月刊バスケットボール10月号

セカンダリーハンドラーとしてチームを支える西田優大「自分がチームメイトの役割をもっと理解すれば、かなりの問題解決につながる」

西田が果たす“潤滑油”の役割


デンマーク代表をLaLa arena TOKYO-BAYに迎えた「SoftBank CUP 2025(千葉大会)」のゲーム2で、男子日本代表は69-63の勝利を飾った。ゲーム1でホーバスHCが話した「80点取りたい」という目標には届かなかったものの、1戦目含めて“連勝できた”ことの意味は大きかった。

試合内容もゲーム1と比較すると悪くなかった。3Pシュートはこの試合でも8/35(22.9%)と低調に終わったが、前日よりもボールが回り人が動き、ワイドオープンショットを何本も生み出せた事実は評価できる。

起点となったジョシュ・ホーキンソンはゲーム1に続いてチーム最多の得点(17)を記録。吉井裕鷹も復帰2戦目にして15得点。さらには相手ビッグマンの上から豪快なポスタライズダンクを決め切るなど、コンディションを上げてきた。若手選手もアグレッシブなプレーが増え、湧川颯斗はペイントアタックや3Pで積極的にアピール。山﨑一渉も得点こそ挙げられなかったが積極性を貫いた。

それぞれが少しずつステップアップした印象のあるこの試合において、いや、現在の日本代表においてバランサーとなっているのは西田優大だろう。この試合では3P0/4で4得点とスコアリングは振るわなかった。だが、22分14秒のプレータイムと5リバウンド、3アシスト、1スティールというバランスの取れた活躍は、彼がこのチームにおいて重要なピースであることを物語る。



PGのコントロールに不安が残るチームにおいて、西田は彼らを補佐するセカンドハンドラーとしても安定している。本人は「ディシジョンメイクでミスをしてターンオーバーをしてしまう場面もあるので、まだその役割がうまくいっている感覚はない」と話すが、「これからもっとオフェンスをクリアにして、それに加えて(自分が)チームメイトの役割をもっと理解すれば、かなりの問題解決につながるんじゃないかと思います」と自身のプレーが浮沈のカギになることを理解している。

実際、セカンドユニットの一員として、PGのハーパージャンローレンスジュニアの補佐役になったときは、「彼は若いし一人だけにやらせてしまうとやり過ぎてしまうことがあります。そういう意味でも僕が一本落ち着かせることを意識しています」とバランスを取っている。正PGを務めるテーブス海と出場する時間帯には、彼の負担を軽減する意味で数ポゼッションは西田がメインの司令塔を務めるタイミングもある。テーブスは西田のそんな存在が「めちゃくちゃ大きい」と語る。

「オランダ戦が終わったときに優大が『このメンバーだともう一人のクリエイターにならないといけない』と話していました。今までは優大をシューターというか、2番ポジションで回していたんですけど、今は一緒にコートに立つときにはもう一人のガードとして一緒にやろうと話して、それからは本当に助かっています。自分がボール運びで疲れたときとか、違うアングルでピックを使いたいときには優大が助けてくれるので本当に助かってます」

西田が自身と同い年であることもテーブスにとっては心地良い。「優大とは一番付き合いが長いです。それこそ、U14ぐらいのときからずっと一緒にやってきた“阿吽の呼吸”のようなものは間違いなくあります。ワールドカップのときは同じポジションを争っていましたが、今はお互い支えを合える存在。コートに立っている時間は僕ら2人が長いので、もっともっとお互いの気持ちを理解できるようにしていきたいです」



西田がセカンドハンドラーとして潤滑油に立ち回るのには、自身がFIBAワールドカップ2023でPGにコンバートした際に周りのハンドラーに大きく助けられた経験が根底にある。実際、ゲーム1後には「PGの気持ちが分かるからこそ、今度は自分がもう少し助けてあげたいなと思っています」と話していた。

トム・ホーバスHC体制になってから、“ホーバス・チルドレン”の一員として、西田は長く日本代表で活躍してきた。一方で、ワールドカップで試合に絡めなかったり、オリンピックの選考で落選したりという悔しさも味わってきた。酸いも甘いもかみ分けてきたからこそ、彼は何が日本代表に必要なのかを最も理解している一人となった。

この後、いよいよ本戦出場の12人が選ばれ、男子日本代表はアジアカップの舞台サウジアラビアに乗り込む。付いていく側から中堅の立場になり、今度はチームを引っ張っていく身となった西田。潤滑油という役割は一見地味かもしれないが、勝つために間違いなく必要なその役割は、今は西田にしか担えない。




取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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