【インタビュー】横浜ビー・コルセアーズの象徴・森井健太「このスタイルでどこまで上にいけるのかはチャレンジしがいのあること」

横浜ビー・コルセアーズの2024-25シーズンは、24勝36敗の中地区7位という成績で幕を閉じた。昨季から大きくロスターチェンジし、コーチ陣も一新。まさにイチからのチーム作りとなった中で、その手綱を握ったのが司令塔の森井健太だ。堅実なゲームメイクとディフェンスを売りとする森井だが、今季はまるで昨季まで在籍した河村勇輝のような派手なパスも見せるなど、大きくプレースタイルを変化させた。その真意や新体制1年目のチームについて、さらにはプロ入り前の話をたっぷりと語ってもらった。 ※4月25日取材
こちらのインタビューは『月刊バスケットボール2025年7月号』掲載の冒頭です。全文は誌面にてご覧ください。

──今季はコーチ陣も変わり、チームとしても河村勇輝選手の退団や外国籍選手の総入れ替えなど、大きな変化の中でシーズンを戦いました。どんな心境でシーズンを迎えましたか?
僕はビーコルに来て5年目ですが、これまでラッシ(ラッシ・トゥオビHC)を含めて3人のヘッドコーチの下でプレーしてきました。今季は勇輝のNBA挑戦もそうですし、アジア枠も含めて外国籍の選手は全員が変わりました。日本人選手はあまり変わっていませんが、これだけ主力が一気に変わるのは珍しいケースだと思います。
そんな変化の中でオンコートの役割も変わりました。やっぱりコーチが変わるといろいろな部分が変化するので、どうなるか分からない不安はもちろんあったんです。シーズン前は本当の意味でイチからチームを作る難しさはあるだろうと感じていたのを覚えています。一方で、ヨーロッパのコーチになるということで、どんなバスケをやるのかという期待もすごくあって、楽しみでもありましたね。
──昨季の外国籍選手は全員がアメリカ出身でしたが、今季はマイク・コッツァー選手がエストニア、ダミアン・イングリス選手がフランス、アジア特別枠のキーファー・ラベナ選手がフィリピンと、多国籍でした。コミュニケーション方法も変わったのでは?
昨季までうちにいた外国籍選手はどちらかというとワイワイ盛り上がるのが好きなタイプだったんですけど、今季のメンバーは黙々と自分のやるべきことをやるタイプ。過去に在籍していたパトリック・アウダ(チェコ共和国出身)はそういう選手だったので、どちらかというとパトリックに近いイメージかなと思います。オンコートではチームファーストでとても頼もしいですが、オフコートでは物静かなので、接し方は変わったと思います。
──打ち解けるのに時間がかかったり?
うーん、そういうわけでもなくて。彼らはプレー中にすごくたくさんコミュニケーションを取ってくれますし、スマートなんです。本当にバスケのことをよく分かっていて、すごくやりやすいですね。オフコートで一緒に遊びに行くとか、ご飯に行くとか、そういう感じはあまりないのですが、ただ、マイクとはちょうど昨日(取材日前日)、一緒にみなとみらいの方まで犬の散歩をしに行ったんです。彼とは話の間合いとかが合うんですよね。
ダミアンは最初、一匹おおかみみたいなところがあったんですけど、時間がたつにつれてジョークも言うようになったり、今ではいろいろな選手と楽しそうに話しています。人間関係の部分でも、シーズンが進むにつれて良いチームになってきたなと感じましたし、並行して、特に後半戦は良い結果が出せていた時期もありました。コミュニケーションは良い形でできているんじゃないかと思います。
──まさに1シーズンをかけてお互いを理解し合ったという感じですね。
そうですね。彼らはもともとユーロリーグやNBAでやっていたような選手なので、まずはBリーグのスケジュールに慣れなければなりませんでした。文化も環境も全く違うので、そこにアジャストする時間はかかったイメージでしたし、ケガもありましたから。
──森井選手個人としては、昨季までの堅実なプレースタイルから、今季は派手なノールックパスを繰り出すようなシーンも増えましたよね。
そうですね。実はもともとはそういうパスは結構好きだったんです。ただ、昨季までは勇輝のバックアップとして出る機会が多かったので、彼との違いを見せなきゃいけないと思っていました。ディフェンスで流れを変えて、オフェンスではなるべくターンオーバーをせずに相手の弱みを突くようなプレーを心掛けていて、(青木)勇人さんも僕にそういうプレーを求めていたと思います。チーム状況に合わせたプレーを意識していた感覚でした。
一方で、勇輝がいなくなった今季はより自分できっかけ作りをしなければならない場面が増えました。今までなら自分がアタックしなくてもいい場面でも、アタックしてズレを作って味方にパスをさばくとか。そういう機会が必然的に増えると思っていましたし、だからこそ、見ている方からしたら、派手なプレーもするようになったと映っているんだと思います。
──プレーの変化にはトゥオビHCの戦術も影響していますか?
そうですね。ラッシのバスケはカッティングなどでボールと人を動かすスタイルです。チームスタイルと自分の好きなスタイルがマッチしているのを感じていて、今の僕のプレーは本来の持ち味を出しているものであり、チームに必要なものでもあります。
もちろん、昨季までも今のようなプレーをやってはいけないわけではなかったですが、それよりも堅実にと意識していました。今出しているようなパスをする、しないの線引きは今季の方が明確になっているのかもしれませんし、周りの選手のカッティングが増えたことで、そういうパスを出しやすくもなっていると思います。
──特に日本人選手のカッティングは今季、かなり精度が上がった印象ですが、それはトゥオビHCの指導によるものなのでしょうか?
もともとこのチームにはズレを作ってもらってそこに合わせるのがうまい選手が多いです。例えば松崎裕樹やキング開は自分でハンドラーとなってピックを使うよりも相手の隙を突いてバックカットしたり、速攻でのランニングプレーをしたりするのが得意な選手です。そういう個々の良さが今のチームスタイルにフィットした部分は前提としてあると思います。加えて、ラッシがボールムーブのところを徹底的に指導してくれたおかげで、自然と相手の反応を見るようになって、例えばディフェンスが前に詰めて来たからバックカット、下がっているからフロントカットといったプレーを選択できるようになりました。選手の能力に戦術が上乗せされた感覚です。
──カッティング主体のスタイルは、森井選手の母校でもある洛南高のパス&ランのスタイルも近いですね。
そうですね。やっていて自然と体が反応できたのは、高校でパス&ランのスタイルをたたき込まれたことが関係していると思います。最初の段階から「こういうことがやりたいんだろうな」と理解できていたので、フィットする苦労はそんなになかったです。コーチが変わると戦術も起用法も変わるので選手としては不安な部分もあるのですが、僕は落とし込むのが早かったんじゃないかと思います。
もちろん、試合になるとより臨機応変さを求められますが、それも勉強だと思っています。いろいろなスタイルのチームがある中で、「ビーコルのスタイルはこれだ」というのがかなり際立ってきたんじゃないかと思います。そこを楽しみながら、このスタイルでどこまで上にいけるのかはチャレンジしがいのあることです。
続くインタビュー内容は…
【多くの縁がつなげたバスケ人生】
【三遠・大野篤史HCとの縁】
続きは『月刊バスケットボール2025年7月号』をご覧ください。

写真/石塚康隆、編集部 文/堀内涼(月刊バスケットボール)