月刊バスケットボール10月号

大学

2025.07.04

【WUBS2025】「言い訳をしない」韓国王者、高麗大の強さ


高麗大の得点源となっているフォワードのリ ドンジン(写真/©月刊バスケットボール)




開幕が約1ゕ月後に迫った第4回ワールド・ユニバーシティ・バスケットボール・シリーズ(World University Basketball Series=以下WUBS)に3年連続で韓国の王者として出場する高麗大。初めてWUBSの舞台を踏んだ一昨年の夏は、初戦でラドフォード大(アメリカ)に敗れたことが響き7位と望ましい結果を得られなかった。昨年大会は準優勝。デ・ラサール大との決勝戦は、最終盤の時間帯につきはなされたものの4Q半ばまで接戦を演じ、王座にあと一息という戦いぶりだった。

89日(土)~11日(祝・月)に国立代々木競技場第二体育館で開催されるWUBS2025では、もちろん王座を目指して来日するだろう。今年は高麗大のほかに、フィリピンからディフェンディング・チャンピオンのデ・ラサール大とフィリピン大、国立政治大(NCCU=チャイニーズ・タイペイ)と香港大(香港)の東アジア勢、そしてシドニー大(オーストラリア)と6チームがやってくる。そこにスプリングトーナメントを制した日体大と日本学生選抜の国内勢が加わる顔ぶれだが、すでに大会の雰囲気や会場にもなじんでいる上に対戦実績のあるチームも多いことから、これまで以上に勝算のある大会でもあるかもしれない。

強力フレッシュマン、ヤン ジョンユン

韓国の大学バスケットボールをつかさどるKUBF(韓国大学バスケットボール連盟)が主催するUリーグでは3連覇中であり、今年も630日時点で無傷の11連勝中で、延世大と並ぶ同率首位と強さを見せている。果たしてWUBS2025では、どんなバスケットボールを見せてくれるだろうか。

Uリーグ公式サイトで今季のチーム状況を追いかけると、平均80得点はリーグ全体の3位で、22.8アシストがリーグ1位(630日時点、以下同)。今季のチームはオフェンスでボールをチームでシェアしてバランスよく得点を分散させているところが一つの特徴と言えそうだ。10.1スティール(リーグ1位)、4.0ブロック(同3位)とディフェンス面のアグレッシブさも数字に表れている。3Pショットは成功数8.8本がリーグ2位、成功率34.0%も3位と効率よく決めている。また、毎試合ダンクが1.6本(同1位)と記されているが、これは2位の延世大の倍以上の数字。端的に特徴を捉えれば、「固く守って走る」「フィニッシュは力強くガツンと決めることができ、そうでなければロングレンジから効率よく決められる」といったところだろうか。

得点源になっているのは身長198cmのフォワード、リ ドンジン(이동근)だ。平均17.7得点はリーグ5位。3Pショットも毎試合1.6本成功させており、サイズ、運動能力、ショットメイクと様々な武器を生かしてコート上の脅威となっている。リはWUBS2024でも日本学生選抜を79-72で下した一戦で30得点、15リバウンドを記録する大活躍を披露していたので、覚えているファンも多いのではないだろうか。

また、WUBS2024の決勝で30得点、5リバウンド、4アシスト、2スティールを記録し、大会全体のベストディフェンダー賞にも選出された司令塔ムン ヨヒョン(문유현)が、現在故障で離脱しているのは非常に残念だが、エースガード不在の穴を埋めるフレッシュマンが登場している。今年チームに加わったばかりのヤン ジョンユン(양종윤)という若者だ。


FIBA U18アジアカップ2024でのヤン ジュヨン(写真/©FIBA_U18AsiaCup2024)

ヤンは昨年のFIBA 18アジアカップ2024の韓国代表に名を連ねた身長192cmのビッグガードで、同大会では6試合中4試合で2桁得点を記録するなど平均8.7得点、3.7リバウンド、3.0アシストのアベレージを残した。Uリーグでのスタッツはよりインパクトが大きく、出場時間は1年生ながら平均37分超え。全11試合に出場しての12.9得点は前述のリに次ぐチーム2位で、これはリーグ20位という数字。3P成功数21本もリーグ9位で、平均1.9本はリを上回っている。コーチ陣の期待と信頼に力強いパフォーマンスで答えていると言えるだろう。

貫かれる「勝者のメンタリティー」

高麗大は彼らのほかにも、5月に韓国で開催された第48回李相佰盃⽇・韓⼤学代表バスケットボール競技⼤会の韓国代表に名を連ねたフォワードコンビのユ ミンスー(유민수)とユン キチャン(윤기찬)ら、有能なタレントがそろっている。身長200cmのユと194cmのユンの、今季Uリーグでのアベレージはそれぞれ平均8.6得点、7.3得点と、ローテーションの中でオフェンスのバランスを実現させる貴重な戦力だ。両者とも昨年のWUBS2024でも活躍した。


高さも運動の力も魅力のユ ミンスー(写真/©月刊バスケットボール)





さて、高麗大には個々のタレントとは別にもう一つ、強さを感じさせる要素がある。試合に向かう姿勢だ。

昨年の大会期間中、チュ ヒジョン(주희정)HCと話した際にレフェリーのコールに関する違和感が話題になったことがあった。要は普段韓国でプレーするときとはファウルやバイオレーションの取られ方が違ったということだ。国際大会では少なからず起こりうることだろう。「実は一昨年大会の時点からその違和感を持っていたんですよ。でもあえて口外しないでいました」とチュHCは話した。感情的になって話したわけではなく、自身の感覚を素直に吐露したチュHCだったが、こんなことも付け加えていた。


チュ ヒジョンHC(写真/©月刊バスケットボール)

「負けているチームがそんなことを言っても、誰が聞いてくれるでしょうか。私は言い訳をしたくなかったんです」

WUBS20237位という結果に終わったのはコールの違和感が理由ではなく、敗因はあくまでも自分たちのバスケットボールにある——チュHCからチームに対するこのメッセージを受け、選手たちは翌年のWUBS2024で準優勝という結果をつかむことにより、チュHCの姿勢が正しかったことを一定以上のレベルで証明して見せた。優勝できなかったので完ぺきではなかったかもしれないが、シドニー大をオーバータイムの末に下した準決勝、サイズとフィジカルさでは上回ると思われたデ・ラサール大を最後まで苦しめた決勝を含め、高麗大の戦いぶりは、チュHCの勝者のメンタリティーが選手たち一人一人に深く浸透していることを感じさせるものだった。

「韓国で3連覇しているチームが準優勝で満足してなるものか」——WUBS2025にそんな闘志とともにやってくる高麗大。日本勢を含め、今大会で対戦相手となるチームは心してかかる必要がありそうだ。





文/柴田健

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