし、現役生対OBのOB戦というのも珍しくない。でも、OB同士が競い合う大会は今までにないだろうと感じましたし、絶対に面白いと思ったんです。参加者たちは、たとえ年齢がバラバラでも、同じ校舎で過ごした高校3年間と、バスケットが好きだという共通点があります。この大会をきっかけに、OBたちの交流が広がってくれれば本望ですね。僕自身、バスケットボールを通じて良い思いをたくさんしてきて、人生で救われたことがいっぱいあります。卒業後、さまざまな事情でプレーから遠ざかっていた方々が、バスケの魅力や高校時代の思い出を再発見する機会になれば、すごくうれしいです」


市柏高OBとして自らもプレーした沼田氏


教え子たちを見守りに来た元東海大付浦安高の今澤秀行氏も短時間ながらコートイン。「バスケが大好きな、幅広い世代が集まって一緒にプレーするというのはすごく良い機会」と話していた

280歳を超えなければいけない特別ルール


REPLAYの大きな特徴は、その独創的なルール設計にある。参加資格は参加チームの卒業生・OBに限定されるが、ベンチメンバーは最低8人いれば何人でも登録可。そして参加メンバーのうち、最年長から8名の合計年齢が280歳を超えなければならないという条件が設けられている。もし条件を満たさない場合、相手へのハンディキャップとして3Pシュートが2点、2Pシュートとフリースローが1点という特別ルールが適用される。

この日、東海大付相模高OBは急な欠場者も出て合計280歳を超えなかったため、ハンディキャップを背負うことに。それでも、2019年のウインターカップ出場メンバーを中心とした若さと勢いで、開き直って3Pシュート(2点)を連発。3位決定戦では大逆転勝利を収め、会場を沸かせた。東海大付相模高OBの木村嗣人氏は、「今回の『REPLAY』イベントを通じて、改めて『人とのつながり』や『バスケットボールがくれる縁』の尊さを感じました。バスケを通じて築ける『つながり』と『信頼』は一生もの。勝敗を超えて、仲間とともに汗を流した日々こそが、かけがえのない財産です」と語っていた。


高確率の3Pシュートで2点を積み重ねた


若手主体で爆発力のあった東海大付相模高OB 

その東海大付相模高OBに3位決定戦で惜敗したのが、即席で結成された「チーム千葉」だ。実は、勝てば3位決定戦に進める5位決定戦で東海大付浦安高OBが市柏高OBに勝利したものの、子どもの送迎などでメンバーが減少。そこで市柏高OBに3位決定戦への出場権を譲ろうとしたところ、「それなら一緒にチーム千葉で戦いましょう」と提案があり、急きょ合同チームを結成する予想外の展開となった。
 
かつてコート上で火花を散らした敵同士でも、青春時代をバスケットボールに捧げた同じ仲間。若さで勝る東海大付相模高OBに敗れはしたものの、「チーム千葉」の一体感と笑顔は、REPLAYというイベントの本質を象徴するものだった。


千葉対決を制した東海大付浦安高OB


最後は東海大付浦安高OBと市柏高OBで結束して3位決定戦を戦った

初代チャンピオンを決める決勝戦は神奈川対決に


神奈川同士の激しいぶつかり合いとなった決勝戦

和やかな雰囲気で進行してきた大会も、決勝戦では一転して緊迫した空気が漂った。決勝戦は麻布大附渕野辺高OBと湘南工科大附高OBの戦い。往年のライバル同士、意地とプライドがぶつかり合う真剣勝負となったが、最終的には麻布大附渕野辺高OBが優勝を勝ち取った。
 
麻布大附渕野辺高OBのエースとして活躍した柴田政勝氏は、3x3プロチームのSHONAN SEASIDE.EXEで活躍するベテランプレーヤー。「高校の恩師の前でプレーする機会なんて、もう二度とないだろうと思っていました。タイムアウトのときの先生の顔が完全に現役時代のもので、身が引き締まる思いでしたね(笑)。高校時代によく対戦していた湘南工科大附に勝てたことも、すごくうれしいです」と喜びを語る。そして「チームとして2回ほど練習して今大会に臨んだので、OB同士の絆も深まりました。初代チャンピオンという誇りを胸に、来年も連覇を目指して参戦したい」と、早くも次回への意欲を見せた。


力強いプレーでチームを引っ張った麻布大附渕野辺高OBの柴田氏

なお、今回出場した5チームのうち、湘南工科大附高と東海大付相模高は今年、し烈な予選を勝ち抜いて27日から始まるインターハイに出場する。現役の後輩たちに向けて、湘南工科大附高OBの杉山文彦氏は「自分たちも今回の機会で伝統の激しいディフェンス、諦めないルーズボール、歳を重ねても走ることができました!インターハイに挑む現役の皆さんも、TECHらしく暴れてきてください!」とコメント。東海大付相模高OBの木村氏からも「インターハイ出場、本当におめでとうございます!全国の舞台に立つその姿は、私たちOBにとっても大きな誇りであり、何よりの喜びです。皆さんの努力がこの結果につながったことに、心から敬意を表します。どうかこの時間を、仲間とともに全力で楽しんでください。コートに立つ一人ひとりの背中には、OBの想いと、これまでの歴史があります。全国の舞台でも、東海大相模らしい粘り強く、熱いバスケットを信じてプレーしてください」とエールが寄せられた。

VAYoreLAの沼田氏は今後の展望について、「今年は僕たちから声をかけさせてもらって出場チームを決定したのですが、ゆくゆくは公募形式にして、より多くの高校OBが参加できる大会にしたいと思っています。さらに規模が広がれば、東北大会や近畿大会など、地域ごとに全国各地で開催したいですね。そして全国大会を、聖地・代々木第二で開催できたら最高です」と構想を語っていた。バスケットボールを愛する者たちの新たな祭典として、これからのREPLAYにも注目していきたい。


優勝した麻布大附渕野辺高OB


準優勝の湘南工科大附高OB

バイオレーラ
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文・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

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