月刊バスケットボール10月号

大学

2025.04.24

日体大・宮城楽子&筑波大・朝比奈あずさの挑戦“新主将が描くチーム像” [第60回日筑定期戦]

宮城不在のなか日体大奮闘
朝比奈のブロックで筑波大が勝利つかむ


4月20日に毎年恒例の第60回日筑定期戦が開催。女子、男子のジュニア戦のあとに行われた女子本戦は熱戦になった。

1Q15-15というスタートになった試合は、ハーフタイムで日本体育大(以下日体大)が32-28とわずかにリード。3Q、筑波大は2年生・角陽菜多が3Pシュートに続いてポストプレーから得点。同じく2年生の岡崎真依が速い展開からレイアップ、4年生の上野心音、キャプテンである朝比奈あずさの追加点で40-32とリードを作った。エースでキャプテンである宮城楽子をケガで欠く日体大だが、ここから巻き返し。同じ4年生の永田姫舞がスティールから速攻を決めると、奥原心希の3Pシュートなどで2点差まで迫って3Qを終えた。

4Q、先に日体大がリードを広げにかかるが、筑波は上野が果敢なドライブから得点につなげてそれを許さず。筑波の60-58で残り1分を切る。日体大はマカヌアンバ ロリアンのフリースローで59-60とすると、残り11.7秒でポゼッションを得た。ここで選んだのは高さのあるロリアンに入れての逆転シュート。残り6秒、篠崎真緒からボールを受けたロリアンはターンしてシュートを放とうとしたが、筑波大・朝比奈は背後から腕を目一杯伸ばしてブロック。そのボールを奪って勝負あり。60-59、劇的展開で筑波大が勝利した。

春のトーナメントを前に行われた真剣勝負の舞台は、両チームにとって実りある時間となったはずだ。その試合後、日体大・宮城と筑波大・朝比奈に、自チームや相手チームへの思い、スローガンへの考えなどを語ってもらった。

【写真】第60回日筑定期戦女子本戦写真ギャラリー(21点)




日体大キャプテン
宮城楽子インタビュー

■4年/168cm/大阪薫英女学院高出身

“チャレンジャー”として前へ、主将の覚悟と想い


Q. 60回という節目を迎えた定期戦の重みというのはどんなものですか。また惜敗となりましたが、自分たちの戦いぶりをどのように見ていましたか?

新チームになってから、練習試合などでたくさん経験積んできたのと、春のスプリングキャンプを通して個々が成長したなというのが見られた試合になったと思います。(定期戦について)自分として4年目という意味はあまり考えたことないのですが、60年という長い歴史がある大会ですから、自分たちの代でもしっかり作り上げることと勝ちたいなという思いはありました。

Q.スプリングトーナメント前に、真剣勝負ができる場というのは大きいですよね。

春のトーナメントで強豪と当たる上で、シーズンの最初の段階で筑波さんとできる機会というのは、とてもありがたいものです。朝比奈(あずさ)さんという日本代表も経験されている選手もいるからこそ、自分たちもしっかりやらなければ、という気持ちになります。筑波さんは、日本人選手だけで戦っているチームですが、個々の強さという特徴があるので、それを経験できるのは大きいと感じます。

Q.宮城さんのケガは、どんな状況でしょうか?

3月下旬にアキレス腱を切ってしまい、復帰まで5か月かそれ以上の可能性もあるので、復帰の目処が立っていません。リーグ戦に間に合ったらいいなというところです。

Q.少なくともリーグ戦までは宮城さんが出られないという中で、今年度のチームの強みはどんなところになりますか?

まず留学生の(マカヌアンバ)ロリアン(3年生/190cm)のリング下での得点は一つです。1年生から試合に出ているということもあって経験値も高いですし。あと奥原(心希/3年/170cm)がシューターの役割を発揮できるようになってきていますので、その2人が日体の強みになると思います。



Q.対戦した筑波大は昨季から4アウト、5アウトといったフォーメーションを取り入れています。今日の試合で変化を感じましたか?

そうですね。得点の幅が広がったなという印象はありますね。外もですけど、全員が中に得点を狙いに来ていたので、そこは筑波さんの強みだなと感じていました。

Q.先ほど朝比奈さんの名前が挙がりました。聞いてみたいことはありますか?

どんなシュート練習をしているのか聞いてみたいです(笑) あれだけの身長がある3Pシュートもそうですし、フリーのシュートも確実に決める力というのは、朝比奈さんの特徴だと思うし、そこがすごいなと尊敬しています。シューティングとかで、どんな工夫をしているのかは聞いてみたいです。

Q.では、後ほど聞いてみます。話は変わって、キャプテンとなったのはどんな経緯ですか。2年間キャプテンを務めていた矢野(里美/ミツウロコ)さんにアドバイスなどもらったでしょうか?

