月刊バスケットボール10月号

大学

2025.07.11

日本経済大・学生コーチ松本樹奈の挑戦「外から鼓舞してチームに貢献したい」

全国の舞台で采配を任される


7月5日からスタートした「第3回全日本大学バスケットボール新人戦」。日本経済大学のベンチに立っていたのは、学生コーチの松本樹奈だった。現在2年生の彼女は、この全国大会で2試合、采配を振るった。

全国の舞台でチームを率いるのだから、緊張がなかったはずはない。それでも、松本は笑顔を交えてこう振り返る。
「自分もまだまだ経験がなくて。それでも、同じ学年だからこそ取れるコミュニケーションがあると思うんです。自分なりに考えてやってみて、本当にいい経験ができました」
指揮を執ることになったのは、案浦知仁監督が代表活動に帯同することが決まってから。松本は九州新人戦でも、試合の指揮を任される場面があり、準備を進めてきた。
「九州新人のときに『お前がやらないかん』って言われて。そのときから心構えはできていました」

松本のバスケ人生は、小学5年生で始まった。地元・紀北町(三重県)のミニバスチームで人数が足りず、同級生から「大会に出てほしい」と頼まれたのがきっかけだった。「それで大会に出てみたら、チームが強くて5年生と6年生で三重県代表として全国大会に出ることになって。これはもう“やるしかないな”ってなりました(笑)」と松本は振り返る。

そのままバスケットボールにのめり込み、中学・高校は四日市メリノール学院で過ごす。1、2年時は選手登録だったが、3年時のインターハイではアシスタントコーチとしてメンバー表に名を連ねた(弊誌メンバー表より)。

ちょうどその頃、松本の中で「選手ではなく、コーチとしてチームを支えたい」という思いが芽生えていたという。
「選手ではわからないことがあると気付いたんです。外から見て伝えることの大切さも感じましたし、元々コミュニケーションを取るのが好きだったので、自分がプレーするより、外から鼓舞してチームに貢献できたらいいなと思うようになりました」





学生コーチとして積み重ねる“伝える力”


そんな松本にとって、6年間の指導を受けた稲垣愛コーチの存在は大きな後押しとなった。
「稲垣先生から“ここまで頑張ったなら、学べる環境に行った方がいい”という言葉をいただき、メリノールの先輩もいましたし、自分の中では自然な流れで日経大を選びました」
そして学生コーチとして日本経済大に入学。日々、指導者としての経験を積み重ねている。

今大会で松本が指揮を執ったチームのキャプテンは、同級生の中老小雪だった。中老は「対等の立場で言ってくれるので、しっかり言葉が入ってくるんです。私たちが“こうした方がいい?”と聞いたときにも、的確に返してくれる。すごくやりやすいです」と松本の存在を語っている。

学生コーチという立場だからこそ、選手たちと近い距離で接することができる。松本にとっては強みでもあるが、年上の選手たちとの関係作りに悩む場面もあった。
「まだ2年生ということもあって、自分がどこまでやるべきかは悩みました。でも、先輩たちもコミュニケーションを取ってくれるし、自分の意見を言える場を作ってくれたりします。すごくやりやすい環境にしてもらっています」

そんな松本にとっての理想は、稲垣コーチなのかもしれない。「どんなときでも背中を押してくれるんです。稲垣先生の言葉は、選手が“よし、やるぞ”と思わせてくれる。すごく心強いんです」と、尊敬と感謝の気持ちをにじませた。

将来は体育教師を志す松本。教えることが好きで、見たこと感じたことを誰かに伝えることにやりがいを感じているという。
 「自分が見て感じたことを人に伝えるのが好きなんです。そういう意味でも、教師という仕事に憧れがありました。日本経済大学でさまざまな経験をする中で、自信が付いてきていますし、これからもバスケに関わっていけたらうれしいなと思っています」

同じ目線で、同じ熱量で――学生コーチという立場で仲間と向き合いながら、松本樹奈は少しずつ“伝える力”を深めている。まだ2年生であり、自身を磨く時間はこれからも続く。その一歩一歩が、指導者としての礎を築いていくだろう。







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