月刊バスケットボール10月号

女子日本代表がデンマークに快勝、3P成功率45.0%で“ジャパンバスケ”を体現[三井不動産カップ2025 (東京大会)]

前日の課題をクリア、3Pとトランジションで圧倒


前日は、ミスも多く戦いたい形がうまく現れなかった女子日本代表。7月4日、三井不動産カップ2025 (東京大会)が有明アリーナで開催され、デンマーク代表と再戦した。

今年度の女子日本代表はFIBA女子アジアカップ2025に向けて強化を進めている。FIBA女子アジアカップは2年おきに行われるアジア№1を決める大会で、今年は中国・深圳において7月13日~20日の日程で開催される。そして、来年行われるFIBA女子ワールドカップ2026の予選にもなっており、優勝すれば出場権を獲得できるほか、上位6チームが最終予選へとコマを進めることになる。女子日本代表は女子アジアカップにおいて、2013年大会(タイ・バンコク)から2021年大会(ヨルダン・アンマン)まで5連覇を達成。6連覇をかけて臨んだ前回の2023年大会(オーストラリア・シドニー)では、決勝で中国に敗れているだけに、2大会ぶりに女王の座を取り戻すための戦いとなる。

スターターは前日と同じ髙田真希、渡嘉敷来夢、馬瓜ステファニー、今野紀花、田中こころの5人。スタートから、絶え間なく足を動かしパスを回していくとまず髙田の3Pシュートで先制。デンマークもボールマンにプレッシャーを掛けると、ペイントアタックからチャンスを探る。それでも日本もギャップを作らせず。すると速い展開から3Pシュート攻勢を見せる。星杏璃に続いて宮澤夕貴、薮未奈海が決めると、ディフェンスを引きつけるべく渡嘉敷はゴールにアタックして得点に繋げる。なんと1Qは3Pシュート8/11(薮は3/3)とし、30-16とリードを奪って終えた。





デンマークは2Q立ち上がり、カミラ・クリスティアンセンの連続3Pシュートなどで得点。日本は8点差まで迫られた。しかし、ここで再び流れを引き寄せる。残り5分40秒、アルバルテ・リンダルのシュートを防ぐと薮がルーズボールをものにして赤木里帆へつなぐと。赤木は逆サイドを走る宮澤へパス。宮澤は左ウイングまで進むとシュートフェイクを入れて、リバウンドに絡んだあと走り込んできた渡嘉敷に合わせてバスケットカウント。3点プレーにすると流れを呼び込み、50-27として前半を終えた。



3Qは相手のフィールドゴールを2本に抑えて15-12。4Qでは馬瓜、栗林未和も存在感を見せて89-55で快勝した。日本は2Pシュート成功率48.3%(14/29)、3Pシュート成功率45.0%(18/40)と高い確率でシュートを成功。相手から22本のターンオーバーを奪い(日本は12)、リバウンドでは39-40と善戦。そして前日の12点を上回る14点を挙げた薮がMVPを受賞した。

この試合、日本は2P成功率48.3%(14/29)、3P成功率45.0%(18/40)を記録。3Pシュートではキャッチ&シュートによるアテンプトが目立ったが、その多くがオープンから放てたことが大きい。しかし、FIBAアジアカップ最大のライバルと目される中国は、2m級の選手がアウトサイドまでチェックに来られるだけの高さとリーチを備えており、同様のスペースを作るのは難しいと予想される。そうした中、3Qには田中こころが栗林のピックを使い、プルアップから3Pを放つ場面もあった。田中は「相手が大きくても、少し距離を取れば打てると思います。練習し、自信を持って打つだけです」と語り、中国戦に向けてこのスキルの重要性を示唆した。

指揮官のゲインズHCは、「“ジャパンバスケットボール”とは速いペース、3Pの多投、カオスの中での遂行力、そして“ヒットファースト”でのリバウンド」と定義。「今日はその遂行ができた試合。特に40本の3Pを打てたのは目標を達成した証拠。たとえシュートが入らなくても、このスタイルで戦えばどんな相手にも勝てると信じています」と強調した。

