月刊バスケットボール1月号

Wリーグ

2024.12.15

富士通、アイシンが大接戦を制しファイナルへ[皇后杯ファイナルラウンド]

一瞬の勝負どころをつかんだ
富士通が前回大会覇者デンソーに勝利

91回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド準決勝2試合が、1214日 に国立代々木競技場第二体育館において行われた。
予選を勝ち上がった8チームによる準々決勝において、富士通 レッドウェーブ、デンソー・アイリス、アイシン ウィングス、トヨタ自動車 アンテロープスがベスト4に名乗りをあげた。


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準決勝第1試合では富士通対デンソーが対戦。富士通は昨シーズンのWリーグ女王、デンソーは前回皇后杯の覇者。今シーズンもリーグ戦で1位、2位という好成績を残している両チームによる大一番となった。

序盤、富士通は#25内尾聡菜が3連続でシュートを沈め7得点とオフェンスをけん引。一方でディフェンスではデンソーを封じ込め、そこからファストブレイクといい流れを作る。デンソーは5分を過ぎたところで、#88赤穂ひまわりのフリースローで初得点と出遅れるも、そこからは両者それぞれの選手たちが持ち味を出しつつ試合が進む。デンソーのオフェンスにも勢いが出て、流れを引き戻し14-16として1Qを終えた。2Qも引き続き取ったら取り返す流れ。富士通がリードする時間が長かったが、デンソーもしっかりと付いていった。



富士通とデンソーはこれまでレギュラーシーズンで2戦しており、富士通が2勝。それだけに「ディフェンスでは変えた部分もあり、それがうまくいっていることもありました。付いていけていましたし、チャンスが来ると思っていました」とデンソーの#88赤穂は試合後に語ったが、26-31で迎えた後半も何度かチャンスをつかめそうな瞬間は訪れた。実際、逆転する場面もあったのだが、富士通がすぐに取り返し、デンソーとしてみれば試合の主導権をつかみ切れない戦いとなった。さらに、##0馬瓜エブリンがリバウンド争いからコートに体を打ち付け退場となる不測のアクシデントもあった。

45-43
と富士通の2点リードで迎えた最終クォーター。突き放したい富士通、付いていきながら逆転のチャンスをうかがうデンソーといった攻防が続く。勝負の流れが動いたのは残り5分を切ったところ。#10町田瑠唯が3Pシュートを決め52-475点差に広げると、「なかなか打つチャンスがなかったのですが、あのときはぽっかりと空いた」と#52宮澤夕貴も3Pシュートで続き、その差を8点に広げた。その後、デンソーも#7 高橋未来が3Pシュートを決め返すなど最後まで粘り続けたが、一瞬傾いた流れをつかんだ富士通は、その後ゲームの流れを渡すことなく59-56で逃げ切りを果たした。

「ディフェンスで我慢できました」とBTテーブスHC。序盤の流れを作った内尾も「コンパクトにハードに守るというチームディフェンスはできたと思います。高田選手にはやられましたが、そのほかのところは守れていたと思います」とディフェンスでつかみ取った勝利を振り返った。

ラストワンプレーで
アイシン 渡嘉敷が決勝ゴール


準決勝第2試合はアイシンとトヨタ自動車の対戦。どちらも準決勝でリーグ上位チームを降してベスト4入りを果たした勢いのあるチーム同士。一方、プレースタイルは好対照。今シーズンから加入したベテランの#1渡嘉敷来夢、昨シーズンまでチームを支えてきた若手エースの#10野口さくらといったインサイドでの攻防を軸にするアイシンに対し、サイズはなく、若手選手が多いトヨタ自動車は、足を使った激しいディフェンスからのブレイクと3Pシュートで勝機を見出していく。

1Qからそうした両者のスタイルがはっきりと出る戦いとなった。アイシンは渡嘉敷が1Qだけで10得点、野口が6点と続く。トヨタ自動車は3Pシュートの試投数が12本と、アイシンの1本と比べて大きな開き。ただ、トヨタ自動車は成功が3本と成功率が上がらなかったことも影響し16-21とビハインドを負った。