実はキャプテンが決まったのが、矢野さんが卒業してからになったこともあって、色々伺ってといったことはできませんでした。自分としては、矢野さんとはまた違ったキャプテン像になるのかなと思っていることもあって、自分なりに工夫してやっていこうと思っています。

Q.イメージするキャプテン像とはどんなものですか?

参考にしているのは、高校時代(大阪薫英女学院)の先輩にあたる北川聖(新潟アルビレックスBBラビッツ)さんです。北川さんの話を安藤(香織/大阪薫英女学院高)コーチからよく伺っていて、尊敬しているので、北川さんをイメージしています。安藤先生からもリーダー論とかを教えていただいているので、照らし合わせながら、自分なりにちょっと工夫して頑張っているという感じです。

Q.まずはやってみようという段階ですね。

そうですね。自分は元々引っ張るというよりも、まずは自分のことをやるというタイプだったので難しいなというのはあります(笑) 引っ張るということをしてこなかったからこそ、どう伝えていいのかというのが分からないんです。関西弁も結構出ちゃって結構きついと言われたりも。言葉遣いや表現にも注意しながら話すというのは大変です。でも、先頭に立つ分、そこは重要だと思うので、苦戦はしていますが、頑張りたいと思っています。

Q.自分がプレーできないというのも、歯がゆいところだと思います。宮城さんが出られない中で、チームはどんな変化を遂げようとしていますか?

今は確実なスコアラーがいないので、全員が得点を取るという意識を持ったチーム作りになると思います。もちろんディフェンスもオフェンスにつながる部分ですので、そこを取り組んでいるところですね。

Q.昨季も、チームとしてリバウンドとディフェンスに注力していましたね。ディフェンスで鍵を握ると思う部分はありますか?

ディフェンスヘッジ(ボールマンがドライブを仕掛けようとしている際に、相手の進路を阻むディフェンスの戦術)することを意識してやっています。1対1で守るのはベースですが、ヘッジだったり、3線カバーなどをキーワードにしています。それと、今回もボックスアウトが緩くなっていた部分があると思うので、もっとしっかりやらないとですね。特に身長が高い筑波さんのようなチームだと、簡単にボールは奪えませんので。そこもトーナメントまでに精度を高めたいと思っています。

Q.少なくとも秋まではプレーができないという中で、キャプテンとしてどんなサポートをしていきたいですか。

一つはコートの外からの声を大事にしたいですね。自分はチームの中で一番経験させてもらっているし、それを伝えることができるのは自分自身しかいないと思っています。そういう声かけやアドバイスを伝えて後輩とかをサポートできたらと思います。

Q.「一番経験させてもらっている」という言葉がありましたが、この3年間の大学バスケで得られたものというのはどんなところだと思いますか?

成長した部分で言うと得点能力は上がったと思います。高校時代はやっぱ下級生にうまい子がいたので任せがちになっていましたが、大学では自分が任せてもらえる立場になったので、得点意識が芽生えました。その中でスキルを向上したり、3Pシュートの向上というのは意識していたので、そこは自分としても成長できた部分だと思います。

Q.その先ということでは、Wリーグでのプレーというものもありますか?

そうですね、Wリーグはもう大学に入学する前からの目標でもあります。このケガもあるのでどうなるか、ちょっと分からないところもありますが、自分としてはすごく行きたいという気持ちはあります。

Q.最後に今季のスローガン、目標を教えて下さい。

スローガンは「チャレンジャー」です。自分たちは決して強いチームではない。だからこそ困難があった時に前向きに、そう落ち込むんじゃなくて、どんどんチャレンジし続けていけば、やっぱ勝ちにも繋がるということを考えています。前向きに挑戦し続けられるチームになりたいと思います。




筑波大キャプテン
朝比奈あずさインタビュー

■4年/185cm/桜花学園高出身

目指すは“常に成長し、輝くチーム” 


Q.定期戦勝利おめでとうございます。

ありがとうございます。自分たちは日筑戦で勝ったことがなかったので良かったです。あと今シーズン初の大会で、やってきたことがどう出るかというのもあったのですが、接戦を勝ちきれたのはチームにとって大きいなと思います。リバウンドのところとか、結構課題も残りましたが。

Q.今回で60回目の定期戦、選手としてはどんな重みがありますか?

やはり60回目とすごく歴史のある大会ですし、互いのプライドもあります。いいライバルというのか、リーグで会った時はお互いに頑張ろうという感じでやれますし、だからこそこういういいゲームもできますし。自分たちにとって、ありがたい存在だなと思っています。

Q.今季のチームはどんな特徴がありますか?