最大のライバルと目される中国についても、「サイズでのミスマッチはありますが、私たちはスピードで勝負します。相手を走らせ、混乱に巻き込むことが鍵となります」と語った。205cmのハン・シューや226cmのチャン・ツーユウ(18歳)といったサイズのある中国に対して、いかに自分たちのペースでプレーできるかが勝敗の分かれ目となる。





試合後、宮澤夕貴は「昨日の反省を今日に生かせたことは良かったですが、これがスタートラインです」と語り、渡嘉敷も「積極的に攻めるようにコーリーに言われ、自分の感覚を思い出すことができました」と振り返る。また今野紀花は「ペースの維持とディフェンスの修正が収穫でした」と語ると、田中は「自分がペースメーカーとしてアグレッシブに仕掛けることで、周囲のリズムも整うと感じます」と自己評価した。

アジアカップでは、前回決勝で敗れた中国との再戦が濃厚と見られている。サイズで劣る日本が勝つには、速さと遂行力を武器に"自分たちのバスケ"を貫けるかどうか。ゲインズHCは「このスタイルをやり抜けば、負けないチームになれる」と自信をのぞかせた。

なお登録12名は7月8日に発表。チームは同10日に中国に向けて飛び立つとしている。


1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
日本 30 20 15 24 89
デンマーク 16 11 12 16 55







■2025 年度バスケットボール女子日本代表チーム
FIBA女子アジアカップ 2025 日本代表候補選手
第4次強化合宿・三井不動産カップ 2025(東京大会) メンバー表

【スタッフ】
チームリーダー 小栗 弘(公益財団法人日本バスケットボール協会)
ヘッドコーチ コーリー・ゲインズ(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アシスタントコーチ 宮田 知己(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アナライジングコーチ 伊藤 恭子(デンソー アイリス)
通訳 下條 海(公益財団法人日本バスケットボール協会)
スポーツパフォーマンスコーチ 臼井 智洋(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー 荻野 まゆみ(公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレティックトレーナー 宮口 佳子 (S-Life はりきゅう院)
チームマネージャー 古海 五月(公益財団法人日本バスケットボール協会)
チームマネージャー 小松 佳緒里(ENEOSサンフラワーズ)
テクニカルスタッフ 有賀 早希(富士通 レッドウェーブ)

【選手】(15名)
髙田 真希(PF / 185cm /35歳 / デンソー アイリス)
渡嘉敷 来夢(C / 193cm / 34歳 / アイシン ウィングス)
宮澤 夕貴(PF / 183cm / 32歳 / 富士通 レッドウェーブ)
川井 麻衣(PG / 171cm / 29歳 / デンソー アイリス)
赤木 里帆(SG/PG / 167cm / 26歳 / 富士通 レッドウェーブ)
栗林 未和(C / 188cm / 26歳 / 東京羽田ヴィッキーズ)
馬瓜 ステファニー(SF / 182cm / 26歳 / CASADEMONT ZARAGOZA)
オコエ 桃仁花(PF / 183cm / 26歳 / ENEOSサンフラワーズ)
藤本 愛瑚(SG/SF / 179cm / 25歳 / ENEOSサンフラワーズ)
奥山 理々嘉(SF / 180cm / 25歳 / トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
今野 紀花(SG / 179cm / 25歳 / デンソー アイリス)
星 杏璃(SG / 171cm / 25歳 / ENEOSサンフラワーズ)
東藤 なな子(SG/PG / 175cm / 24歳 / トヨタ紡織サンシャインラビッツ)
薮 未奈海(SF/SG / 178cm / 20歳 /デンソー アイリス)
田中 こころ(PG / 172cm / 19歳 / ENEOSサンフラワーズ)
※年齢・所属は6月25日時点

【今後のスケジュール】
7月13日〜20日:FIBA女子アジアカップ2025(中国・深圳)
グループB:日本、オーストラリア、フィリピン、レバノン
グループA:中国、ニュージーランド、韓国、インドネシア
<試合予定>
7月13日 vs.レバノン
7月14日 vs.フィリピン
7月15日 vs.オーストラリア
7月18日 準決勝予選
7月19日 準決勝
7月20日 決勝・3位決定戦





文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)、写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)

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