“七色の戦い方”で世界選手権連覇に挑む|男子車いすバスケU23日本代表が壮行会開催
男子U23日本代表、世界選手権へ出陣
6月12日から20日にかけて、ブラジル・サンパウロで開催される「2025 IWBF 男子U23車いすバスケットボール世界選手権大会」に出場する男子U23日本代表。その壮行会が6月4日、千葉ポートアリーナで行われた。会ではファンや関係者を前に代表選手たちが紅白戦でプレーを披露し、各自が意気込みを語った。
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イベント後にはゲームキャプテンの谷口拓磨選手と中井健豪ヘッドコーチが囲み取材に対応。谷口選手は「年の差があるチームではありますが、しっかり腹を割って話せるようになってきました。チームの連携の質がすごく良くなっていると思います」と手応えを語り、これまでの合宿を通して築いてきた信頼関係と、自主的な修正力が、チームの成熟を後押ししていると明かした。
グループBに入った日本は、初戦でイギリスと対戦。開会式を挟んでタイ、アメリカ、南アフリカ、イタリアと予選ラウンド4連戦を戦い、決勝トーナメント進出を狙う。「アメリカに勝ち切るというのが一つの目標です。アメリカの選手の動きを研究し、何をすべきかを、合宿の中で細かく擦り合わせてきました」と谷口選手は語る。

ゲームキャプテンの谷口拓磨選手
一方、中井HCも「選手たちは、地元に戻ってからも課題を落とさずに、共通理解を持って合宿に臨んでくれました。合宿初日から非常に良い入りができています」と手応えを口にする。今回の合宿では、想定ユニットのケミストリー構築とアメリカ戦への戦術落とし込みを主な目的に掲げており、「明日以降の練習試合でその手応えをしっかりつかみたいと考えています」と語った。
中井HCはまた、「まずは4強入りをしっかりと目指していきたいです。局面での勝負になると思うので、自分たちが勝てるポイントを明確にして、そこを押し切れるように準備しています」と語る。加えて、「私たちは良い意味で特化していないチームです。オフェンスにしろディフェンスにしろ、いくつものパターンを持ちながら、相手が出してきた手にしっかり応えていける構成になっています」と、多彩な戦術に対応できる柔軟性を強調。日本代表は“七色の戦い方”を武器に、どんな相手にも臨機応変に挑めるチームへと仕上がりつつある。
またディフェンス、オフェンスでのスペーシングも、今大会のポイントとなる。中井HCは「前回大会とは異なり、今回は5人で前から当たりに行くよりも、2人〜3人で相手の攻撃をハーフコートに落とし込むディフェンスを想定しています。リバウンドを拾って次のオフェンスに繋げることが狙いです」と戦術の方向性を説明。また「障がいの重いローポインターでもスリーやミドルが打てる選手がいるため、チーム全体でスペースを広げてオフェンスをデザインできるのが強みです」とアピールした。

多彩な戦術に対応できる柔軟性を強調した中井健豪ヘッドコーチ
昨年11月に行われたアジアオセアニア予選では、2度にわたってオーストラリアに敗れて準優勝に終わった日本。「あの2敗はすごく悔しい経験で、今でも頭に残っています。その経験をふまえて個々がトレーニングを積んできましたし、チームの結束力も上がっていると思います。もし再戦があれば、しっかりリベンジして勝ち切りたいです」と谷口選手は闘志を燃やしている。
最大6連戦となるタフなスケジュールだが、「12人の一体感が勝ち抜くための鍵です」と語る中井HCは「彼らのバスケット人生はこれからも続いていきます。この大会を“やっていてよかった”と思える経験にしてあげたいと思います」と語る。今大会は集大成でありながら次のステージへの通過点でもあるわけだ。
まずは4強入りを目標にし、頂点を目指す。2022年大会での初優勝を経て、連覇がかかる今大会。男子U23日本代表は、世界の舞台でもう一度頂点を目指す。

紅白戦では強度の高い攻防を繰り広げた
■男子U23日本代表選手(12名)
No./名前/持点/年齢/所属チーム・ブロック/所属
#0/中澤 煌河/3.5/16/ハダーズ函館元町ライオンズ車いすバスケットボールクラブ/北海道/函館大付有斗高
#1/小山 大斗/3.5/20/富山県車椅子バスケットボールクラブ/東海・北陸/(株)オー・エル・エム・デジタル
#3/望月 悠生/2.5/22/埼玉ライオンズ/関東/青山学院大
#14/谷口 拓磨/2.0/20/薩摩ぼっけもん/九州/鹿児島国際大
#15/中村 凌/1.5/17/富山県車椅子バスケットボールクラブ/東海・北陸/大門高
#20/渡辺 将斗/4.0/21/神奈川 VANGUARDS/関東/桐蔭横浜大学
#23/岩田 晋作/4.5/20/富山県車椅子バスケットボールクラブ"/東海・北陸/あいおいニッセイ同和損害保険(株)
#37/足達 飛馬/1.5/21/大分コウセイ WBC/九州/豊後大野市役所
#38/森岡 煌陽/2.0/14/広島 Rise/中国/三原五中
#70/久我 太一/1.5/16/埼玉ライオンズ/関東/足立高
#77/岡田 壮矢/3.5/18/奈良 DEER/近畿/阪南大
#89/有吉 奏太/2.5/17/宮城 MAX/東北/仙台三桜高
■男子U23日本代表選手スタッフ(5名)
名前/役職
中井 健豪/ヘッドコーチ
土子 大輔/アシスタントコーチ
小森 峻/トレーナー
齊藤 匠/トレーナー
横瀬 英里子/コーディネーター
■大会名
日本語 2025 IWBF 男子U23車いすバスケットボール世界選手権大会
英語 2025 IWBF MEN’S U23 WORLD CHAMPIONSHIP
■日程
2025年6月12日(木)~20日(金)
■大会会場
会場名:Centro de Treinamento Paralímpico Brasileiro
住所:Rod. dos Imigrantes, km 11,5 - Vila Guarani, São Paulo - SP, 04329-100, Brasile
■出場資格
2003年1月1日以降に生まれたIWBFに登録している男子選手
■出場国(ゾーン別)
ヨーロッパ(5) ドイツ、イギリス、トルコ、イスラエル、イタリア
アジアオセアニア(3) オーストラリア、日本、タイ
アフリカ(1) 南アフリカ
アメリカ(3) アメリカ、カナダ、ブラジル(開催国枠)
■配信
全試合IWBF公式YouTubeチャンネルにて配信 https://www.youtube.com/@iwbforg
■競技スケジュール(日本戦のみ)
グループA オーストラリア、カナダ、イスラエル、ドイツ、トルコ、ブラジル
グループB 日本、アメリカ、タイ、イギリス、イタリア、南アフリカ
6月12日(木)23:15〜 対イギリス
6月13日(金)4:30〜 開会式
6月14日(土)3:45 対タイ
6月15日(日)3:45 対アメリカ
6月16日(月)3:45 対南アフリカ共和国
6月17日(火)22:00 対イタリア
6月18日(水) 準々決勝
6月19日(木) 準決勝
6月20日(金) 5-7位決定戦、3-4位決定戦、決勝、閉会式
※すべて日本時間表記
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文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)