【Jr.ウインターカップ2024-25 プレビュー】高校バスケスターのJr.ウインターカップの思い出/東山や福岡大附大濠の選手が語るその価値
冬の祭典、ウインターカップ――それはバスケットボールに打ち込む高校生たちにとって、これまで積み重ねてきた集大成をぶつける大舞台だ。しかし、冬の大一番に全力で挑もうとしているのは、高校生たちだけではない。
中学生世代のU15カテゴリーで、毎年1月に開催されているのが『Jr.ウインターカップ』。こちらも冬の頂上決戦として、寒さを吹き飛ばすような白熱の試合が毎年展開されている。
今大会には中学校の部活だけでなく、クラブチームやBユースも参戦でき、そうしたチームの躍進も目覚ましい。部活やクラブの垣根を越え、U15カテゴリーの“真の最強”を決める注目の大会となっている。
Jr.ウインターカップで培った自信が現在にも生きている東山高
瀬川琉久(ゴッドドア⇒東山高)
Jr.ウインターカップで存在感を見せた選手たちが、その後の高校・U18カテゴリーで活躍することも多い。今年の東山高で“三銃士”と呼ばれるエーススコアラーの3人も、それぞれに思い出深いJr.ウインターカップを経験している。
今年のインターハイで優勝を飾った東山高の瀬川琉久は、Jr.ウインターカップ2021-22で優勝を飾ったゴッドドア(兵庫)のエースだ。
Jr.ウインターカップ2021-22男子優勝のゴッドドア(一番左が#85瀬川琉久)
「僕らのときは全中がコロナ禍で4校同時優勝だったこともあり、Jr.ウインターカップは真の日本一を決める最後の大会、という感じでした。琉球U15と2回戦で当たる組み合わせになり、平良宗龍選手(開志国際高)のことは当時から強く意識していましたし、事実上の決勝戦くらいの気持ちで臨みました。本当に最後、勝ち切れたので良かったです。そのまま勝ち上がって優勝したときは、全中のときとは全然違う景色が広がっていて、これが本当の日本一なんだなと感動しました」(瀬川)
同じく東山高の2年生・佐藤凪は、その翌年のJr.ウインターカップ2022-23に横浜BC U15(神奈川)の一員として出場している。
佐藤凪(横浜BC U15⇒東山高)
横浜BC U15は神奈川県予選で敗れたものの、JBA推薦枠で何とか出場権を勝ち取り、「Jr.ウインターカップでこそ中学カテゴリーの真のチャンピオンが決まると思っていたので、すごくわくわくしました」と佐藤。いざ大会が始まると破竹の勢いで勝ち上がり、準決勝では、夏の全中王者・四日市メリノール学院中(三重)から金星を挙げた。最後は福岡U15(福岡)に敗れて準優勝だったものの、「自分としては初めて日本の一番を決めるような戦いを経験させてもらいました」と、貴重な経験を得た。
Jr.ウインターカップ2022-23男子準優勝の横浜BC U15(#11佐藤凪)
東山高の1年生・中村颯斗は、四日市メリノール学院中で下級生の頃から主軸でプレーし、先述のように2年時のJr.ウインターカップ2022-23では佐藤を擁する横浜BC U15に敗れた。だが悔しさをバネに、キャプテンとなった3年時には、1シーズン無敗で全国を席巻。全中に続きJr.ウインターカップ2023-24でも優勝を果たした。「準々決勝のNOSHIRO ACADEMY(秋田)戦は、前半まで相手にリードされる苦しい展開でしたが、監督が『お前たちならやれる』と言ってくれて、勝ち切ることができました。あの試合があったから、自分たちも優勝できたと思います」と振り返る。
中村颯斗(四日市メリノール学院中⇒東山高)
中学3年間を締めくくるJr.ウインターカップにおいて、優勝や準優勝でそれぞれに大きな手応えを得た東山高の三銃士。身をもってトーナメント大会の勝ち方を知り、そして揺るぎない自信を培ったことは、東山高に進んで以降も大きな力になっている。瀬川が2年時の全国デビューから堂々たるプレーを見せたのも、佐藤が1年時から瀬川に負けず劣らず得点源の一人となったのも、中村が1年目でインターハイ優勝に大きく貢献したのも、彼らがJr.ウインターカップで得た経験値が少なからず影響しているはずだ。
