月刊バスケットボール11月号

福岡大附大濠のカギを握る2年生PG・榎木璃旺「片峯先生を超えたい」


『Softbank ウインターカップ2024』の開幕まであと4日。開幕直前ということで、大会特集号の「月刊バスケットボール2025年2月号」に収まりきらなかった注目選手やトピックスを紹介していく。

本日紹介するのは、男子優勝候補の一角・福岡大附大濠から、司令塔を務める2年生・榎木璃旺(りお)。

動画で見ていた憧れの福岡大附大濠へ


今の高校2年生は、かつて小学6年生だった2020年3月、コロナ禍で全国ミニバス大会が開催中止となった学年だ。予選に勝って出場を決めながらも、泣く泣く無念の思いをした選手たちは多かったが、榎木もその一人。川内グリーンバックス(鹿児島)のエースとして県大会優勝や九州大会準優勝を果たしたものの、全国での活躍は中学以降にお預けとなった。

そんな榎木が、“高校バスケ”に強く憧れを持ったのも、ちょうどそんな小学6年生の頃。2019年の夏、地元の鹿児島県川内市でインターハイが開催され、会場に足を運ぶ。そこで目にしたのは、当時福岡第一高の3年生だった河村勇輝(現グリズリーズ)をはじめ、トップレベルの高校生たちだった。

「間近で河村選手らのプレーを見て、『こんなすごい選手がいるんだ!』と、度肝を抜かれました。それがきっかけで、ウインターカップなどの試合も見るようになったんです。ウインターカップは、動画からでも伝わってくる独特の雰囲気があって、『自分も出たいな』と小学生の頃から思っていました」

その後、親元を離れて三重県の四日市メリノール学院中に進学した榎木は、ミニバス時代の無念を晴らすかのように躍動する。圧巻だったのは中学3年時の全中決勝戦。一人で37得点を荒稼ぎし、チームを初の全中優勝へと導いたのだ。優秀選手に選ばれ、“中学No.1ガード”とも評された。

中学時代も、引き続き高校バスケの動画などはチェックしていたという。その中で、憧れを抱くようになったチームが福岡大附大濠。もともと準優勝だった2014年のウインターカップの映像などはYouTubeで見たことがあったが、大きな衝撃を受けたのが2021年のウインターカップ。当時、中学2年生だった榎木は、大濠が優勝するのを遠征先のホテルでチェックしていた。

「夜、見逃し配信を見ていたのですが、印象深いのは岩下准平さん(福岡大附大濠高→筑波大)が9本の3Pシュートを決めた、仙台大明成との準決勝。本当に高校生なのかと思うくらい、すごい選手たちによるすごい試合で、自分もこんな高いレベルでやりたいなと思いました」

そして憧れの福岡大附大濠から声がかかり、「プレーの面でも人間性の面でも成長したい」と、覚悟をもって入学を決めた。2023年1月、中学最後のJr.ウインターカップでは横浜BCで敗れて2冠達成はならず、「中学では最後、負けて終わってしまったので、高校では絶対にチームを勝たせられるガードになりたいです」と強い意気込みを語っていた。

ただ、高校1年目のシーズンは、多くの試練が待ち受けていた。夏のインターハイは、福岡第一に敗れて出場できず、地元で開催された秋の鹿児島国体でもベスト8止まり。そして冬のウインターカップでは、憧れの舞台に立ったものの、初戦で開始早々に左足をひねり退場を余儀なくされるアクシデント。3回戦を欠場して治療に専念し、メインコートとなる準々決勝から復帰できたが、決勝戦では福岡第一に前半から圧倒されて完敗を喫した。
 
1年時から名門・福岡大附大濠のスタメンポイントガードを任され、全国決勝のひのき舞台に立つだけでも立派なことだ。それでも榎木にとっては悔しい1年だったようで、特にウインターカップ決勝戦については今でも「あの悔しさは忘れません」と振り返る。相手のエース、崎濱秀斗(現セントトーマスモア・スクール)とマッチアップし、「相手の3年生の意地を、強く感じた試合でした」と、気持ちの面からその差を痛感させられたようだ。

「片峯先生を超える」気持ちでゲームメイクを勉強



榎木が2年生となり、経験豊富な渡邉伶音や高田将吾、湧川裕斗が3年生になった今年の福岡大附大濠。同じ2年生の勝又絆もスタメンに抜擢されて欠かせない存在へと成長し、春から“高校3冠”という高い目標を追い求めてきた。インターハイは美濃加茂に敗れて3位に終わり、当初の目標はかなえられなかったものの、秋のU18日清食品トップリーグでは優勝。チームは上り調子にあるといえるだろう。

榎木はその過程で、「ガードとしてどうやってチームを勝たせるか、どういうガードに成長していくか」ということを、片峯聡太コーチとも話し合いながら考えてきたという。その中で、今シーズン特に意識していることがある。それは「片峯先生を超えること」だ。

片峯コーチも、選手時代は福岡大附大濠高や筑波大でポイントガードとして活躍してきた実績を持つ。指導者に転じてからもガード陣には高いレベルを要求し、それに応えるように歴代のチームも頼もしいガードたちが仲間を引っ張ってきた。榎木は言う。

「1年生のときは先生の指示を受けながらガードをやっていたのですが、『先生を超えたいな』と思って。先生から指示を出される前に、自分はこう思ってこう指示を出しました、と言えるようになりたかったので、ゲームの流れだったり組み立てだったりを、NBAや大学の試合の映像を見て自分なりに勉強してきました」

そうして主体的に学んできたことを、披露する場となるのが来る冬の大舞台。ウインターカップは3年生が主役となる大会だ、というのはよく言われることで、確かに、負ければ引退という状況の中で3年生の最後の大会に懸ける思いには並々ならぬものがある。だが、これまでの大会の歴史を見ても、下級生の活躍が勝敗の行方を左右するケースも多い。特に榎木は、ゲームメイクを司るポイントガード。取材のたびに「チームを勝たせられるガードになりたい」と何度も口にしてきた彼には、2年生ながら試合をゲームコントロールする強い覚悟と責任感がある。

榎木をはじめ、今年の高校2年生には、東山の佐藤凪や福岡第一の宮本兄弟、尽誠学園の金山颯など、能力の高いガード陣が集まっている。3年生を勝たせるためにも、各チームの2年生がどれだけ自分たちの力を発揮できるかどうかも、ウインターカップの見逃せないポイントだ。



 
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文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

タグ: ウインターカップ 高校バスケ

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