月刊バスケットボール10月号

3x3

2025.04.21

齊藤洋介(UTSUNOMIYA BREX.EXE)が語る日本男子3x3の「今」――開幕迫るFIBA3x3ワールドツアー「宇都宮オープナー」を前にインタビュー

昨年の宇都宮オープナーでの齊藤洋介(写真/©FIBA)

4月26日(土)、27日(日)に栃木県宇都宮市で開催される「FIBA3x3ワールドツアー」のシーズン初戦、「宇都宮オープナー」に、開催地枠で出場するUTSUNOMIYA BREX.EXE(以下ブレックス)の齊藤洋介に今大会、そして今シーズンに向けた意気込み話を聞いた。取材日は同大会の開催発表会見が行われた49日。FIBA3x3アジアカップ2025で女子が銀メダルを獲得し、男子もベスト4進出と好成績を持ち帰った1週間後だったが、自身とブレックスに関する抱負を語る齊藤の言葉からは、男子3x3界の飛躍に向けた期待、あるいは予感のようなものが感じられた。


アジアカップでの日本の健闘に一言「感動!」

——宇都宮オープナーの開幕が近づいてきましたが、大会に向けて、また今季全体に向けてどんな準備をして、どんな気持ちで迎えられていますか?

今年はメンバーに入れ替わりがあって、まだ合流したのもつい最近です。シーズンに向けた準備も始めている最中ですが、今年はまだ世界大会を経験したことがない選手が多く、また彼らが中心となっていきます。世界大会に出場できる機会があれば、その一つ一つで、できるだけ多く勝っていきたいというのがもちろんあります。経験値がかなりパフォーマンスに影響してくると思うので、難しい戦いになるとは思っていますけどね。出場機会がくるたび、勝つにしても負けるにしても経験を積み重ねて意味のある経験にしていきたいと思っています。

特に宇都宮オープナーは、昨年の世界ランキングトップテンのチームが多く出場するので、世界大会未経験の選手にしたら本当に貴重な機会です。一戦一戦をしっかりと自分たちの糧にしながら挑んでいきたいですね。

——個人的には、どんなところを高めていきたいと思っていますか?

自分の置かれている役割としては、全体を底上げしていかなければいけない立場です。チーム力を高め、連係を高めるところが一番ですね。自分個人のパフォーマンスももちろん発揮しなければいけないんですけど、チーム全体のパフォーマンスを底上げできるような視点をしっかりと持って、声掛けに努めたり、練習の質を高く維持することが絶対に大事です。練習でやっていることが必ず試合に出るので、試合だけではなく常日頃の姿勢から全員の底上げを図れるように、自分一人のパフォーマンスだけではなく全体に目を配っていかなければいけないですね。

——FIBA3x3アジアカップ2025はご覧になりましたか? 男子日本代表の試合ぶりにどんな感想を持たれたでしょうか?

もう本当に、率直に一言、感動しました! 今回の男子代表は、昨年のチャンピオンで今年も最終的に優勝したオーストラリアにも、昨年準優勝のイランにも予選で勝ちましたからね!近年、特に男子の日本代表はアジアで少し置いていかれているように感じていたんですけど、今の日本はどこと戦っても本当に最後の最後までどっちに勝負が転ぶかわからないクロスゲームを展開できるんだ、それが可能なほど安定したパフォーマンスを発揮できるレベルに到達してきているんだと強く感じました。

僕もプレーヤーとして、過密スケジュールの中で一日に何試合もこなさなければならない大変さがよくわかります。本当に体に負担がかかる状況で、思わず苦しい顔になりながらボールを追いかけているみんなの姿勢を見ていて、本当に、率直に感動しました。

——小澤崚選手(アジアカップ出場時点ではALPHAS.EXE、現在はSHINAGAWA CITY.EXE所属)はイラン戦で、一人で20得点というFIBA記録を達成しましたよね。

20得点というのはこれまでに誰も見たことがない数字です。うろ覚えなんですけど、確か小澤選手はそれまでの得点記録を対戦相手としてやられた経験があったと思うんですよ。今回はそれを自分の手で塗り替えたということで、彼自身の努力が実った結果だと思います。

——今後対戦するのが楽しみでもあるでしょうけど、でもマッチアップしたら大変そうですね。

そうですね、あの…対戦はしたくないですね!(笑)

——アジアカップは、見る立場として大変なくらいに展開が速かったです。まだ攻めているときから次のディフェンスが始まっているようなスピード感で、ディフェンスも頑張っているもののすごくオフェンシブなゲームだなと感じました。昨今の3x3はオフェンス重視で得点を取って勝つような考え方が主流なのでしょうか?