昨シーズンは、ドライブの切れるガード陣が中心になっていたんですが、今シーズンはパッシングでしっかりズレを作って、みんなで走って守ってというプレイスタイルでやっています。

Q.今日の試合では、昨年以上に朝比奈さんがハンドラーとなるシーンが多いですね。

去年は山田葵(富士通)さんらにハンドラーを任せていたのですが、今年は誰もがハンドラーができるチームを目指しているという感じです。

Q.上野さんという3年生の点取り屋がいて、角(陽菜多)さん、岡﨑(真依)さんや黒川(心音)さんら2年生も頼もしい存在になっていますね。

そうですね。推薦組だと自分たちの学年でコートに立てているのは2人だけで、どうしても2人だけだと補いきれない部分もあるんですけど、下級生がチームに勢いを与えられるようなプレーをしてくれていて自分たちもやらないとなと思わされます。チームにとって、なくてはならない存在ですし、信頼できる選手たちですね。

Q.いいライバルという言葉もあった今年の日体大の印象はいかがですか?

去年も今年もやっぱりインサイドが強い留学生がいて、そこを中心に今攻めてきてるんですけど、やっぱりオフボールを使って3Pシュートだったり、中と外のバランスがすごく取れていて、守りづらかったですね。

Q.先程の試合では、最後に朝比奈さんのナイスブロックで勝利となりました。高校時代からとなりますが、留学生相手のディフェンスは自信を持っていますか?

何回も経験する中で学習したものもありますが、まだまだやられてしまうことの方が多いですし、ボールマンにプレッシャーをかけてくれたりもあって、自分だけではなくチームとして守っているという感じですね。

Q.日体大の宮城さんからの質問があります。シュートが上手ですが、どんな工夫をして練習していますかとのことです。

シューティングはやっていますが、ただやるのではなく色々なゲームシチュエーションのシューティングを入れるようにしてやっています。高校の時はスリーポイントを打ってなかったですが、大学から打つようになったこともあって、スリーポイントは特に本数をちゃんとこなせるように毎日やっています。

Q.今後を考えても、3Pシュートというのは不可欠なプレーということですか

そうですね。やはりWリーグやその日本代表だと、プレースタイル的に全員がスリーポイントシュートを打てることが最低ラインとしてありますし。後々、海外の大きい選手とマッチアップしたり、Wリーグでも海外選手がいる中で戦い、活躍するためには必要だと思って取り入れています。

Q.さらに長い目で見た場合、3Pシュート以外にもありますか?

そうですね。3Pシュートももちろんですが、自力で外から切っていくっていうところを、もっとやっていきたいと思っています。留学生相手はもちろん、ガード陣とか日本人相手にも切り崩せるようなドライブを身に付けたいと今、取り組んでいます。

Q.参考にしている選手はいますか?

留学生に対するディフェンスの部分では、髙田(真希/デンソー)選手のディフェンスはすごく参考にさせてもらっています。オフェンスの部分で言うと赤穂(ひまわり/デンソー)さん。私も同じくらいの身長があるけど、赤穂さんはハンドリングもすごく上手。ああいう切っていく力がある選手を目指したいなと思っています。



Q.昨年、チームは春のトーナメント、秋のリーグ戦で共に4位。インカレがベスト8という成績でした。振り返っていただけますか。

代表合宿などでチームとしての活動を抜ける時間もあって、どうチームにコミットできるかっていうのも不安に感じていた部分もありました。自分がもっと攻めたりだとか、エースではありませんが、自分がもっと自覚を持ってやれていたら、4年生にもっといい景色を見てもらえたかなという思いがあります。優しい4年生が良いチームを作ってくれたので、すごく感謝しています。

Q.それを受けての今年度、チームのスローガンを教えてください。

今年は「GROW」です。文字通り“成長する”という意味と、Rの中には小文字のLも入っているので“輝く(GLOW)”という2つの意味があります。常に成長し、輝くチームを目指しています。

Q.当然、頂点を目指してのシーズンとなりますが、関東には2強(白鷗大、東京医療保健大)がいます。どのように戦いたいですか?

2チームとも個人の強さが強烈だと思います。それでも自分たちも、上野(心音)や岡崎(真依)のような崩せる力を持つ選手もいますし、個々のスキル、1対1の能力では負けていないと思っています。ただチームとして一つになってオフェンスもディフェンスもできるようにならないと、2強には勝てないと思っているので、もっともっとコミュニケーションを取って、チームでどれだけやれるかが鍵かなと思っています。

Q.チームとして戦うという意味では、朝比奈さんをはじめ、主力も残っていて、昨季から導入した4アウト、5アウトといった戦術にも磨きがかかっているというのは楽しみですね。

去年スタイルが変わって、今年もベースは変わりません。今まではドリブルが多かったのを、パスにしようとなったくらいですね。筑波としてやりたいことは変わっていないと思っています。その上で、自分たちが出せる色がどうなるのか、そういう共通認識を持ってできるようになったらもっといいチームになれるかなと思っています。

Q. 春のトーナメントでも、持ち味を発揮されることを願っています。

ありがとうございます。








文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

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