月刊バスケットボール1月号

大学

2024.12.17

インカレMIP・名古屋学院大の永野威旺が後輩たちに残したもの

インカレ2024バスケットライブ


文句なしの受賞だろう。観客投票によって、大会で最も印象に残った選手に贈られるMIP――その栄誉を手にしたのは、今大会の“台風の目”となった名古屋学院大のキャプテン、#12永野威旺(いお)だ。飛躍の立て役者となったエースガードは、物怖じしないプレーで多くの観客たちの度肝を抜いた。


最大のハイライトは、4強入りを懸けた準々決勝。春のトーナメント、秋のリーグ戦に続く3冠を狙う関東1位の日体大に対して、永野は圧巻のパフォーマンスを披露する。身長176cmという小柄な体にして、卓越したボールハンドリング、クイックで放つ3Pシュート、柔らかなフローターなど、高いスキルを武器に相手を翻弄。結果的には7本の3Pシュートを含む31得点、7アシスト。この永野を含め、名古屋学院大は5人が2桁得点を挙げて点の取り合いを制し(105-87)、創部初、東海地区代表としても24年ぶりとなるベスト4進出を果たした。

試合後、永野は自分でも信じられないという様子で喜びを噛み締める。

「いやぁー…もちろん勝ちにはきたんですけど、まさか関東王者を倒せるとは思っていなかったので、本当にうれしいです。気持ちだけは勝ちにいこうと話していたのですが、本当に、驚きですよね」

その1週間後に行われた“ファイナル4”では、日本大、白鷗大に敗れ、最終成績は4位。それでも、周囲も自分たちも驚くような躍進で、今大会に大きな爪痕を残したことは間違いない。3位決定戦の記者会見後、永野に声をかけると、「こんなふうに記者会見で大学4年間を締めくくるとは思ってもみませんでした」とすがすがしい表情だった。





彼は、大学4年間で大きく花開いた選手の一人だ。長崎東高時代は県準優勝が最高成績で、高校3年時のウインターカップ予選は県ベスト8止まり。進学先に名古屋学院大を選んだ理由も「言い方は悪いですが『名古屋学院だったら全国に出られるかな』と思ったことが大きかったです」と言い、入学当初は「全国でどう戦うか、どう勝つかということより、まず全国を経験することが目標だった」と明かす。

ただ、大学での4年間を過ごしながら、その目標は次第に変わっていく。1年時からインカレに出場し、2年時にはシックススマンとしてインカレベスト8に貢献。3年時には主軸となり、インカレ後にはBリーグの新潟に特別指定選手として加入した。こうした経験を重ねる中で「自分にも通用することがあると思いましたし、将来のことも考えるようになりました」と、確かな自信を付けて世界が広がったという。

もともとシューティングガードだった永野だが、「特別指定選手として新潟に行って、Bリーグでプレーするためには自分の身長的にもPGしか道がないと感じました」と、今年から本格的にPGへとコンバート。今回のインカレで確かな手応えを得られた一方、次につながる課題も浮き彫りになったようだ。日本大との準決勝後、永野は「負けたのはガードの差だと思います」と吐露。同じ長崎県出身で昔からよく知る#3米須玲音とのマッチアップを振り返り、「周りの選手の能力を最大限に引き出すこと――玲音はそこが本当にうまい。自分にはまだ足りない部分だと感じましたし、それが試合の点差につながってしまったのだと思います」と反省の弁。次のステージに向け、PGとしてのさらなる成長を誓っていた。

チームとしては今大会、初戦から最終日までの全5試合、関東の強豪と4試合も戦えたことが大きな財産だろう。永野は後輩たちにこうメッセージを残す。

「僕たちの代で、目標だった打倒・関東を果たしてベスト4に入ることができましたが、さらにそこから、ということは難しかった。でも、後輩たちが次から日本一を目指してくれたら、それはチームの成長につながると思います」

#14永野や#0オコエ・ピーター・ジュニア、#21中山玄己といった中心選手たちは卒業する。しかし、ファイナル4の景色を目に焼き付けた後輩たちは、この経験を必ずや糧にするだろう。全くの無名選手から大学界で花開いたエースガードが、チームに残したもの――それは、未来へとつながる確かな布石である。

 

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文・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

タグ: 大学バスケ インカレ

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