月刊バスケットボール10月号

田中こころ“自信持って打つだけ” ──19歳の司令塔がここ一番で魅せた![FIBA女子アジアカップ2025]

3P5本27得点、圧巻の活躍で勝利に貢献


チーム最年少19歳の司令塔、田中こころが、ここ一番という大舞台で輝きを放った。7月19日、中国・深圳で行われた「FIBA女子アジアカップ2025」準決勝。日本(FIBAランク9位)は開催国・中国(同4位)と対戦し、90-81で勝利した。試合開始からエンジン全開の田中は1Qだけで5本の3Pシュートを含む21得点を挙げ、その後も要所で得点し、最終的には27得点、5スティールをマーク。貢献度を表すエフィシェンシーはチームトップの26で、試合のプレーヤー・オブ・ザ・ゲームに選出された。

【動画】田中こころ中国戦ハイライト集をチェック

「絶対に勝つという気持ちで最初から挑めたのが良かったかなと思います。チームとしても、全員が気持ちを強く持って、40分間最後まで諦めずに我慢してできました。それが勝ちに繋がったかなと思います」と試合後の会見で語った田中。その言葉どおり、気持ちの強さが表れたプレーぶりだった。

試合開始直後、ファーストオフェンスではショットクロックぎりぎりというタイミングでセンターサークル付近から3Pシュートを決めて先制。続いてレイアップ2本、プルアップ3Pシュートとチーム最初の10点をすべて奪った。さらに24-27とリードを許した1Q終了間際にも、ステップバックから5本目となる3Pシュートを決め、27-27の同点で1Qを締めた。


3Pシュートだけでなく、スピードを生かしたレイアップも相手の脅威となった



ツインタワー(226cmのチャン・ツーユウ、205cmのハン・シュー)を生かしインサイドを中心に攻撃した中国に対して日本は2枚、3枚と付いて対応。最終的にリバウンドは35-40と上回られたものの、後半はリバウンドでも奮起を見せた。コーリー・ゲインズHCは中国遠征の経験が生きたと語り、「今日は選手たちがゲームプランをしっかり遂行してくれた試合だった。試合前に立てた戦略を彼女たちは実行し、中国がそれに対応してきたので、我々も新たな戦略に切り替えた。その中で、選手たちは冷静さを保ち、自分たちが話し合ったことをやりきってくれた。この勝利は選手たちのもの。彼女たちがこの試合を勝ち取った。本当に、よくやってくれた」とプラン通りの試合だったとしている。

1Qで勢いをもたらした田中は、その後は得点ペースこそ落ちたものの、彼女が序盤に灯した火はチームに伝播。2点ビハインドで迎えた後半は、宮澤夕貴、今野紀花らが存在感を発揮し3Qを24-14として流れを引き寄せた。

立て役者となった田中について、ゲインズHCは「何より、『ココ(田中)』のような選手がいるのは大きい。彼女は若くて足もフレッシュだし、今日も疲れを見せずに走り切った。試合数が多い中で、それは本当にすごいこと。彼女の未来は明るいと思う。経験を積むごとにどんどん成長していくだろう。私は彼女に厳しくしてきた。だけど、それは“愛”があるからこそ。タフラブ(厳しさの裏にある愛情)というやつだ。私は彼女の中に“偉大さ”を見ている。だからこそ、厳しく接しているんだ」とコメント。続けて「ココを初めて見たのは、今年に入ってから。そのときから彼女には“恐れ”がないと気付いていた。感情をあまり表に出さないし、普通なら動揺するような場面でも平然としている。私が怒鳴っても、表情を変えずに話を聞き、自分の中で整理しようとするんだ。そういう選手はなかなかいない。彼女は、まだまだ良くなる。試合を重ねるたびに、確実に成長している。年齢を重ねるにつれて、ますます良い選手になっていくと思うよ」と語った。

今大会、田中を全試合でスタメンに起用し、チームトップの平均24.3分という出場時間を託してきたゲインズHC。その信頼に、田中は中国戦での爆発的な活躍で応えてみせた。


全試合でスタメン出場する田中こころ(左から2番目)

7月3日、4日、女子デンマーク代表チーム(同55位)と対戦した三井不動産カップ2025(東京大会)。ミックスゾーンで、高さのある中国戦ではキャッチ&シュートが簡単ではなくなるため、田中のプルアップジャンパーがカギを握るのでは?と質問した。その答えが以下のものだった。
 「相手が大きいです。けど、少し離れたところから狙っていければ、全然可能性はあると思っています。まだまだ練習は必要ですけど、自信持って打つだけだなと思います」
自信を持って打つだけ――その言葉を証明する活躍だった。