3x3は先に21点を取った方が勝ちの“短期決戦”で、得点を取らないと強豪と戦う舞台には上がれません。それには攻撃回数を増やす必要があり、確率のいいシュートを選択して、決めないといけません。仮にシュートが思うように決まらなくても勝てるように攻撃回数を増やそうというのは、確かに勝利の秘訣の一つなので、3x3がオフェンス重視の展開に思えるのもしかたがないことかなとは思います。でも、ディフェンスが悪くて相手が先に21点に到達した時点で、やっぱり負けてしまいます。相手がそこに到達する時間をなるべく遅くさせないといけない、時間をかけさせないといけない、というのがディフェンス面での目標です。

ここは、5人制と少しだけ考え方が違ってくるのかなと思っているんですよね。5人制なら「なるべく60点台に抑えよう」となるんですけど、僕らは60点も取られるゲームではなくて21点で試合が終わってしまう。誰かのシュートが爆発してしまった時点で、もう本当に危険な状態になります。だから、ディフェンスをしっかりやってなるべく時間をかけさせて、21点に到達させないように時間を削るんです。これをもっとよい形に追求すると、2Pシュートをなるべく打たれないようにという考え方になります。アジアカップの男子日本代表は、そこも頑張りつつ自分たちが2Pシュートをなるべく多く決めることができれば、どんなチームにでも勝てるという戦い方だったかもしれませんね。


©FIBA





なるか!? 地元宇都宮でのチャンピオンシップ・ラン

「小澤とマッチアップしたくない」との下りは、同じ世界に生きるベテランとして、偉業を成し遂げた若手スターに齊藤が敬意を込めて贈ったジョークとして受け止めておこう。齊藤の話しぶりからは、その小澤の爆発や、いわゆる“3x3畑”の人選でアジアカップに臨んだ日本代表の健闘に心を弾ませていたことがありありとうかがえた。

4月17日時点で大会公式サイトを確認すると、ブレックスのロスターに齊藤の名前は含まれていない。メンバーの入れ替えを経て臨む地元でのワールドツアー開幕戦で、齊藤はアジアカップ帰りの仲西佑起らの戦いぶりをコート外から支援する立場となるようだ。昨年の宇都宮オープナーでブレックスは、予選プールを勝ち抜けベスト8入り。しかし、クォーターファイナルで最終的に準優勝となったUB(ウーブ/セルビア)の前に11-22で敗れた。今回こそ、宇都宮二荒山神社大鳥居前のコートでチャンピオンシップ・ラン実現なるか、注目したい。

なお、宇都宮オープナーにはブレックスのほかにも、初日に行われるクォリファイング・ドロー(本選出場の1チームを決めるリーグ戦=QD)に日本からHIU ZEROCKETS.EXE(今大会での登録はSagamihara)、SHINAGAWA CC WILDCATS.EXE(同Tennoz ※小澤所属のSHINAGAWA CITY.EXEとは異なるチーム)、SHONAN SEASIDE.EXE(同Hiratsuka)の3チームが出場することになっている。Sagamiharaには、仲西とともにアジアカップで活躍した井後健矢が、Tennozには中学生時代に1年後輩の馬場雄大(長崎ヴェルカ)にドリブルを教えたという伊藤尚人(奥田中→明成高→関東学院大)が所属している。Hiratsukaには身長210cmのスティーブン・ハートが登録されているが、このビッグマンはBリーグでも活躍した実績がある。

齊藤が解説してくれた3x3の攻防表裏一体のような試合展開は、アジアカップから帰国直後の取材で「得点でプレッシャーをかけようと考えることがある」と話した小澤や、「2Pシュートを打たせないように本当に頑張った」という井後のコメントと大いに通じるところがある。日本代表が、そのプレースタイルの中でハイレベルな相手に勝利を狙えることを示したことは、宇都宮オープナーでの日本勢の躍進を期待させる要素だ。今大会は、本選はもちろんのこと、ぜひQDから現地入りして、宇都宮の街の魅力を楽しみながら選手たちに声援を送ってほしい。

FIBA 3x3 World Tour Utsunomiya Opener 2025 大会公式サイト
3x3.EXE PREMIER 2025 公式サイト内のQD情報紹介ページ





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