Jr.ウインターカップ2023-24男子優勝の四日市メリノール学院中(#21中村颯斗)
敗戦からも多くを学び福岡大附大濠高での飛躍の糧に
榎木璃旺(四日市メリノール学院中⇒福岡大附大濠高)
一方、Jr.ウインターカップの忘れ難い悔しさが、その後の飛躍に大きくつながった選手もいる。福岡大附大濠高の2年生で、四日市メリノール学院中では中村颯斗の1つ上の先輩だった榎木璃旺もその一人。
榎木は中学1年時からスタメンで、3年連続Jr.ウインターカップに出場してきた。中学1、2年生のときはベスト16。3年生のときは夏の全中で初優勝を飾り、2冠を懸けてJr.ウインターカップ2022-23に臨んだものの、先述のように横浜BC U15に敗れてベスト4に終わった。「ガードとしてチームを勝たせられず、悔いが残る大会でした」と榎木。
Jr.ウインターカップ2022-23男子ベスト4の四日市メリノール学院中(#0榎木璃旺)
「横浜BC戦は、前半から相手に気持ち良くシュートを打たれてしまいました。ディフェンスで引いてしまったので、もっとプレッシャーをかけていれば勝てる試合だったと思います。そこは高校に上がって、なおさらシュートがうまい選手も多いので、ディフェンスで引かずにプレッシャーをかけることを意識しています」(榎木)
榎木が福岡大附大濠高で、手を抜くことなく相手にプレッシャーをかけて奮闘し続けている裏には、こうした苦い敗戦からの大きな学びがあったのだ。
また、Jr.ウインターカップに出場するべくクラブチーム・Bユースで学んだことが、その後の自身のプレースタイルに大きく影響した選手たちもいる。福岡大附大濠高の渡邉伶音や湧川裕斗は、その筆頭だ。
渡邉伶音(千葉J U15⇒福岡大附大濠高)
渡邉は、全中を終えてから千葉J U15(千葉)に加入。ベスト8という結果で悔しい大会にはなったが、「大会自体もそうですが、Jr.ウインターカップまでの期間、ボール運びや外角のシュートなど外のプレーも練習させてもらえました。中学の部活ではインサイドで戦うことを主に学んだのですが、千葉J U15でアウトサイドに挑戦してまた違った学びがあって、そのどちらも今につながっていると思います」。大会を機に、自身のプレースタイルを大きく拡大できたことは大きな収穫だった。
一方の湧川も、中国大会で敗れてから広島U15(広島)に加入。「全中には1年生のときに出場したのですが僕はベンチ外だったので、中学での全国経験はJr.ウインターカップが初めて。全国レベルを肌で感じました」と言う。その広島U15では、慣れないPGのポジションに挑戦。3回戦、横浜BC U15に残り3秒で3Pシュートを決められ惜敗し、「PGというポジションを意識し過ぎて、点を取ることをチームメイトの南川陸斗(東山)に任せ過ぎたし、ゲームを読む力なども全然足りませんでした」と反省の弁だったが、「あの負けを機に、いろいろ監督に言われたことが刺さりましたし、成長できたかなと思います」。
湧川裕斗(広島U15⇒福岡大附大濠高)
東山高や福岡大附大濠高の選手たちを例にとっても、出場選手たちはそれぞれに自信や悔しさ、プレースタイルの転換など、Jr.ウインターカップを経て多くのものを持ち帰った。湧川はこれから出場する中学生たちに向け、こんなメッセージを残す。
「バスケットボールキャリアにおいて、すごく思い出に残る大会になると思います。しっかり1試合、1試合、全力を出し切ることで得られるものも多いと思うので、悔いのないように大会に挑んでもらいたいです」
高校生のウインターカップに負けず劣らず、中学生のJr.ウインターカップでも毎年数々の熱い戦いが繰り広げられ、その後のステージにつながるような経験を積んでいる。きらめく原石がゴロゴロいるJr.ウインターカップから、今年も目が離せない。
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文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)
タグ: ウインターカップ Jr.ウインターカップ