月刊バスケットボール10月号

【SoftBank ウインターカップ2024 プレビュー】東山の“三銃士”が挑む、負けられないウインターカップ 瀬川琉久「最後の冬は勝ち切りたい」

三銃士──東山を支える瀬川琉久、佐藤凪、中村颯斗の3人には、こんな愛称がある。元々は昨年度の3年生だった佐藤友(東海大)と瀬川、凪の3人に付けられた愛称だったが、友の卒業と入れ替わりで入学した中村がその空席に就いた形だ。正確には、特にシーズン初めの頃は“新・三銃士”と呼ばれることが多かった。

彼ら3人を中心とした東山は、機動力と個々のスキルを生かして戦う3ガード体制に舵を切り、インターハイでは見事に優勝。秋のU18日清食品トップリーグでも最終4位(4勝3敗)ながら、ラスト2試合では美濃加茂と開志国際にそれぞれ快勝し、良い形でウインターカップ前最後の公式戦を終えた。



当然ながら、学年が違う瀬川、佐藤、中村の3人がウインターカップに懸ける思いはそれぞれ異なる。だが、共通している点はインターハイの結果に満足せずに、高校バスケ最大のタイトルであるウインターカップを取るという強い思いだ。

まずは、3選手それぞれが抱くウインターカップへの思いを紹介しよう。



「僕の兄(瀬川玲央/当時北陸高所属)がウインターカップに出ていて、観戦させてもらいました。僕が小学4年生のときです。コートにいる選手全員が格好良く、輝いて見えました。そこからウインターカップという大会に本当に憧れていて、やっぱり最後の冬は勝ち切りたい。ウインターカップに対しての気持ちは強く持っています」(瀬川)

「3年生と(最大で)あと5試合しかできないのはすごく寂しいです。最後は勝つだけじゃなくて、3年生と一緒に過ごせる時間を楽しんで、なおかつ勝ちたいと思っています。日本を代表する選手たちが通ってきたウインターカップで結果を残すことは自分の将来にもつながると思います。個人の結果にもしっかりとこだわって、最後は3年生を勝たせることが僕の仕事だと思っています」(佐藤)

「(昨年大会を見て)ウインターカップでプレーするのは緊張すると思うんですけど、その中で自分ができるのかなという思いと、(進学先の)東山が負けて悔しい気持ちがありました。個人としてはインターハイではずっとコーナーステイでキックアウトから3Pを打っていましたが、ウインターカップでは自分でピックを使って攻めたり、3Pだけじゃないプレーで頑張っていきたいです」(中村)


高校バスケの集大成

「今何が必要かを探して自分と向き合っていきたい」

3年生の瀬川にとっては、今大会が高校最後の公式戦。1年時は洛南と京都両洋に阻まれ、京都府で2枠あった本戦出場権を得ることができず。「その年のウインターカップは決勝だけチラッと見たくらいで、現実逃避していたというか。何をしていいのか分からない状態でした」と瀬川は当時を振り返る。しかも、同大会では中学時代からしのぎを削ってきたライバルの平良宗龍が開志国際のルーキーとして大活躍。同校初のウインターカップ制覇を成し遂げてきたこともあり、「同い年の平良が、自分が目標としていた舞台であれだけ活躍していたので」と焦りや悔しさも感じたという。

2年時にはエースとしてインターハイ準優勝を果たしたものの、ウインターカップでは準々決勝で福岡第一に逆転負け。瀬川は3点を追うラストポゼッションでシュートを託されたが、相手の厳しいチェックに遭って決めることはできなかった。「あのときは頭が真っ白で、何のフェイクなどもできずに、ただシュートを打ってブロックされて終わってしまいました。『あのときこうしておけばよかった』みたいな後悔はあります」



ただ、2つの出来事に共通していたのが、悔しい経験があったからこそ、今があるという事実だ。「今振り返ったらあれで良かったのかなって」

ウインターカップのコートに立つことすらできなかった1年時、エースを任されながらもチームを勝たせられなかった2年時──手の届いていない最後のタイトルに懸ける思いは誰よりも強い。そして、だからこそ、瀬川は自分の活躍と同等以上に優勝にこだわっている。

「常に調子が良いわけではないと思いますし、点を取ることだけが自分の仕事ではないです。ルーズボールやリバウンド、声かけやディフェンスをハードにしたりとか。そういった部分でいくらでもチームを勝たせることはできると思っています。調子が悪いときも悪いなりに、自分がやるべきこと、今何が必要かを探して自分と向き合っていきたいです」



