月刊バスケットボール10月号

3x3女子日本代表強化合宿、伊集コーチ「すごくチャンスがある」

4選手が選出されて「FIBA 3x3アジア杯2025」へ


シンガポールで開催される「FIBA 3x3アジア杯2025」(女子は3月26日〜30日)に向けて2024年度 3x3 女子日本代表チーム強化合宿が2月28日〜3月2日に行われた。

3x3女子日本代表が本格的に強化しはじめたのが、2016年。同年開催されたFIBA 3x3世界選手権 2016(現ワールドカップ)には、日体大の4名で出場(19位)。その後、オリンピック種目に採用されたことをきっかけに、矢野良子さん(元ジャパンエナジー[現ENEOS]ほか)をはじめとするWリーガーが必ず参加してきた。


第10回 3×3 日本選手権大会2年連続MVPの浅羽麻子(boldiiies、写真中央)

今回の合宿には合計16選手が招集されたが、特徴的なのは初めて3x3に精通した選手たちだけで行われたということ。今年2月にファイナルラウンドが行われた「第10回 3×3 日本選手権大会」で連覇を果たしたboldiiiesからは、同大会で2年連続MVPの浅羽麻子(国内29位・世界661位)、大橋実奈(国内18位・世界563位)、野口佑季(国内78位・世界1060位)と3選手が選出。同じく2月にフィリピンで開催された「Manila Hustle 3x3」で優勝した田平真弥(国内8位・世界219位・立教大)、西ファトゥマ七南(国内15位・世界405位・早稲田大)、同参戦の髙橋優花(国内38位・世界777位・XD)、髙桑利加(国内64位・世界934位・TOKYO DIME)など上は37歳、下は19歳と幅広い選手たちが合宿に招集された。





伊集南コーチは「選手たちに求めたのは、人として大切な要素があるということです。いいエネルギー、キャラクターを持って、リーダーシップを発揮できるか。最初に強く伝えました。チームとしていかにタフにプレーできるか、コミュニケーションを取ってケミストリーを構築できるか。日本代表は、それができる人たちになってほしいと考えています」とコンセプトを紹介。

2019年、選手としてFIBAアジア3x3カップで3位に貢献し、同年の FIBA3x3ワールドカップでもプレーした伊集コーチは「日本が世界と戦う上で強みになるのは、まずは2ポイントショット。そこは常に狙っていきたいです。そのためにも、瞬時の速さを発揮するプレイスピードが必要ですし、(ディフェンスを下げるためにも) 縦に切っていくリムアタックができる選手も大切になります。強みとなる3つの一方で、インプルーブと呼んでいる改善したい点としてあるのが、トランジションディフェンスです。世界の高さに対して、そこは頑張らなければいけないところですし、リバウンドも同様ですね。球際の部分、1対1のディフェンスが鍵になってくると考えています」と求める戦い方を述べた。


公開練習では伊集コーチ(右から2人目)が見守る中スクリメージが行われた



3月1日に公開された練習の一部では、出場16選手が4名ずつのチームに分かれてスクリメージを実施。3x3に精通した選手たちとあって、積極的にコミュニケーションを取り、すぐに実行するといったシーンも見られた。久しぶりの合宿参加となった浅羽は、「雰囲気がすごくいいですね。2017年と19年にも3x3の代表合宿を経験させてもらっていますが、いつもは対戦相手となっている選手たち、逆に普段はプレーすることのない大学生たちと、一緒に戦術などについて話あってやっています。競技人口は確実に増えていることもあって、コミュニケーションがすごく取りやすくなっていると感じます」と日本として底上げも感じると笑顔を見せた。

