月刊バスケットボール1月号

Wリーグ

2024.12.16

富士通がアイシンとの激闘を制し4度目の優勝[皇后杯ファイナルラウンド]

4Q逆転で、富士通が17年ぶり優勝


第91回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド決勝戦が、12月15日に国立代々木競技場第二体育館において行われた。

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前日の準決勝を勝ち上がったのは富士通 レッドウェーブとアイシン ウィングス。富士通は17シーズンぶりの皇后杯獲得を目指し、アイシンは初タイトルを狙う。アイシンは今シーズンを迎えるにあたり、ENEOSから実績・実力のあるベテラン#1渡嘉敷来夢、#2岡本沙也加の2人が加入するなど補強を行い臨んできた。Wリーグのレギュラーシーズンでは、なかなか勝ち切れない試合が続き、5勝11敗と8チーム中7位に位置していたが、チームのコミュニケーションも高まってきており、皇后杯では上位チームを次々と破って初のベスト4入り。準決勝でもトヨタ自動車との接戦を制してファイナルへと進出した。

富士通は昨シーズンのWリーグチャンピオン。今シーズンも万全の戦いを繰り広げ、15勝1敗とリーグ首位を走る。今シーズンの目標は皇后杯、リーグの2冠。そのためにもまずは皇后杯に照準を合わせてきた。

両チームは今シーズンすでに4試合対戦。その全てで富士通が大差を付けてアイシンを退けている。皇后杯の決勝でもおのずから富士通の有利は揺るがないものと思えた。しかし、試合の出だしから、気力あるプレーを見せたのがアイシンの#1渡嘉敷。ゴール下のパワープレーで先制すると、3Pシュートも決めてチームを鼓舞する。富士通は#52宮澤夕貴、#10町田瑠唯の3Pシュートなどで応戦しすぐに追い付くものの、アイシンは若手の#10野口さくら、#20山口奈々花、#14近藤京らが思い切りのいいプレーで続き、1Qを18-15とリードする展開となった。


試合の出だしから、気力あるプレーを見せたのがアイシンの#1渡嘉敷来夢



2Qも#1渡嘉敷がインサイド、ミドルショットと止まらない。さらに#10野口の連続3Pシュートで30-19とリードを広げる。女王・富士通はアイシン、#1渡嘉敷の気迫・勢いに飲み込まれてしまった形となった。
富士通は#27江良萌香の3Pシュートで一息つくが、渡嘉敷が自らのシュートだけでなく、自分にディフェンスを引き付けて、アシストを見せるなど、流れを渡さずに38-29とリードを守ったまま前半を終えた。アイシンは準決勝では2本しか決まらなかった3Pシュートが、前半だけで7本成功と、富士通の5本を上回っているのも大きなポイントとなった。
「渡嘉敷選手のところを抑えなければならなかったのができず、そこに集中したところをアウトサイドからもやられてしまった」と町田。

後半もアイシンがいい流れでスタートしたが、徐々に富士通が差を詰めていく。アイシンは富士通ディフェンスの前に得点ができない苦しい状況に追い込まれていったのだ。結局3Qが終わった時点で、47-43とその差が4点まで縮まった。
勝負の最終クォーター。富士通の#81宮下希保が3Pシュートで1点差とすると、#1渡嘉敷が入れ返し、一歩も引かない。両チームとも連戦の疲労がある中、ディフェンスでも勝利への執念を見せ、決定打が来ない状況で、富士通は#52宮澤がフリースローで一点差に詰め寄る。すると残り3分20秒。#27江良の3Pシュートが決まり、55-53とついに逆転に成功する。そこからは我慢し続けてきた富士通オフェンスが一気に爆発し、ディフェンスからブレイク、#25内尾聡菜の3Pシュート、#52宮澤も続き一気に試合を決定づけた。65-55とアイシンを突き放し、2008年以来となる4度目の賜杯を手中に収めた。


4Q、富士通は#27江良萌香の3Pシュートで逆転



「苦しい戦いとなりましたが、選手たちがディフェンスで我慢し続けてくれました」と富士通のBTテーブスHC。キャプテンの宮澤も「前半、渡嘉敷選手のところで来ると分かっていたのに、そこでやられてしまい、逆にそこ(渡嘉敷)に寄って、相手に3Pシュートを決められたりと、守るべきところを守れなかったことは今後の課題なのかなと思いますが、後半そこを修正してアジャストできたのはこのチームの強み」と、想定外の前半から、後半の我慢を乗り越えてつかんだ勝利を振り返る。
アイシンの戦いぶりも見事だったが、それを凌ぎ、勝ち切った富士通の強さもまた深みを増した。「今シーズンの目標は2冠」とテーブスHCも、選手たちも口にする。「リーグ後半戦へ向けての課題も多く見つかりました。選手一人一人がステップアップしなければ」と町田。一つ目の目標を達成した富士通は、Wリーグ連覇に向け、さらなるレベルアップを遂げていくに違いない。





一方、敗れはしたもののアイシンの快進撃は特筆に値する。梅嵜英毅HCは「悔しい思いが強いです。(準備した作戦が)予想以上にはまっていたので怖いイメージもありましたが、選手たちもスタッフを信じてゲームプランを遂行してくれました」と大一番に懸けた思い、負けた悔しさ、善戦した手応えと複雑な心中を吐露した。チームをけん引した渡嘉敷も「15年連続して皇后杯のファイナルの舞台に立たせてもらいましたが、今年は初めて違う色のユニフォームを着てのことでした。一試合、一試合チームの成長を感じていましたし、それだけにあと一歩届かなかったことが悔しいです」と、成し遂げたことへの充実感、成し遂げられなかったことへの悔しさを口にした。

「去年の決勝はデンソーさんにやられた感じが強かったので、銀メダルは飾りもしなかったのですが、今回の銀メダルは、自分の第2章の始まりのメダルなので、しっかりと飾って、この気持ちを忘れずにやっていきたい」と新たな挑戦の手応えを語る。皇后杯を終え、迎えるWリーグの後半戦に向け、注目すべきチームがまた一つ増えたようだ。



第91回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会 ファイナルラウンド
大会方式:トーナメント戦によるノックアウト方式
競技規則:大会各ラウンドとも開催時における最新のバスケットボール競技規則で実施する。但し、2次ラウンド以降は「2025 バスケットボール競技規則 主な変更点」を適用する。※現状においては「2024バスケットボール競技規則 (Official Basketball Rules 2022)」 を最新とし、プレーヤーが競技中に身につけるものは、原則として日本バスケットボール協会の「競技規則 第4条4-4その他の身につけるもの」に準ずる。但し、コンプレッションウエアの着用については、1次ラウンドから認める。
使用球:モルテンB6G5000
出場チーム:女子総数:61チーム
大会日程:2024年12月11日(水)~15日(日) ※12月13日(金)はレストデーのため試合予定なし
会場:国立代々木競技場 第二体育館 (東京都渋谷区)
大会オフィシャルサイト:https://zennihon2024-25.japanbasketball.jp/







写真:石塚康隆(月刊バスケットボール)、文:飯田康二(月刊バスケットボール)

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