2Qに入ると、トヨタ自動車はディフェンスを修正し、渡嘉敷の得点を防ぎにくる。攻めては3Pシュートの当たりがこないなか、#23山本麻衣、#15安間志織が広いスペースに飛び込むドライブで効果的に得点し、ビハインドを取り返し33-32とリードを奪った。

後半に入り、再びアドバンテージを取ったのはアイシン。連続得点でリードを取り戻すと、そのリードを守りながら46-43で最終クォーターを迎えた。



アイシンはベテラン勢の疲労が見られるなか、トヨタ自動車の山本、安間がディフェンスをかいくぐりドライブを決めて48-48と同点に追い付く。さらに山本が3Pシュートで逆転。一方のアイシンはこの試合出ずっぱりの渡嘉敷が最後の力を振り絞って連続得点、残り2分を切った時点で54-53と再逆転した。するとトヨタ自動車は#42田中平和が3Pシュートでリードを奪う。アイシンは渡嘉敷がフェイドアウェイ気味の難しいジャンプシュートを決め再度同点に追い付く。時間は流れ残り4.6秒。ヘッドコーチチャレンジで覆り、アイシンが得たラストポゼッション。フロントコート、サイドラインからのスローインで#12吉田亜沙美から渡嘉敷へパスが渡りシュート。これがこぼれるも渡嘉敷自らリバウンドを押し込み58-56と勝利をもぎ取った。

「タイムアウトのあと、タク(渡嘉敷)が『裏パスでもいいですよ』って言っていたので」と吉田は決勝ゴールを演出したピンポイントのアシストパスについて話す。渡嘉敷も「トヨタさんは(ディフェンスで)前を締めてくるのが強いので、裏が空くかなと。4秒あるので好きに使えと言われていました。(パスが通って)ラッキーと思ったんですけど、思いのほか後ろからブロックが飛んできたので、力が入ってしまって落としたんですけど、そのあと取って決めれば誰も文句言わないだろうと思って…、ここで決め切れなければなんのためにアイシンに来たんだろうと思うところでしたので、決め切れて良かったですし、みんなが自分を信じてくれた結果です」と振り返った。

かくして手に入れたファイナルの舞台。「若手にはシンプルに、思い切りやってくれれば」と渡嘉敷。初のファイナルという選手が多いなか、「この経験で一つも二つも選手自身も、チームもレベルアップしいていくと思うので。思い切りやってもらって、あとはベテランがカバーすればいい。若手が思い切ってやってくれればチームは勝利に近付くと思います」とその理由を語った。

17シーズンぶりの皇后杯獲得を目指す富士通、初タイトルを狙うアイシンのファイナルは本日15日、15時よりスタートする。




●皇后杯ファイナルラウンド 決勝

12月15日
15:00〜/富士通 レッドウェーブ vs. アイシン ウィングス





第91回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会 ファイナルラウンド
大会方式:トーナメント戦によるノックアウト方式
競技規則:大会各ラウンドとも開催時における最新のバスケットボール競技規則で実施する。但し、2次ラウンド以降は「2025 バスケットボール競技規則 主な変更点」を適用する。※現状においては「2024バスケットボール競技規則 (Official Basketball Rules 2022)」 を最新とし、プレーヤーが競技中に身につけるものは、原則として日本バスケットボール協会の「競技規則 第4条4-4その他の身につけるもの」に準ずる。但し、コンプレッションウエアの着用については、1次ラウンドから認める。
使用球:モルテンB6G5000
出場チーム:女子総数:61チーム
大会日程:2024年12月11日(水)~15日(日) ※12月13日(金)はレストデーのため試合予定なし
会場:国立代々木競技場 第二体育館 (東京都渋谷区)
大会オフィシャルサイト:https://zennihon2024-25.japanbasketball.jp/





写真:石塚康隆(月刊バスケットボール)、文:飯田康二(月刊バスケットボール)

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