大会の選手登録は4名(補欠2名)を勝ち取るのはどの選手になるのか。発表は、大会直前合宿近くになると言う。大会で日本はメインドローのCに振り分けられ、3月28日に開催国シンガポール、予選勝者(カザフスタン、イラン、ベトナム、モルディブから1チーム)と対戦。勝ち進むことができれば、30日に準々決勝以上に進むことになる。「まずはプールCを勝ち抜くこと。トーナメントではニュージーランドと対戦する可能性があると考えています。まず2試合やって、1日空けて(勝ち抜けば)3試合ある。そのスケジュールも加味して戦えるメンバー4人を選ばなければいけません。すごくチャンスがあるので、一番を取りに行きたいと思います」と伊集コーチ。「苦しい時に何ができるか? 誰がエナジーを出すのか。現役時代、そこが大切と思っていました。海外の強豪チームは、そこであと一歩踏ん張れるのです」と勝負どころで力を発揮できるメンバーを選ぶと強調した。FIBA 3x3アジアカップでのメダルは、伊集コーチが現役だった2019年大会の3位(伊集南、篠崎澪/元富士通、西岡里紗/元三菱電機、宮下希保/富士通)。昨年大会(千葉歩/東京羽田、古木梨子/トヨタ自動車、金田愛奈/トヨタ自動車、栗林未和/東京羽田)は5位となっている。

「日本で3x3をやりたいと思えるような環境、コミットしたくなる世界を作ることが大事だと考えています」と切り出した伊集コーチは、「3x3は世界ですごく注目されていて、いろいろな戦術も研究されています。ポイントがあるなど5人制と違う部分もありますが、やりたいスポーツに3x3が入るためにも、どう盛り上げるか。段階を踏めば、競技人口も上がるはずです。普及と育成、そして強化に加え、ビジネスの視点からも発展させていきたいですね。関係者と選手、さらに観客も含めて、この競技の魅力というのを発信することができれば盛り上がるはずだと思います。日本でバスケは注目されていますので、そこにうまく持っていきたいですね」と熱い思いを語った。





【3×3女子日本代表 強化合宿参加メンバー】
■スタッフ
チームリーダー 倉石 平 (早稲田大学)
コーチ 伊集 南 (株式会社デンソー)
アスレチックトレーナー 岡本 香織 (公益財団法人日本バスケットボール協会)
アスレチックトレーナー 村木 亮子 (JIN整形外科スポーツクリニック)
チームマネージャー 稲葉 一政 (公益財団法人日本バスケットボール協会)

■選手
6位 高橋 芙由子(206位・FLOWLISH GUNMA)
8位 田平 真弥(219位・立教大学)
14位 横井 美沙(340位・FLOWLISH GUNMA)
15位 西 ファトゥマ七南(405位・早稲田大学)
16位 鶴見 彩(501位・MAURICE LACROIX)
18位 大橋 実奈(563位・boldiiies)
29位 浅羽 麻子(661位・boldiiies)
31位 八木 希沙(723位・TOKYO VERDY.EXE)
33位 井齋 沙耶(735位・TOKYO VERDY.EXE)
38位 髙橋 優花(777位・XD)
39位 原山 穂乃香(789位・JOAHN)
61位 加藤 臨(914位・TOKYO DIME)
64位 髙桑 利加(934位・TOKYO DIME)
78位 野口 佑季(1060位・boldiiies)
475位 津川 理乃(10411位・XLiV)
633位 下井 陽和(17638位・日本女子体育大学 / XD)
※左数字は国内ランキング、()内順位は世界ランキング(※2月24日現在)

【FIBA 3×3 アジアカップ 2025 大会概要】
大会名称:FIBA 3×3 Asia Cup 2025 (FIBA 3×3 アジアカップ 2025)
日時:2025年3月26日(水)〜30日(日)
場所:シンガポール
予選プール
男子/プールC:日本(15)、オーストラリア(35)、予選C 1位
女子/プールC:日本(14)、シンガポール(19)、予選C1位
※上位2チームが決勝トーナメント進出
※()内の数字はFIBAランキング ※2月24日現在
大会サイト:https://fiba3x3.basketball/2025/asiacup






文・写真/広瀬俊夫(月刊バスケットボール)

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