女子日本代表、ゲインズ新HCが就任会見「日本代表のスタンダードを取り戻したい」

ゲインズ氏は「かつて女子日本代表が築き上げ、世界からもリスペクトされた”スタンダード”を取り戻したい」と繰り返し強調した。東京2020オリンピックで銀メダルに輝くなど、世界にその存在感を示した女子日本代表だったが、パリ2024オリンピックでは強豪国の高い壁に阻まれ全敗を喫した。復権への道のりについて「すごく時間がかかることだとは思いますが、JBAと日本代表、全てが一体となって取りかかれば必ず成し遂げられると思っています」と力強い言葉で決意を示す。
1965年6月1日生まれの59歳で、「日本は第二のふるさと」と語るゲインズ氏。米国ロサンゼルス出身ながら祖母が日本人で、自身も日本と深いつながりを持っている。
選手時代にはNBAを含む海外の複数のチームを渡り歩き、1998年にはジャパンエナジー グリフィンズの一員として日本リーグでプレー。引退後、指導者に転身すると、2009年にはWNBAフェニックス・マーキュリーのヘッドコーチとしてチームを優勝に導いた。そしてこの2009年頃から、縁あって日本代表の強化にも携わる形となり、2016年にはリオ2016オリンピックに向けた女子日本代表アドバイザリーコーチに就任して幾度となく来日。2021年までNBAの複数のチームでアシスタントコーチを務めた後、2022年からは男⼦⽇本代表のアソシエイトコーチに就任して活躍の場を日本に移し、FIBA ワールドカップ2023、パリ2024オリンピックなどでチームを⽀えた。
目指すバスケットスタイルについては「オーガナイズド・カオス(整備されたカオス)」と表現。混沌とする状況でも最適な状況判断を重ねて“カオスを制する”ことは、パリオリンピックでも課題となっていたことだ。「しっかりスピードの速い、強度の高いバスケットボールをミスなくこなしていくこと。それはすごく難しいことだと思いますが、対戦相手にとっては今までやったことのない、非常にやりづらい相手となりますし、逆に日本にとってはそれが自分たちのスタンダードで、やりやすくなる。相手のペースではなく、自分たちのペースで試合を進めたいと思っています」と構想を語るゲインズ氏。
また、指導の際に重視するのは選手とのコミュニケーションだ。
「昔、フィル・ジャクソン(元ブルズ、レイカーズほかHC)から『バスケットボールも、結局は人と人とのつながり。コミュニケーションが取れなければ、チームをうまく作ることなんてできない』と教えてもらい、当時は彼がなぜそこまでコミュニケーションを重んじるのかよく分からなかったのですが、今、本当に分かるようになりました。これからいろんな選手としっかりコミュニケーションを取って、お互いやるべきことや方向性を定めていきたい」
今年7月には中国で「FIBA女子アジアカップ2025」が開催予定。ゲインズ氏は「大きな大会なので、結果を求めるのはもちろんですが、若い選手をどのようにチームに融合して経験を積ませていくかというところにも重きを置いて戦っていく」と語り、若手選手の発掘や育成にも積極的に取り組む考えを示す。選手に求める資質として「ハイエナジー、継続性、プレーハード」の3つを挙げ、「それらは日本人の特性ではあるのですが、しっかり選手に求めていきたい。この3つの要素を持つ選手を探してチームを作っていきたいです」と先を見据えていた。

文・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール)