挑戦心とプライドがぶつかった「スプリングカップ2025」大会レビュー

大学生相手に堅守速攻を貫いた福岡第一(写真は山口銀之丞)
対戦と観戦で得られた学び――福岡第一高
3月12日から16日までの5日間、東洋大学赤羽台キャンパスHELSPO HUB-3アリーナ(東京都北区)で開催された「スプリングマッチ2025」。高校6チーム、大学7チームの計13チームが参戦し、世代を超えて熱戦を繰り広げた。大会期間中、コート2面で計30試合が実施され、そのうち10試合はJ SPORTSオンデマンドで独占LIVE配信。さらに、3月12日には東海大vs.福岡第一高、早稲田大vs.洛南高の2試合がJ SPORTSの公式YouTubeで無料LIVE配信されるなど、大きな注目を集めた。
「トップレベルの大学と対戦できる機会は今年が初めてで、滅多にないことです。こうした大会を企画してくださった先生方や、賛同してくださった大学の監督や選手の皆さん、そして運営の方々に本当に感謝しています」
こう語るのは、福岡第一高の新3年生、宮本聡だ。同校は例年、春先の時期に数多くの高校と交歓大会や練習試合をこなしているが、大学のトップチームと戦う機会は限られている。だからこそ、選手たちはこの貴重な機会を全力で生かそうと、大学生相手に果敢にプレー。留学生の負傷といったアクシデントに見舞われながらも、数々の接戦を繰り広げ、東洋大との試合では2度の延長にもつれる激闘を勝ち切るなど、強烈なインパクトを残した。
同校を率いる井手口孝コーチも、今大会の意義について次のように語る。
「大学生と対戦できることはもちろんですが、大学生同士の試合を観戦できるのもすごく良いことです。九州の子どもたちは、大学生同士の試合を生で見る機会がほとんどない。映像で見るのとは違い、会場で体感することで得られる刺激は大きいです」
福岡第一高の選手たちは、少し早めに会場に来て、大学生の試合を観客席から見学する時間も大切にしていた。高校とは別格のフィジカルの強さ、戦術の賢さ、大学バスケならではのプレースタイルなど、対戦と観戦から多くの学びを得たようだ。

早田流星(写真)ら、福岡第一高OBも多い日体大は後輩たち相手に負けられない戦いを繰り広げた
少数精鋭で得た確かな手応えと課題――福岡大附大濠高
今大会に出場した高校の中でも、ひと際注目を集めたのが福岡大附大濠高だ。昨年のウインターカップ覇者であり、数多くのタレントをそろえる名門校。新チームとしてどのような戦いを見せるのか、多くの関心が寄せられた。今大会、中学3年生世代(新高1)は、唯一すでに卒業式を終えた平良孔龍のみ参加。彼を含めて登録メンバーは10人、さらにWキャプテンの一人である勝又絆がケガで欠場したため、実際にコートに立てるのは9人という少数精鋭での戦いとなった。
片峯聡太コーチは今大会に向け、「大学1部、2部のトップレベルのチームと対戦できる機会はそうありません。だからこそ、小手先のことより、真っ向からぶつかって自分たちのスタンダードがどのくらいの位置にあるのか確認したい」とテーマを設定。春先のこの時期は”個の力”を磨くことに注力しており、試合中も「逃げるな!」「失敗してもいいからチャレンジしろ!」と、選手たちに積極性を求め続けた。
9人という限られた戦力で、格上の大学生相手に挑むタフな戦い。それでも、「ディフェンスは良いマインドでできていましたし、リバウンドでも大きくは負けていなかった」と片峯コーチが語るように、一定の手応えを得ることができた。昨年に比べてチームのサイズが小さくなった分、選手たちは意識の部分を徹底。
司令塔の榎木璃旺も、「インサイド陣のサントス(マノエル・ハジメ)らに頼ってしまうと、40分間持たないかもしれないし、ファウルトラブルになる可能性もある。サントスが中で頑張る中で、僕ら周りのガード陣がボールに飛び込む、というのを意識しています」と、チーム全員でボールを取りにいく姿勢を強調していた。
一方で、課題となったのはオフェンスだ。昨年までチームの得点源になっていた渡邉伶音(東海大)、湧川裕斗(明治大)、高田将吾(筑波大)らの抜けた穴は大きく、今大会でも、失点を抑えてロースコアゲームには持ち込めるものの、自分たちのオフェンスが伸び悩んでしまう場面が多々見られた。
「14番」というエースナンバーを託された新2年生の本田蕗以も、「高校生相手ならスクリーンを使えば多少はズレを作れるのですが、大学生は対応が早くて全然ズレが生まれなかった」と、高い壁を実感。それでも「勉強になった部分はすごくあると思います。自分は点を取ってチームを勝たせることが、今年求められる役割。伝統あるこの背番号に恥じないように、一生懸命プレーしたい」と、今後の成長への決意を語っていた。
大学生相手に、手応えと課題の両方を得た福岡大附大濠高。僅か2日間の参加だったが、今後のチームの成長につながる貴重な材料を手にしたようだ。
今回取り上げた福岡第一高や福岡大附大濠高をはじめ、高校生の挑戦心や大学生のプライドが激しくぶつかり合った「スプリングマッチ2025」。J SPORTSオンデマンドでは、期間限定で録画配信も行われている。気になる方は、ぜひチェックしてみてほしい。

今シーズンの福岡大附大濠高で、得点源の一人として期待がかかる本田蕗以