月刊バスケットボール10月号

男子日本代表のカギはPGにあり、テーブス海「ペースをどんどん上げていかなきゃいけない」

後半で逆転勝利も前半はオフェンスが機能せず

このチームでまだ80点取れていない。明日は80点取りたい──試合後のフラッシュインタビューでトム・ホーバスHCが語った内容だ。

「SoftBank CUP 2025(千葉大会)」のゲーム1で、男子日本代表はデンマーク代表を69-64で退け、3試合ぶりの勝利を飾った。白星という結果と、特に後半のプレーぶりは評価できるものだった一方で、日本らしいハイペースで点を取るバスケができたかと聞かれたら、イエスとは言えない。

特に前半はハーフコートゲームでなかなかボールが動かない時間帯が長く、ハーフタイム時点で26-30のビハインド、かつロースコアだった。アウトサイドのシュートやフリースローのタッチが定まらなかった部分はそうなった一つの要因に挙げられるが、それ以前にオフェンスの組み立て自体がうまくいかずにタフショットを打たざるを得ない場面が目立った。特にボールエントリーでディフレクションされたり、ペイントアタックからの展開が少なかった印象だ。

だが一方で、ジョシュ・ホーキンソンのポストアップを中心に攻めた後半はボールムーブが改善され、テーブス海や金近廉の3Pシュートがリズム良く決まった。後半で43得点したペースを維持できれば80点ゲームは十分に可能なだけに、「たまに(良いペースで)プレーしているけど、それが続かない」とホーバスHCが指摘する連動性は、このチームの大きな課題である。

ペースアップのカギを握る
PG陣の苦悩と成長

その課題を克服するために重要なのがPGのペース作り。現ロスターでPG登録されているのはテーブス、中村太地、湧川颯斗、ハーパージャンローレンスジュニアの4人だが、実際のところPGを務めているのはテーブスとハーパーの2人。中村はシューター色が強く、湧川は可能性こそあれど現時点ではPGを任せられる技量が不十分だ。





先発PGを務めたテーブスはこの試合で18得点を記録した。その彼にしても自チーム(アルバルク東京)ではハーフコート主体のバスケをしているため、ペースアップを大きな課題と感じている。

「やっぱりペースをどんどん上げていかなきゃいけないと思いますし、トムさんも言うようにまだ(強化試合で)80点取れていないのが現実としてあります。どんどんプッシュして、テンポを速くしてポゼッションを増やしたいです。でも、それで点が取れない時間帯には一旦落ち着いてハーフコートでジョシュを使ったり、ピック&ロールを使ったり。そのバランスは僕だけじゃなくてほかのガードも模索中です。難しい部分ではありますが、それも慣れではあると思います。もっと気持ち良くガード以外の選手がシュートを打てれば、それが入ってポゼッションも増やせます。アウトレットパスを出すとか、プッシュできるところはすることとかは常に意識しているので、もっとそれを増やせるように頑張りたいです」

変わってハーパーの課題は一貫性と自身の得点力。1Qの活躍はすばらしかった。特にオフェンスではハイペースにボールをフロントコートまで運び、ピック&ロールからビッグマンのチャンスを生み出すバウンズパスを数本出した。ハーパーが司令塔を務めた時間帯のゲームテンポは日本の目指すそれに近しいものだった。一方で2Qは出番がなく、後半はミスが目立ってしまったことで出場は6分42秒に留まった。「自分より海さんの方が安定していたのかなと思います。そこは自分にまだ足りないところだと思うので、しっかり切り替えて次に向けて頑張っていきたい」とハーパー。



手応えももちろんあった。「自分の(悪い)癖だったジャンプパスやチェストパスをしっかり改善できて、飛ばないで止まってしっかりパスを出すことやバウンズパスを使うとか、細かいところを意識することによって良いプレーが増えたのと思います。特に前半は自分が思うようなバスケができたと思います。シューターを生かす中で(山﨑)一渉が初っ端で自分のパスから3Pを決めたり、狩野がダイブしたときにインサイドにボールを入れることだったり、良いプレーはありました」

あとは、その質のまま限られた時間で再現性高くプレーすること、そして自身も点を取りに行くことだ。「自分がシュートにいかないと相手が寄ってこないので、ゲームコントロールもしないといけない中で(自分の得点を)見極めてやらないといけないのかなと思います」。文字にすれば簡単だが、実際にそれを遂行することは難しい。そこはテーブスの言う「経験」がより必要になるだろう。





SG登録の西田優大はPG陣の立ち回りについて、2年前のFIBAワールドカップで自身も3番手のPGを務めた経験からこう分析した。「今回のメンバーはナチュラルなPGというよりもハンドラー的な選手が多いと僕は考えていて、試合が慌ててしまったタイミングとかはどうしてもバタバタしてしまいます。1本を落ち着かせてピックを使ったり、そういうところはもっと出していってもいいのかなと思います。ワールドカップで僕自身もPGをしていて、本当に(周りのハンドラーに)助けてもらいました。その気持ちが分かるからこそ、今度は自分がもう少し助けてあげたいなと思っています」

河村勇輝や富樫勇樹のような絶対的なプレーメイカーがいない一方、サイズがあって器用な選手は多い。1人では難しくとも、彼らが数人でPGの役割をシェアし、運べる選手がよりハイペースにプッシュしていく──現ロスターがうまく機能するためには、ハンドラーたちの立ち回り方がより重要になってくる。

国内での強化試合は明日のデンマー戦ゲーム2が最後になる。ここまで試行錯誤してきたチームを試せる数少ない機会で、日本代表がどのような戦いを見せてくれるのか。PGの視点からも注目したい。







取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)

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