月刊バスケットボール10月号

大学

2025.06.20

【WUBS2025】初出場を果たすUAAP王者フィリピン大――カール・タマヨ、コービー・パラスらの母校



今年で第4回を迎える大学バスケットボールの夏の祭典、ワールド・ユニバーシティ・バスケットボール・シリーズ(World University Basketball Series=以下WUBS)の注目事項の一つに、初出場を飾るフィリピン大の存在がある。

89日(土)~11日(祝・月)に国立代々木競技場第二体育館で開催されるこの大会では、フィリピンからこのフィリピン大とWUBS2024の王者デ・ラサール大の2チームが来日するが、海外の同一国から2チームが参加するのは初めてのこと。伝統的なライバル関係にあるフィリピン大とデ・ラサール大は、昨年末のUAAPUniversity Athletic Association of the Philippines=フィリピンの大学スポーツを統括する2大団体の1つ)ファイナルで対戦しており、そこではフィリピン大が3試合のシリーズを21敗で制して王座に就いた。そうした背景を持つ両チームの来日が実現したことから、WUBS2025には在日フィリピン共和国大使館の後援も決まっている。

WUBS2025の出場チームは、フィリピン大とデ・ラサール大のほかに昨年大会準優勝の高麗大(韓国)、3位の国立政治大(チャイニーズ・タイペイ、以下NCCU)、4位のシドニー大(オーストラリア)と実績あるチームに加え、日本からスプリングトーナメントを制した日体大と日本学生選抜、そして東アジア勢としては唯一初出場を果たす香港大(香港)という顔ぶれ。この中でフィリピン大は、初陣ながら上位進出が期待される強豪ととらえるべきチームだ。

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再生期に苦しみながら成長するフィリピン大

フィリピン大は、直近4年間連続でUAAPファイナルに進出し、2021-22シーズンと2024-25シーズンに王座を獲得している。通算優勝回数では4度と多くはないものの、近年フィリピンの大学バスケットボール界の興隆をけん引する存在の一つと言って間違いない。

今季はやや不安定な戦いぶりで、プレシーズントーナメント(Filoil EcoOil Preseason Cup)では、開幕からの2試合で順調に勝利をつかんだが、デ・ラサール大との3戦目に99-106で敗れると、続く4戦目でもサント・トマス大に81-90で連敗を喫してしまった。612日に同大会5戦目のファー・イースタン大との一戦に75-65で勝って白星を先行させることはできたが、国内のスポーツメディアでは、この秋開幕するUAAPシーズン88でフィリピン大がデ・ラサール大と王座を競えるかどうかに疑問符をつけるような評価も出ている。

ただ、そうした流れの背景には、昨季の主力がチームを離れた後のチーム再生過程に主力の故障が重なった上、いくつかの異なる大会への参加による日程的な管理に苦労していることがある。実際フィリピン大は、今春から参戦してすでに開幕している大会の一つ(PinoyLiga Collegiate Cup Season 4)からの撤退を発表しており、チーム作りのプランを改善しようと取り組んでいることがうかがえる。また、6月半ばからはセルビアへの強化遠征も行っており、このままでは終わらないと思ってよさそうだ。

戦力的には、昨年のメンバーから司令塔のJDカグランガン、フォワードのフランシス・ロペス、センターのクエンティン・ミヨラ=ブラウンの主軸3人が抜けたことが大きく影響している。カグランガンは昨年末のUAAPファイナルMVPで、2024-25シーズンには韓国KBLの水原KTソニックブームの一員としてリーグの新人王に輝いた。ロペスは2025-26シーズンからファイティングイーグルス名古屋に加わる運動能力の高いウイングで、同ファイナルゲーム3の終盤に王座を引き寄せる3Pショットを成功させたヒーロー。ミヨラ=ブラウンはフィリピン系アメリカ人で、NCAAディビジョンIの大学で実績を残してから最終学年の1年間だけフィリピン大に加わり、同ゲーム3でロペスに続いて勝負を決めるフリースロー2本を沈め王座獲得に大きく貢献した。それぞれがチーム史に名を残す足跡を残した昨季の「ビッグスリー」が抜けた後、フィリピン大は再生を迫られながらチーム力を維持しようと腐心している状況だ。

現在のエースはガードのハロルド・アラルコン。身長188cmのビッグガードで、2023年のプレシーズントーナメントのMVPに選出されている。昨季も上記のビッグスリーとともに、いつでもゲームを支配できるスコアラーとしてコート上の脅威となっていた。現在進行中のプレシーズントーナメントでは、連敗を喫した4戦目に相手プレーヤーとのトラブルから1試合の出場停止を食らった。ただしチームはこのアラルコンが不在だった5戦目で、レイランド・トーレス(12得点、5リバウンド)とジェイコブ・バイラ(7得点、4リバウンド、3アシスト、2スティール)のバックコート・デュオが奮起し、前述のとおり勝利を手にしている。ある意味ではチームの底力が発揮された勝利を経て、アラルコンとチームの本領発揮はこれから。WUBS2025がその試金石になりそうだ。

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実は日本とのなじみが非常に深いフィリピン大

フィリピン大はフィリピンの国立大学で、同国全土に21ものキャンパスを有している規模としても教育レベルとしても国内トップレベルの同大で、バスケットボールチームはマニラ近郊にあるディリマン校を活動拠点としている。ニックネームのファイティング・マルーンズ(Fighting Maroons)はチームカラーである栗色(Maroon)に由来しており、和訳としては「栗色の闘士たち」といったところか。

日本とはあまりなじみがないように思われるファンも多いかもしれないが、過去に在籍した選手には、Bリーグファンの記憶に残るスターが名を連ねている。

その一人は、フィリピン代表としてFIBAアジアカップ2025予選でも活躍していたカール・タマヨがいる。タマヨは2022-23シーズンと良く2023-24シーズンに琉球ゴールデンキングスでプレーし、2024-25シーズンは韓国KBLの昌原LGセイカーズでベスト5を受賞する活躍を見せていた。2021-22シーズンに新潟アルビレックスBB、翌2022-23シーズンにアルティーリ千葉でプレーしたコービー・パラスも、かつてはファイティングマルーンズのユニフォームを着ていた。


新潟時代のコービー・パラス(©B.LEAGUE)





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東アジアのプロリーグで活躍するタレントがフィリピン大から継続して誕生している経過を見れば、現在のロスターからロペス以外にもBリーグ入りするタレントが出てくる可能性も低くなさそうだ。WUBS2025でその可能性を探るのも面白い見方ではないだろうか。





文/柴田健

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