「何もできなかった」

1年前からの進化を示す時

2年生の佐藤にとって、ウインターカップはリベンジの舞台でもある。1年生だった昨年度の佐藤の役目は、とにかく思い切り良くシュートを打ち、点を取ること。しかし、インターハイの活躍を経て対戦校から徹底的にスカウティングされた冬は、その得点力が鳴りを潜めた。

各ラウンドで要所の得点で貢献はしたものの、スコアは初戦(2回戦)から順に10得点(対桜丘)、7得点(対帝京安積)、8得点(対福岡第一)。フィールドゴール成功率も34.6%(9/26)と低調に終わった。

「本当に何もできなかった…」



彼のものさしに当てはめたときに活躍できなかった事実はもちろん、1年生の自分を信頼し、エゴを押さえて支えてくれた3年生に報いることができなかったのが、何よりも不甲斐なかった。福岡第一に敗れた後、普段は人当たり良く笑顔で取材に応じてくれる佐藤の目から涙がこぼれた。

あれから1年が経ち、佐藤は自身の成長をこう言葉にした。

「去年は点を取る事だけにフォーカスしていたのですが、今年はよりガードらしくゲームメイクやアシストの部分で成長したと思いますし、スコアリングの面でも去年より成長しているという自信を持っています。結果を出さなければ意味がないと思うので、ウインターカップでしっかりと結果を出したいと思っています」

今大会では得点だけでなく、磨いてきたゲームメイクや状況判断力が問われる。瀬川と共にチームを支え、中村ら後輩たちを引っ張っていく。彼にはそのバランスを取って活躍することが求められる。今こそ、昨年大会からの進化を示す時だ。


スーパールーキーから新の三銃士へ

そして中村だ。1年生の彼は三銃士の中で唯一、昨年度の悔しさを知らない。正確には「バスケットLIVEなどの配信では見ていた」が、当事者としてその場に立ち会っていない。だからこそ、ウインターカップについては「やっぱり楽しみではあるんですけど、少し緊張もあります」と無邪気な笑顔を見せる。

東山では入学と同時にいきなりスタメン起用され、インターハイでも優勝に貢献した。だが、大澤徹也コーチはインターハイ後に「まだ2.5銃士くらいかな?」と冗談を交えつつ、中村のさらなるステップアップを期待していた。ポテンシャルは間違いないが、そこはまだ1年生。自分で攻めていいのか、味方にパスを回すべきか──夏の時点ではそのバランスを中村自身もつかみ切れずにいた。だが、今は徐々に自分の役割や判断基準も明確になってきたと言う。





「インターハイのときは持ち味の3Pのタッチが悪くて、シュートを決め切れないことが多かったです。(瀬川や佐藤が)キックアウトのパスをくれるのですが、それまで決め切れていなかったので、『自分が打っていいのか』という迷いがありました。でも、琉久さんや凪くんが、シュートが入らなくてもパスをくれるし、『3Pを打つのが仕事なんだから迷わず思い切って打て』と言ってくれて。それで迷いがなくなってきました」

プレーに一貫性が出てきたことで、本来の魅力である積極性と豪快さが戻ってきた。瀬川や佐藤がピック&ロールからペイントに攻めてディフェンスを収縮させ、コーナーで待つ中村が自慢の3Pシュートを射抜く。さらには自身がハンドラーとなってペイントアタックする。夏以降はこういったシチュエーションがより多く見られている印象だ。



三銃士は全チームからこれまで以上に厳しいマークを受けるはずだが、瀬川と佐藤はそのプレッシャーをリリースする経験値がある。だからこそ、同じくマークが厳しくなるであろう中村がどう立ち回れるかは、東山の戦いに大きく影響する。昨年、「ウインターカップは他の大会とは別物」と話した佐藤のように、中村もウインターカップの壁を感じることになるだろう。それは中村がスーパールーキーから“新の三銃士”になる最後の試練とも言える。

果たしてウインターカップを迎える三銃士だが、彼らがそろってコートに立つのは最大でもあと5試合だ。それぞれに強力な個性を持つ3ガード体制の東山を見ずに、今年のウインターカップは始まらない。

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#ウインターカップ 注目校紹介🏀東山高校(京都府)🏀瀬川琉久・佐藤凪・中村颯斗・大澤徹也コーチ「三銃士と共に狙う2冠目」
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