決勝の相手は、グループフェーズで唯一黒星を喫したオーストラリア(同2位)である。日本はその試合で前半こそリードして折り返したが、後半で16-37と失速。課題と収穫が同居する一戦だった。それでも、決勝という舞台でリベンジのチャンスが巡ってきた。

2013年大会から2021年大会までアジア5連覇を達成した日本にとって、2023年大会の決勝で中国に敗れた悔しさは今も記憶に新しい。その中国にリベンジを果たした。今大会は来年行われるFIBA女子ワールドカップ2026の予選でもあり、上位6チームが最終予選へとコマを進め、優勝すれば出場権を獲得できる。アジアの頂点まであと一つ。決勝は本日7月20日20時30分ティップオフ予定だ。


中国戦でプレーヤー・オブ・ザ・ゲームに選出された



■FIBAアジアカップ2025
日程:2025年7月13日〜20日
開催地:中国・深圳(深圳スポーツセンター)
出場国(予選グループフェーズ)
【グループA】中国(4)、ニュージーランド(26)、韓国(14)、インドネシア(57)
1位:中国(3勝)
2位:韓国(2勝1敗)
3位:ニュージーランド(1勝2敗)
4位:インドネシア(3敗)

【グループB】日本(9)、オーストラリア(2)、フィリピン(44)、レバノン(54)
1位:オーストラリア(3勝)
2位:日本(2勝1敗)
3位:フィリピン(1勝2敗)
4位:レバノン(3敗)
※()内数字はFIBAランキング(2025年7月7日時点)

試合日程(日本時間)
7月13日(日) 14:30 日本 72-68 レバノン
7月14日(月) 20:30 日本 85-82 フィリピン
7月15日(火) 17:30 日本 67-79 オーストラリア
7月18日(金) 17:30 準決勝進出決定戦 日本 77-62 ニュージーランド
7月19日(土) 20:30 準決勝 日本 90-81 中国
7月20日(日) 20:30 決勝 日本 vs オーストラリア
放送・配信:BSフジ・フジテレビ・CSフジテレビNEXT・TWO・FOD・DAZN

■2025 年度バスケットボール女子日本代表チーム
FIBA 女子アジアカップ 2025 日本代表選手 メンバー表

【スタッフ】
チームリーダー 小栗 弘(公益財団法人日本バスケットボール協会)
ヘッドコーチ コーリー・ゲインズ(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アシスタントコーチ 宮田 知己(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アナライジングコーチ 伊藤 恭子(デンソー アイリス)
通訳 下條 海(公益財団法人日本バスケットボール協会)
スポーツパフォーマンスコーチ 臼井 智洋(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー 荻野 まゆみ(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー 小川 未央 (公益財団法人日本バスケットボール協会)
チームマネージャー 古海 五月(公益財団法人日本バスケットボール協会)
チームマネージャー 小松 佳緒里(ENEOSサンフラワーズ)
テクニカルスタッフ 有賀 早希(富士通 レッドウェーブ)
ドクター 小松 孝行(順天堂大学医学部スポーツ医学研究室)

【選手】
#2今野 紀花 SG / 179cm / 25歳 / デンソー アイリス)
#3馬瓜 ステファニー SF / 182cm / 26歳 / CASADEMONT ZARAGOZA)
#4川井 麻衣 PG / 171cm / 29歳 / デンソー アイリス)
#8髙田 真希 PF / 185cm /35歳 / デンソー アイリス)
#10渡嘉敷 来夢 C / 193cm / 34歳 / アイシン ウィングス)
#26田中 こころ PG / 172cm / 19歳 / ENEOSサンフラワーズ)
#37薮 未奈海 SF/SG / 178cm / 20歳 /デンソー アイリス)
#52宮澤 夕貴 PF / 183cm / 32歳 / 富士通 レッドウェーブ)
#59星 杏璃 SG / 171cm / 25歳 / ENEOSサンフラワーズ)
#75東藤 なな子 SG/PG / 175cm / 24歳 / トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
#77栗林 未和 C / 188cm / 26歳 / 東京羽田ヴィッキーズ)
#99オコエ 桃仁花 PF / 183cm / 26歳 / ENEOSサンフラワーズ)
※年齢・所属は7月7日時点










文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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