村田桂次郎と鮫島颯介、異なる個性を秘めた2人の敬意を持ったエース対決 [ウインターカップ]

言葉は交わさずとも、試合の中で築かれる関係性がある──「SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の男子1回戦で対戦した國學院大久我山のエース#4 村田桂次郎と川内のエース#24 鮫島颯介からは、試合が進むにつれて互いへのリスペクトを強めている様子が見て取れた。

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試合を先行したのは久我山で、川内のマンツーマンを村田を中心とした個人のドライブで打開し、そこからのキックアウトパスをシューター陣がリズム良く決めていく。1Q残り3分28秒に川内がタイムアウトを取る頃には20-7という大きな差が付いていた。タイムアウト明けも久我山のリズムが続き、村田がバスケットカウントをねじ込んだ1Q残り2分17秒時点で27-9と、この日最大の22点差。このまま久我山のペースで試合が進むかと思われたが、しかし。

ド派手に得点する村田と
淡々と返す鮫島
川内がディフェンスを2-1-2ゾーンに変更すると、久我山の足が止まる。絶妙な間合いでディフェンスの受け渡しを行う川内のゾーンを前に単発な1対1が続き、ディフェンスでも相手の見事なスクリーンプレーやセカンドチャンスから次々に点を奪われる。18点あった点差は2Q半ばには振り出しに戻っていた。
「2Qから3Qはしっかりと自分たちのバスケができていました。なかなか1回では(シュートを)決め切れないと思うので、川内のスタイルである粘り強くリバウンドやルーズボールをもぎ取るところを意識していました。そこが出たのでよかったです」
鮫島は追い上げの時間帯をこう振り返っている。そこからは一進一退の攻防が続いたが、最後に抜け出したのは久我山。村田の果敢なペイントアタックでゾーンをこじ開け、#11 佐藤淳太郎や#12 石水怜らシューター陣がきっちりと3Pシュートを決める。最後は村田自身がバスケットカウントを決め切り、99−91でハイスコアゲームに終止符を打った。

身体能力とボディバランスを生かしてダイナミックなシュートを決め、その後に派手なセレブレーションをする村田と、それを受けて緩急やスキルを駆使して淡々と点を返していく鮫島。彼らのプレースタイルやコート上でのボディランゲージはあまりにも対照的だったが、それぞれの色をしっかりと表現する見応えのあるバトルだった。
互いに対戦するのはこの試合が初めてだったが、鮫島は「村田選手は世代屈指のポイントゲッターで、一人では守れないとしっかりとチームで話し合っていて、村田選手がドライブをしたら3人がかりでもいいから、無理にでも止めることを心がけていました。でも、やはりそう簡単に守れる相手じゃありませんでした。今後、もしかしたら大学でも対戦するかもしれない相手なので、スター選手相手にどれだけやれるのかを考えながら挑んでました」と村田の存在を意識する部分があったと認めていた。
一方の村田も「試合前から相手のキーマンは鮫島選手だと思っていたので、試合の中でのリスペクトももちろんありました。自分が得点やディフェンスの部分で(鮫島に)絶対に負けないようにという意識はありました」と話していた。

勝敗が決した残り数秒の場面で、村田は交代のために鮫島にファウルをした。そのファウルの後、彼らは軽くハイタッチをした。
試合序盤から中盤にかけては、表には出さないまでも彼らの間にはバチバチした雰囲気が漂っていたが、この瞬間には村田の話した「リスペクト」をお互いに示しているように感じられた。川内は1回戦で敗れ、鮫島の高校バスケはここで幕引きとなった。だが、彼の意志を村田と久我山が引き継いで次のラウンドに進んでくれるに違いない。
2人のスタッツは村田が37得点、4リバウンド、7アシストで、鮫島が29得点、9リバウンド、5アシスト。得点は両者ともチームハイだった。2人の“エース対決”はハイタッチで終わった最後の瞬間まで見る者の心をアツくした。
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文/堀内涼(月刊バスケットボール)







