神奈川VANGUARDSが3連覇、鳥海連志がMVPに[車いすバスケ天皇杯]
主導権を握り続けた神奈川がまたも頂点に
車いすバスケットボールの日本一を決定する天皇杯(第50回記念日本車いすバスケットボール選手権大会)決勝戦が、2月2日、東京体育館で開催された。3連覇の懸かる神奈川VANGUARDS(元パラ神奈川SC)に挑んだのは、4度目のファイナルで初優勝を狙う埼玉ライオンズ。準決勝で富山県WBCを延長の末に退けて挑戦権を得た埼玉にとっては昨年のリベンジを狙うチャンスである。前回決勝では、44-47での惜敗。その後、埼玉は主力選手の移籍などもあったが、再びチーム力を高めてきた。
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出だし、神奈川のハンドラー⑦古澤拓也がいきなり3Pシュート、またファストブレークを決めるなど流れを作る。一方の埼玉は⑱熊谷悟の連続シュートなどで食らいつき、1Qを10-16と6点のビハインドにとどめた。ジリジリと引き離しにかかる神奈川に対し、埼玉も粘りを見せ10点差前後で攻防が続く。後半に入ると埼玉は⑫大山伸明のインサイドや3Pシュート、⑩北風大雅のファストブレークで詰め寄る場面が見られたが、その都度、神奈川が勝負強さを見せて、再び点差を開く。

埼玉⑩北風大雅
41-29と神奈川12点リードで迎えた最終クォーターも、埼玉の⑳財満いずみが立て続けにゴールを決めるものの、神奈川は②鳥海連志が決め返し、さらに高確率でミドルシュートを決め続け流れを渡さず、最後は突き放した神奈川が61-41と3連覇を達成した。
埼玉の中井健豪HCは「完敗です」としながらも、チーム再構築となったシーズンに天皇杯で決勝まで進んだことを「選手たちは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました」と評価する。「決勝もこれだけのゲームをしてくれたので。特にディフェンス面ではVANGUARDSさんを61点に抑えたので。このゲームでは60点に抑えるというのを一つのキーに挙げていたので、ほぼその目標どおりの戦いができました」と多くの収穫を得たようだ。

今大会のMVPには鳥海(神奈川)が選ばれたが、その鳥海はベンチから出場するシックススマンの役割を担った。選手兼アシスタントコーチでもある鳥海は、ベンチから相手のバスケットを俯瞰することで、「相手が何を狙ってきたいのか、自分たちは何が成功して、何がうまくいっていないのかを確認してからコートに出たい」とヘッドコーチに志願して、ベンチスタートにしていると明かす。決勝戦では「僕たちの3Pシュートに対してどんな反応をしてくるか、相手のエース、⑫大山選手がどのくらいの確率で決めてくるか、どういう連係をしてくるかというところを見ておきたかった」と冷静に試合に臨んでいた。
「埼玉さんには週イチくらいのペースでお邪魔し、この一年間、一緒に練習を積んできました。お互いの成長や課題を全部共有してやってきたので…。彼らとともに決勝の舞台に立てたのはうれしかったです」と記念すべき50回大会を振り返った。
また、鳥海自身は海外挑戦も視野に、自分のレベルアップ、そしてチームのさらなる成長を求め、飽くなき挑戦を続けていく覚悟を表した。

1年間切磋琢磨した埼玉との対戦を喜んだMVPの②鳥海連志(神奈川)

写真/山岡邦彦(月刊バスケットボール)、文/飯田康二(月刊バスケットボール)