月刊バスケットボール10月号

21歳、それぞれの代表デビュー/湧川颯斗、テーブス流河[ 日本生命カップ2025 (東京大会) ]

テーブス流河は同じPGとして兄の海と交代する場面が多かった

7月5日、有明アリーナで開催された「日本生命カップ 2025 (東京大会) 男子日本代表国際試合」。日本代表はオランダと対戦し、序盤リードするも終盤失速して70-78で敗れた。

#4ジェイコブス晶や#7テーブス海の活躍もあり、1Q終了時点で23-16とリードした日本だったが、中盤からオランダの激しいディフェンスにターンオーバーが増加。特に5点リードで迎えた4Qで11-24と崩れ、逆転を許した。

代表経験の浅い若手主体のメンバーで構成され、合宿中から「波があった」(トム・ホーバスHC)という今回の代表チーム。この第1戦は、そうした不安定さが露呈する結果となった。ただ、ホーバスHCは「若い選手も多い中、すごく勉強になる試合だった」と前向きに評価。8月の「FIBAアジアカップ2025」に向け、収穫も得られたようだ。

同世代のライバルたちから刺激を得る湧川颯斗

この試合の収穫の一つとも言えるのは、同い年の21歳、湧川颯斗とテーブス流河がそろって代表デビューを果たしたことだろう。

同じ2004年5月生まれの2人。湧川はアンダーカテゴリーの代表経験はあるがA代表は初選出、流河にいたってはアンダーカテゴリーを含めても初の代表選出となった。幼少期から背中を追ってきた兄・テーブス海と、兄弟での代表入りを実現させた形だ。

まず1Q残り3分42秒、コートに立ったのが湧川だった。彼は福岡大附大濠高を卒業後、そのままBリーグの世界に飛び込み、現在は三遠でプレーするオールラウンダー。この日はコンボガードとして10分13秒の出場を得ると、バスケットカウント(ワンスローは失敗)で2得点、そして1アシストを記録。「手応えというのはあまりないですけど…。アテンプトが少ない中でも、自分の持ち味のドライブなどはできたかなと思います。次はもっとクリエイトしていきたい」と振り返った。

そんな湧川が現在、大いに刺激を受けているのが高校の後輩である#25川島悠翔と、アンダーカテゴリー代表でともにプレーした#4ジェイコブス。「昔から知っている2人と一緒に戦って、改めて『負けられないな』と。ライバルのような感じで見ています」と語り、今後に向けて「PGが苦しんだところで、もっと自分も助けながらクリエイトしてコントロールできたら良かった」と課題を見つめている。



テーブス流河、"兄とともに代表”の夢実現


もう一人、2Q開始と同時に出場してデビューを飾ったのがテーブス流河。僅か約2分後に、記念すべき代表初得点を挙げた。結局、9分9秒の出場時間で4得点3アシストを記録している。

報徳学園高2年時に米国へと渡り、昨年9月からは強豪カンファレンス(ACC)に所属するボストン・カレッジに進学。この1年で体重を12kg増やすなど肉体改造に取り組み、「オランダ選手とのフィジカルの差はそこまで感じませんでした」と語る一方、「正直、緊張があったかなと。プレスが来たときの対処法などは修正しないといけない」と冷静に分析した。

以前、「日本代表は小さい頃からずっとテレビで見ていて、将来ここでプレーしたいという気持ちをずっと持っています」と代表への思いを話していた流河。昨年、本誌に掲載した兄弟対談の際にも「兄と一緒に日本代表になりたい」と語っていたが、今回は「こんなに早くかなうとは思っていなかったので、本当にうれしい」と驚きを隠さなかった。

また、1万人超の観客の前でのプレーについて「声援がすごいなぁと。見守られているというか、温かい感じでした」と感慨深げに語り、「代表として大きな責任がある。自分もそういう責任感を持ちながら、日々の練習に取り組まなければ」と決意を新たにした。

ホーバスHCは流河について「練習中はすごくアグレッシブ。ペイントアタックできるし、シュートもきれい。でも今日はシュートを探してなかったし、リングをあまり見ていなかった。まぁ、デビュー戦で仕方ないとも思いますけど」と、期待しているからこそさらなる飛躍を求めている。

7月5日の今日、記念すべきデビューを迎えた二人。流河は「これからも、こういう高いレベルの舞台でどんどんやっていきたい」と意欲を示し、湧川も以前の取材で「まずは代表に入ることが目標ですが、その後は比江島慎さんのように代表で長く活躍することを最終的に目指したい」と語るなど、目標はさらに高いところにある。現状に満足していない彼らにとって、この日が今後のキャリアにおける大きなターニングポイントになる可能性は十分にありそうだ。




写真/石塚康隆 取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)


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