月刊バスケットボール10月号

Wリーグ

2025.03.17

2試合で37得点!渡嘉敷が牽引し、アイシンが連勝でプレミア残留を決める

渡嘉敷「次は日本代表への復帰だと思っています」


3月15、16日、Wリーグのディビジョン入替戦が開催された。今シーズン、プレミアリーグ(Wプレミア)8位となった日立ハイテク クーガーズがフューチャーリーグ(Wフューチャー)に自動降格。Wフューチャー1位の東京羽田ヴィッキーズが昇格することが決定しており、入替戦はWプレミア7位のアイシン ウィングスとWフューチャー2位の三菱電機コアラーズにより、2ゲーム先取方式で行われた。

今シーズンより2ディビジョン制へと移行したWリーグにとって、入替戦はWリーグ、WIリーグに分かれて開催していた2010-11シーズン以来のこと。当時はWリーグに参加するチームが減少していったことにより1リーグ制へと移行したが、近年、徐々にWリーグへの参加チームが増加してきたことや、さらなる競技レベルの向上を求めて、今シーズンよりWプレミア、Wフューチャーの2ディビジョン制が採用されたのだ。

久しぶりに開催された入替戦となり、選手たちは初めての経験。コーチ陣にとっても同様だが、唯一、アイシンの梅嵜英毅ヘッドコーチはかつての入替戦経験者。梅嵜HCは日本リーグ時代の富士通や、Wリーグでの日立ハイテクのコーチ時代に入替戦を何度も経験している。それだけに「入替戦はいつものゲームとは違う。何が起こるか分からないと選手たちに伝えました」と話し、「(今シーズンより移籍加入した)渡嘉敷(来夢)、岡本(彩也花)といった実績ある選手たちを入替戦に出させてしまったことが申し訳ない」との心境を明かした。


アイシンは#2岡本彩也花の貢献も光った

しかし、当の渡嘉敷は「入替戦だからといって、特別な感じではありませんでした。プレーオフやファイナルと同じですね。初戦が大事なこともそうですし、勝ったことで得られること、負けたことで失うことも」と自然体で臨んだと口にする。一時代を築いてきたENEOSサンフラワーズの大黒柱として君臨してきた渡嘉敷にとって、初めて臨む入替戦も、勝てば優勝、負ければ何も得られないファイナルも変わらないと感じていたようだ。

アイシンと三菱電機はプレシーズンのユナイテッドカップで対戦。渡嘉敷にとっては移籍加入後初の公式戦であり、当然、勝つつもりでいたのが、思いもよらぬ敗戦を喫した相手だった。それは「自分が加入したからといった簡単に勝てるわけではない」「ENEOSの時よりも、もっと自分がやらなければならない」と感じさせられた試合となった。常にトップを狙うENEOSでは、周りのメンバーも日本代表を担う選手たちばかりであり、渡嘉敷に求められる役割も一人の選手としてのものだった。しかし、発展途上のチーム、アイシンにおいては、それ以上にオールラウンドなプレーでチームを勝たせなければならない役割を背負うことになった。それは勝つために得点することは当たり前のことであり、ディフェンス面での存在感しかり、チームのムードメーカーとしても役割を全うした。


2戦目、26得点と三菱電機を引っ張った#21笠置晴菜 



かくして臨んだ入替戦では、1試合目の81-52と大勝。2試合目も2桁リードを保っていたが、4Qに三菱電機の猛反撃を受け、試合終盤にワンゴール差まで詰め寄られる展開となった。ファウルゲームに持ち込もうとファウルを重ねてくる三菱に対し、渡嘉敷はスローインのレシーバーとしてボールを受け続け、62-60とアイシンを勝利に導いた。
この試合渡嘉敷は18得点、10リバウンド、11アシストのトリプルダブルと圧巻のパフォーマンス。
「これでリーグ戦が終わり、ケガなくシーズンを過ごせたことによって一番思うことは、次は日本代表への復帰だと思っています」と、渡嘉敷はシーズンを振り返りつつ次の目標を口にした。出場するはずだった東京2020大会がコロナ禍で延期となり、その間に右膝の前十字靱帯を断裂。2021年に開催された同大会に出場することはできず、以来日本代表から離れていた。今シーズン、全試合にスターターとして出場、得点王に輝いたことで完全復活ともいえるが、渡嘉敷はそのことをアピールするわけではなく、「もっとできる、もっとうまくなれると思っています」と、代表復帰に向けさらなる進化を誓った。







文/飯田康二(月刊バスケットボール)、写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)

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