女子日本代表・藤本愛瑚が刻む歩み「中国遠征で得た自信と覚悟」

「夢」から「目標」へ──代表入りが現実味を帯びた今
本日7月3日と明日4日で開催される三井不動産カップ 2025 (東京大会)、女子日本代表(FIBAランク9位)はデンマーク代表(同55位)と対戦。FIBA女子アジアカップ2025へ向け、チームとしての成熟を図っている。
6月の中国遠征は若手中心で実施。結果は2連敗であったが、コーリー・ゲインズHCは2m超のビッグマンを擁する中国との対戦を通して「フィジカルな戦い方」「高さへの対処」「新しいスタイルへの適応」など、多くの収穫があったと語っている。その2試合で存在感を発揮したのが藤本愛瑚(ENEOS)で、第1戦で10得点、第2戦でも8得点を記録。持ち前のシュート力を見せた。
「中国遠征では、自分よりもサイズもパワーもある相手に対して、シュートを打ち切ることの重要性を強く感じました。私は代表では“シューター”としての役割を求められていて、入る・入らないではなく、打ち続けることが大切だと捉えています。コーリーHCも『打たない方がリスペクトがない』と繰り返し言ってくれるので、今は迷いなく、自分のタイミングで打つことができています。以前よりも、シュートに対する気持ちの持ち方がポジティブに変化したと感じています」と藤本。

藤本は2023年11月に右膝前十字靭帯を断裂。本格復帰となった2024-25シーズンは、レギュラーシーズンで24試合に出場。5.71得点、2Pシュート成功率47.46%、3Pシュート成功率32.39%というアベレージを残した。
藤本は「まずは1シーズンをケガなく終えることが目標でした。これまで故障が多く、それを乗り越えるのも選手として大切な経験だと思っています。その上で、今季はより強い気持ちで得点を取りにいく姿勢を持てたのが、以前との違いです。また、年齢や経験を重ねる中で、自分自身が“引っ張る側”に回る時期に来たと感じています。後輩たちも増えてきた今、自分のプレーだけでなく、周囲を見ながらチーム全体を意識してプレーすることの重要性を強く感じるようになりました」と語るように、プレーに対する視野も一段と広がっている。
ENEOSとしては今回も招集されている星杏璃も、その年明けの2月に左膝前十字靭帯を断裂している。「アン(星)とは1つ違いですが、ENEOSで長く一緒にやってきた仲間として、普段からよく話しています。今はチームに長く在籍する選手も少なくなってきて、自分たちがもっと頑張らないといけない立場だと感じています。同じようにケガを経験したことにも何か意味があるのかなと思いながら、そこから成長していこうと2人で話してきました」とエピソードを紹介。「2人揃って日本代表として戦えるようになりたいですね」と笑顔を見せた。

そんな日々の積み重ねが、藤本の中で“代表”という夢を現実に変えつつある。「若い頃は漠然と“いつか日本代表になれたら”と思っていましたが、現実を知る中で、その道の厳しさも実感してきました。それでも7年経ってようやくチャンスをつかめる位置まで来たという手応えがあります。ここまで来たからには、アジアカップはもちろん、最終的にはオリンピック出場を目標にしています。年齢的にも良いタイミングなので、代表に残るために全力で挑みたいです」。
多くの方がご存知のとおり、藤本は父に元プロ野球選手の俊彦さん、母に元バレーボール代表の(旧姓・山内)美加さんと素晴らしい遺伝子を持つ選手だ(姉・愛妃は富士通所属)。特に母はバルセロナ大会、アトランタ大会と2度のオリンピック出場を経験している。そのことについて「ようやく自分自身が、日本代表という舞台に近づいたことで、母がいかにすごい選手だったのかを実感できるようになってきました」と切り出した藤本は「まだスタートラインに立ったばかりですが、ここからが本当の勝負だと思っています。年齢的にも経験を積んできた今、シーズンの流れや戦い方も見えてきました。ケガなくプレーを続けながら、さらに成長していかなければ上のレベルには届かない。だからこそ、これからは“自覚と責任”を持って取り組んでいきたいです」と決意を見せた。
一歩ずつ、確かな歩みで辿り着いた “スタートライン”。藤本愛瑚は、挑戦のフィールドに立っている。目指すのは、日本の代表として、世界を相手に戦うその先のステージだ。

Profile
藤本愛瑚(ENEOSサンフラワーズ)
Mako Fujimoto
SG/SF
1999年10月1日生まれ(現在25歳)/179cm・
徳島県出身
桜花学園高→ENEOS

文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)