月刊バスケットボール10月号

【SoftBank ウインターカップ2024 プレビュー】福岡大附大濠、“これぐらいでいい”を捨てて限界突破の冬へーー

一抹の不安が現実になったインターハイの苦い敗戦

昨年、下級生主体ながら「SoftBank ウインターカップ 2023」で準優勝を果たした福岡大附大濠。決勝進出の手応えと、宿敵・福岡第一に敗れた悔しさの両方を経験した選手たちが今年は2、3年生になり、まさに“勝負の年”を迎えた。前年からスタメンを務める渡邉伶音、高田将吾、湧川裕斗、榎木璃旺の4人を筆頭に、実力派の選手がそろった今年のチームは、春から優勝候補の大本命と目されてきた。

だが、指揮官を務める片峯聡太コーチは、意外にも春先から選手たちにこんな厳しい言葉を投げかけてきたという。



「見ていてワクワクしないし、おもしろくない」

その意図は、彼らにさらなる高みを目指して殻を破ってほしいからだった。前年から主力メンバーが変わらない中で、特に今年の3年生は練習にも学校生活にも真面目に取り組む模範的な生徒たち。ただ、そうした安定感のある状況は、ともすれば現状維持に満足してしまいがちだ。片峯コーチは「選手たちはもちろんそう思っていないでしょうが、どこかで『これぐらいでいい』という雰囲気が見えました。貪欲に、もっとうまくなりたい、もっと強くなりたいという思いで、時にチーム内で言い合いするくらいの衝突があってもいい。でも今年のチームには、そういうところが少し欠けていました」と明かす。



個々の能力やスキル、戦術理解などは間違いなく全国トップクラスにある。それでも片峯コーチは、さらなる成長を求める貪欲さや熱量、純粋な闘争心に、一抹の不安を抱いていたのだ。それを露呈したのが今夏、地元で開催されたインターハイの準決勝。昨冬のリベンジを狙いチャレンジャーとして向かってくる美濃加茂に対し、大濠は前半から後手に回ってしまう。3Qに追い上げて接戦には持ち込んだものの、4Qで再び離され、68-76で力尽きた。キャプテンの湧川は「逆転できる場面で、チームで一つになって逆転するぞ、という勢いやチーム力がまだまだ足りませんでした」と反省の弁。



3年ぶりの出場、すなわち現選手たちにとって初めてのインターハイは、こうして3位という結果に終わった。だがこの敗戦が、チームの意識改革につながる苦い良薬になったようだ。片峯コーチは次のように語る。

「本当に勝ち切るためには、もう一皮も二皮もむけなければいけない、ということをインターハイを経て気付くことができました。そこからの成長というのは、本当にすごい。インターハイが終わってからウインターカップに向かうこの約3、4か月の間に、特に3年生はかなり成長していると思うので、本当にウインターカップが楽しみです」



9〜11月に行われた「U18日清食品トップリーグ」では、ベンチメンバーも積極的に起用しながら、東山や美濃加茂などの強敵を破って6勝1敗で見事優勝を果たした。6勝のうち、実に4試合が僅か3点差の勝利。チームの底上げを図りながら、「僅差の試合を勝ち切ることで、選手たちが大きな自信をつけました」(片峯コーチ)と、夏からの確かな成長を感じられる大会となった。

加えて11月の県予選前、コーチ陣の提案によって3年生の見竹怜が新たにチームキャプテンに就任し、湧川とともにダブルキャプテン制になったことも冬に向けた追い風になっている。この時期の体制変更は珍しいが、その理由はさらにチームを進化させるためのポジティブなテコ入れ。片峯コーチは「別に湧川が悪いわけではなく、見竹がすごくリーダーシップを取れる選手なので、キャプテンになることでより役割が明確になり、湧川もプレーに集中できるかなと。最終的に決めるのは選手たちなので、彼らが話し合って今の形になりましたが、すごくいい感じだと思います」と評する。

過酷なトーナメントの山に入るも「ワクワクする組み合わせ」

選手たちは来る「SoftBank ウインターカップ 2024」に向け、どのような思いを抱いているのか。3年生の渡邉と湧川は、それぞれ次のように語る。



「去年のウインターカップは、初戦から留学生とのマッチアップが多かった中で自分の体力面などが足りず、最後の決勝ではなかなか良いパフォーマンスを出せずに、一番悔しい終わり方をしてしまいました。3年間、チームとしても個人としても優勝という目標だけを考えてやってきたので、絶対に優勝できるようにチーム一丸となって頑張りたいです」(渡邉)



「去年は決勝という舞台で福岡第一の圧にやられ、悔しい思いをしました。今年のウインターカップは本当に高校最後の試合なので、これまでお世話になった方々だったり、片峯先生や山本(草大)先生、スタッフの皆さんにしっかり結果で恩返しできるように頑張りたいと思います」(湧川)



また、2年生PGの榎木も、前年の悔しさを心に刻み、飛躍を堅く誓っている。

「去年のウインターカップは、チームのガードという軸を自分が担っている中、初戦ですぐにケガをして、チームにめちゃくちゃ迷惑をかけました。その後、準々決勝から復帰できたのは良かったのですが、決勝の福岡第一戦は相手の3年生の意地を力強く感じた試合でしたし、自分たちは受け身になってしまったので、あの悔しさは今でも忘れません。今年のウインターカップでは、チャレンジャー精神を持って初戦から地に足をつけて頑張っていきたいなと。ガードの自分が崩れたらチームも崩れると思うので、絶対にミスをしないこと、そしてチームで戦えるように常に声をかけ続けることを意識したいと思います」(榎木)



組み合わせが決まり、初戦の2回戦では、日本航空vs.仙台大明成の勝者と対戦することになった。いきなり手強い相手を迎え撃ち、その後も強敵との連戦が予想される厳しいトーナメントだが、選手たちや片峯コーチは「ワクワクする組み合わせ」と前向きに捉えている。

「決勝まで残り5試合。自分たちのバスケットをやれる、そしてそれを皆さんに見てもらえる機会がもう残り5試合しかないんです。周りからは『厳しい山に入ったね』『大変だね』と言われますが、我々のモチベーションとしては、初戦からしっかりうちのバスケットを披露できる組み合わせになって良かったと思っていますし、非常に活力ある練習ができています」(片峯コーチ)

昨冬のウインターカップ、そして今夏のインターハイの悔しさを経て、大濠はより貪欲に勝利を追い求めるチームへと変貌した。僅差の試合を勝ち切る強さを手に入れ、体制の変更によって結束力もさらに高まっている。タフな試合を勝ち上がる覚悟は十分。『これぐらいでいい』という妥協を捨て、さらなる限界突破を目指すこの冬。彼らがどんな戦いを見せるのか、楽しみでならない。

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